CollapsingDepartment-store
-注文の多い百貨店-


□ □ □ □ □ 1階 食品売場  □ □ □ □ □

 僕のお母さんは、料理がとっても上手だ。とくにお肉を使った料理は天下一品とかいうことばが似合うと聞いた。月に一度、そのお肉料理を作ってくれる。
「これ、なんの肉だい?」ってお父さんがお母さんに聞いても、
「ヒミツよ」
 としか答えない。僕はおいしければそれでいいので、お母さんの言葉も、お父さんの疑問もただの会話だと思っていた。
 今日の夕食は、その、月に一度作ってくれるおいしいお肉だった。TVを見ながら食べていると、TVの画面がパッと変わった。
<――臨時ニュースです。×△街で、行方不明者が……>
 そのニュースは、最後まで聞かなかった。お母さんがいきなりチャンネルをかえたからだ。
「×△街ってここなのよ? それなのにあのニュースキャスターったら不謹慎で!」
 などと怒りながらお肉を食べている。僕もそれを知っている。一ヶ月に一人のペースで、子供が一人ずついなくなっているのだとか。そういえば、友達のタダシ君は大丈夫かな。いつも元気なのに、今日は学校で姿を見なかった。
 その日の夜、僕は夢を見た。タダシ君の夢だ。
「今日は会わなかったね。どこに行っていたの?」って僕が聞くと、タダシ君は答えた。
「どこって……。そこだよ」
 タダシ君は、僕のお腹を指差した。そして言ったんだ。
「僕のお肉、おいしかったかい?」
 行方不明者が出始めて9ヶ月。あのお肉料理は、今日で9回目の味わいだった。


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