*Father,Oh! Father*
「失礼します…東北上官」
「ああ、高崎か」
「あの…先月の報告書、追加資料をお持ちしました。湘南新宿ライン分もあります」
「ああ、ご苦労」
それはいつもの光景。いつもの東北。
の、ように見えた。
少なくとも上官の前で緊張仕切った高崎の目には。
しかし其の実、現在、東北の頭と心にはぐーるぐるとある考えが渦巻いていたのだ。
即ち──
『東日本のお父さん』
先程、上越に言われたそれなりに痛烈な一言。
どうやら下の(在来の)間でそんな風に言われているらしい。
上越とそんな開業日が違う訳でもないのに何故?
上越には『老けて見えるんじゃない?』とか何とかばっさり言われたが──
そんなに!?
そんなに老けて見えるか!?
というか、上越が異常に若作りなだけではないのか!?(コスプレも平気だし)
いや──しかし。
開業以来増え続ける仲間、伸び続ける区間、それにともなうゴタゴタ、新型車両の導入と最速記録への挑戦も相まって、確かに少々くたびれてしまったのかも知れない。
結局、上越も長野(北陸)も秋田も山形も、何か問題があればそれはぜーんぶ東北自身の肩にかかってくることになるのだ。
それもどうかと思わなくはないが。
それにしたって『お父さん』はないだろう『お父さんは』!
「…?あのぅ、東北上官?」
「……」
東北は考え続けていた。
一体何をどうすればこのおっさん的イメージが払拭できるだろうか。
髪型か?私服か?
上越のようにへそが見えるくらいのピッチピチなTシャツで歩いてみるとか?
いやそれとも忙しさにかまけて中断していたWi○ Fitでトレーニングを再開してみるとか──
いや、ちょっと待て。
視点を変えれば、これはこれで良いのではないか?
『父親』とは、つまり一家の大黒柱。信頼の象徴。
JR東における『お父さん』ポジションにいるとすれば、即ちそれは仲間からの熱い信頼を得ていることだとは考えられないか。
それならば俺は──
このままみんなの──
「あ、あの………では私はこれで失礼しま」
「高崎」
がし★
逃げるように立ち去ろうとしていた高崎の肩を、東北の大きな手が捕らえた。
「…え!?…っと…東北上官?あの…何、か?」
「高崎」
「い、YES上官」
「一度でいい、私のことを──」
「…は…」
「私を『お父さん』と呼んでくれないか」
「京浜東北ぅ、高崎どうかしたの?早退って?」
「うん…何か…放心状態で使い物にならないから返した。終電まであと少しだしね」
「あーらら、上官に怒られでもしたのかなぁ?ねぇ宇都宮?」
「そうだね………あの魂を絞り出されたあとみたいな呆然とした顔の理由はこれからたっぷり聞き出すつもりだよ(微笑)」
「……」
その後、上官専用室でお茶を啜りながら、
「…『お父さん』も、悪くはないな」
そう満足げに繰り返す東北新幹線に──上官諸氏は誰もツッコミを入れられなかったそうである。あの上越や山陽でさえも。