*たまにはこんな記念日 in 高崎駅*
“たかさき、えっちー、たかさきえっちー”
「それは忘れろ!んな固有名詞みたいに続けて呼ぶな恥ずかしい!」
高崎は膝の上のだるまるの頭を撫でながら、相変わらずの宇都宮との会話を思い起こしていた。
「…ま、あれなら大丈夫かな」
東北本線管轄地域の豪雨被害はこちらの比ではないと聞いている。
ヘバったりしてないかと気にはなっていたが。
そんな気遣いなど宇都宮には無用だったようだ。
“たかさきー、たかさきー、いいなー”
「ん?…ああ、そうだな、群馬っていいよな」
反射的にそう返すと、異を唱えるようにだるまるの小さな体がピョンッ、と跳ねた。
“ちがうー、ちがうー、たかさきがいいのー、たかさきがわらってるのがいいのー”
「…何だって?」
“たかさきのえがおがすきー、ぐんまもたかさきもだいすきー”
「そっか…オレ、笑ってっか」
高崎は、ひょいっと肩の上にだるまるを乗せて立ち上がった。
窓の外は相変わらずの曇天だけれど、その向こうにはきっと抜けるような青空があるに違いない。
「──まぁ、たまにはいいか」
こんな開業記念日も。な。