*たまにはこんな記念日 in 高崎駅*

 

 

“たかさき、えっちー、たかさきえっちー”
「それは忘れろ!んな固有名詞みたいに続けて呼ぶな恥ずかしい!」

高崎は膝の上のだるまるの頭を撫でながら、相変わらずの宇都宮との会話を思い起こしていた。

「…ま、あれなら大丈夫かな」

東北本線管轄地域の豪雨被害はこちらの比ではないと聞いている。
ヘバったりしてないかと気にはなっていたが。
そんな気遣いなど宇都宮には無用だったようだ。

“たかさきー、たかさきー、いいなー”
「ん?…ああ、そうだな、群馬っていいよな」

反射的にそう返すと、異を唱えるようにだるまるの小さな体がピョンッ、と跳ねた。

“ちがうー、ちがうー、たかさきがいいのー、たかさきがわらってるのがいいのー”
「…何だって?」
“たかさきのえがおがすきー、ぐんまもたかさきもだいすきー”
「そっか…オレ、笑ってっか」

高崎は、ひょいっと肩の上にだるまるを乗せて立ち上がった。
窓の外は相変わらずの曇天だけれど、その向こうにはきっと抜けるような青空があるに違いない。

「──まぁ、たまにはいいか」

こんな開業記念日も。な。

 

 

 


ENDLESS

 2009/7/29