*Right man in the right place*
バリーン!と…何かが弾けるような景気の良い音に振り返るとそこに東海道がいた。
その手に、真っ二つのポテチ袋、そして周囲にはその中身だったものが星屑の如く見事に散らばっていることから、何が起きたかは容易に推測がつく。
「あー…やっちまったな」
呆然と立ち尽くしたまま(そしてそのくせッ毛にもポテチのかけらが)の東海道に、山陽はやれやれと歩み寄ると破れた袋を手に取った。
「うんうん、そーだよな、お前気をきかせたんだよな、もうすぐ帰ってくる秋田とか長野のために、菓子入れを充たしておいてやろうと、な?」
力の入らぬ体をストンと突いて椅子に座らせ、新しいポテチの袋を手早く縦に裂いた。
「まぁあれだ、お前、こーゆーの苦手なんだからさ一、オレにひと声かけて…」
「…ま…負けたくな…い」
「へ?」
「お前に…お前にこんなことで負けたくない!」
「こんなことって…こんなことなんだからいいじゃん、負けたって」
たかがポテチ一袋のことで、と笑うと、東海道はぐぐっと唇を噛んで山陽をにらみつけた。
「何事もおろそかにしない!それが鉄道の模範となるべき高速鉄道というものだ!」
「んまー、そら殊勝な心がけだけども」
「だから私は…ッ」
「…あのなー東海道“適材適所”って言葉知ってる?」
「何ィ?」
「こーゆーのはさ、やれるヤツがやりゃーいいの。お前はポテチの袋は開けられないかもしれんけど、他にできることいっぱいあんだろが」
「…ぐ…」
「オレはオレのできることを、お前はお前のできることを。互いにふさわしい場所がある。な?“適材適所”いい言葉だろ?例えばほら──」
オレがいつもお前の隣にいること、とかさ。
「──!?……」
「まさにこれこそ“適材適所”の典型、っしょ?ど?」
「……」
「え?無視?無視っスか?…おーい、東海道ちゃーん?」
「…(ぼそり)阿呆…」
いつもなら「うるさいうるさい黙れー!」と怒鳴り返してくる東海道が黙り込んでしまったので、山陽は妙に居心地が悪くなりどうしようもなく泳ぐ視線を誤魔化すために盛大に頭をかいた。
そして一方の東海道はと言えば、今ここにデジカメを携えた上越がいないことに感謝しつつ自らの顔を掌で覆うのだった。