*Complex every day of SANYO Shinkansen*
─山陽上官のフクザツな日々─
「…九州が…」
「──お断りだからな!九州もつばめもマルっとお断りだ!あんな悪趣味成金路線を走らせるレールなど持ち合わせておらん!」
「…まだ何も言ってねぇじゃん…」
山陽は、新聞の向こうからギーッ!と自分を睨む長年の相棒に深いため息をついた。
本当にこいつは。いや、こいつらと来たら。
九州と東海が直通運転できないことはもしかしたら幸運なのかもしれない。俺にとって。
もし何かの奇跡(悪夢か!?)が起きてこいつらが繋がることになったら……その間に挟まれる俺、ぜってー禿げるわー。いやほんまに。
「だからさ…九州がつばめ様つばめ様っつーて、九州の在来にあがめられてんのに最初は吃驚したんだけどさぁ」
「フン、島国で天狗になっているだけだあの男は!バカ馬鹿しい!」
「でもあいつ、九州って、すげぇ一生懸命じゃん、仕事については」
「…!?」
「そばにいて分かったんだけど、実はすっげぇ業務頑張ってるしさー、見た目より。少なくとも鉄道としてはめちゃ優秀だと思う。そのへんなんかなー、あんな性格でも部下に慕われちゃうのって」
「……」
「……あり?東海道…ちゃん?」
当然、嵐の如く言い返されると覚悟していた山陽は、突然静かになった東海道に「あれ?」と訝し気な視線を向けた。
しかし東海道は、まるで話を無視するように新聞に目を走らせている。内容が頭に入っているとは到底思えないけれど。
「…ああ、そう…」
認めるんだ。認めちゃうんだ。ソコのところは。
九州が(どんなに性格が悪くても)仕事については責任感のあるきちんとした男だってこと。
そうだよなー。そこんとこは昔東海道を一緒に走ってたお前の方が良く知ってるよなー。
でもって、そのせいかどうか知らんが、東海道と九州──お前らって本当に良く似てる。意地っ張りなとこも、高飛車なとこも。
そしてどの高速鉄道よりも、走ることを、業務を誇りに思い、大切にしているとこも。
何事も一生懸命なとこも。
「…何か妬けるよなぁ…」
「?何だ山陽、餅でも焼いているのか?」
「…あー、いいのいいの…つかそれネタ?それともマジボケ?」
「何のハナシだ?」
「や、うーん、つまり…俺ってバカだってこと」
今頃悟ったのか、愚か者め、と軽く返されて苦笑い。
だって俺、お前のそういうまっすぐなとこに困り果てながらも──結構気に入ったりしてんだからさぁ。
「東海道ちゃーん♪」
「──!?──うぉっ!?な、何だ山陽!?抱きつくな乗っかるな!重い!」
「俺さー、今から博多南行ってくるー、打ち合わせー」
「そ、そんなこと一々私に報告するなっ!…………山陽」
「んー?」
「……あと2年あまりだ、しっかりな」
「オーライ」
それに気付いたから、愚かな俺は何とか頑張れそうな気がする、よ──うん。