加齢による足の痛み(膝痛)の予防と対策 |
Ⅰ:足(下肢) ① 足とは 構成 :骨・筋肉・腱・軟骨(骨の摩擦を少なくし、衝撃を吸収する)・靱帯(骨と骨をつなぎ、動きを制限する)・関節包 (滑液があり軟骨に栄養を運んだり軟骨の磨り減りを防止する) 役割 :支持(立位保持の際に上体を支える)・運動(歩行) ②加齢による変化 身体…体脂肪の増加(特に内臓脂肪) 姿勢…円背・腰や膝の痛み・変形などによる屈曲姿勢 骨…骨密度の低下(特に女性に多くみられ、骨粗鬆症の原因となり、骨折しやすくなる) 軟骨…水分含有量の低下(軟骨細胞基質の70%は水である) 筋肉…筋力の低下 (柔軟性や血流量が低下し、速筋線維の選択的萎縮が起こり、特に大腿四頭筋の減少が著しい) 靱帯・腱…引っぱりに対する抵抗力の低下 循環機能…脈拍は上がりにくく、血圧は上昇しやすい→運動に対する予備力が低い 歩行動作…最大歩行速度の低下・両足支持時間の延長(つま先の引き上げが少なくなり、すり足歩行になる) →つまづきやすく、転倒の原因となる Ⅱ:足の痛み ① 種類 急性外傷:骨折・脱臼・捻挫・打撲・坐傷(肉離れ)・腱断裂など 慢性疾患:坐骨神経痛・変形性関節症・急性からの移行など その他:痺れ感・静脈瘤・こむらがえり・慢性関節リウマチ・痛風など ② 痛める3大要因 ・身体的要因: 肥満(BMIの増加) O脚(ミクリッツ線がずれる・日本人に多い)・筋力低下 など BMIとは …体重を身長の2乗で割り、その数値が18.5~25の範囲を普通 とし、高すぎるものを肥満、低すぎるものを痩せとする。 22となるのが最も病気になりにくいとされている。 例:60㎏(体重)÷1.70m(身長)÷1.70m(身長)=20.761 ・環境的要因: 靴(足に合わないものや、硬すぎるのもなど) 路面(舗装された硬い路面) ・物理的要因: ジャンプ運動・長時間の立仕事・重い物の運搬など Ⅲ:症状の具体例 ・痺れ(しびれ) …様々な部位で起こり、神経や血管など様々な原因で起こるため、原因を特定しにくい。 例:坐骨神経痛(原因として腰椎椎間板ヘルニアや梨状筋症候群などが考えられる) ・膝の痛み …膝に原因があるものと、腰などに原因があり放散痛として足に痛みが出ているものとがある。 ・水が溜まる …関節内には滑液が存在し、なんらかの原因でそれが増えすぎた状態 ・足がつる …一過性の筋痙攣でふくらはぎなどに起こる。原因として筋肉の疲労や冷えなどが関係している。 ・むくみ …血流やリンパの停滞により起こる。例:静脈瘤・腎臓疾患など 《 予防 及び 対策 》 治療の基本:体重を減らす・筋力の強化・日常動作の工夫 運動療法の心がけ ・目的意識をもつ (筋力UP・拘縮の改善と予防・衝撃吸収機能の回復など・自分の病気は自分で治すという強い意志を持って行う) ・徐々に負荷をかける ・痛みが軽減しても続ける ・自分にあった運動を選ぶ ・全身の運動を行う ※ やりすぎに注意:運動後に痛みや疲れ、だるさが残らないように! 運動量として運動後に軽い痛みがあるが、すぐに消失するくらいが限度 無理をせず毎日続けられるようにする Ⅰ 体操・ストレッチング ・効果 …関節の柔軟性や可動域の増加や筋肉の血流量の増加が得られる・全身のリラクゼーションを促す・ケガの予防 ・方法 …毎日続ける ストレッチは反動をつけず、ゆっくりと1ヶ所20秒以上行う 息を止めず吐きながら、伸ばしている場所(筋肉)を意識する Ⅱ 筋力強化 [ 筋力訓練 ] ※ 朝・夕2回、週3~4日で3~4週間ほどで効果が現れるので、あせらず気長に取り組む 【仰向けになって足を上げる体操】 【椅子にかけて足を上げる体操】 [ 歩 行 ] ※ 加齢変化 …加齢とともにまず歩幅が狭くなりスピードが落ちる。またバランスが悪くなると片足で体を支える時間が短くなり 『つま先で蹴って、踵で着地』という動作が難しくなり、すり足となりがちである →つまずき、転倒の危険 ※ 効果 …血流量の増加・新陳代謝の向上・骨密度の増加・肥満の予防と解消 ※ ポイント …自分の状態に合わせ普段より少し歩幅を広く取り、1回20分以上・週2回以上行う 【靴を選ぶときのチェックポイント】 [ 水中歩行 ] <水の効果> …浮力により足への負担が軽減・水の抵抗による適度な負荷・水圧による呼吸筋の強化 水温による血管収縮と体温低下を防止する機能が働き新陳代謝が上昇 <方法と注意点> ・胸からおへそまでの水深を歩く。深すぎると首や腰の負担が大きいため避ける。 ・25mプールの場合、反対側に着いたら一休みし合計15~20分歩く。慣れたら1往復ごとに休みをとる。 ・少し息が弾み、会話ができる程度の速度で行う。 ・息を止めないように意識して『吐く』ことを心がける。 ・効果を上げるためには最低でも週1回、できれば週2回のペースで行うとよい。 ・食後すぐは避け、1時間半くらい空けてから行う。 ・運動前後にストレッチを行い、水分補給もしっかり行う。 <基本姿勢> Ⅲ 日常生活での工夫 ※ 和式から洋式へ…洋式に変えることにより膝が90度曲がれば支障なく生活を送ることができるようになる ※ 手すりや台を使って転倒を防ぐ ※ 家事をする際の工夫…中腰やしゃがみ姿勢をなくし、痛みの出ない範囲でする用事は運動療法の一つになる <足を守る日常動作> ※ 杖を使って体重を分散…体重を分散させて安定した歩行を行い、転倒を防止する <杖の選び方> <杖の持ち方> <二動作で歩く方法> <三動作で歩く方法> ※ 階段の昇降…昇る時も降りる時も痛いほうの足を下にするのが原則である <手すりのない階段> <手すりのある階段> <杖を使用する場合> 痛みをとって「ラクラクひざ」にする本 編集:片山直樹 田中尚喜 ㈱主婦と生活社 平成14年10月16日に大久保コミセンの高齢者大学にて講演した際に作成した資料です |