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翼になりたい。
特別読み切りインプレッション



 翼になりたい。
 (コミックバンチNo.233 2007.04.06発売)

 蘭佳代子が再び連載マンガの原作を手掛けるらしい、という情報を知ったのは
 もう随分前の事になります。
 本人のBlogによると、漫画家の選定に手こずり、発表が大幅にずれ込んで
 いつ出るかはまだ分からないという話でした。

 向こうもプロだから、発売前の情報は口外しない。とにかく待つしかない。
 やがて掲載誌とフォーマットを知らされて、僕は愕然としました。

 コミックバンチに読み切りで載る。

 何で連載じゃなくて読み切りなんだ。
 何でコミックバンチなんだ。
 僕の脳味噌は疑問のカタマリと化したのです。

 しかしともかく、世に出た作品は目を通さねばなるまい。
 裏に何があったか知らないけど、まずは作品を読み解いて考えよう。
 「プロです!!」で垣間見たあの台詞回しとリズムが生きているのかどうか
 どれだけの完成度に仕上がっているのか、確かめたいと思ったのです。

 そんなこんなで、「翼になりたい。」のインプレが始まります。
 ここを読んで下さっている方々は、たぶん作品に目を通して下さっている人が大半で
 手元に作品があるでしょうから、それを前提に話を進めて参ります。

 * * * * *

 まず全体をざっと見た印象では、結構洗練されているな、という印象を持ちました。
 「プロです!!」の初回が少々取っ付きにくいのと比べて、今回はかなり話に入りやすい。
 キャラクターの作り込みがしっかりしているのと、主人公の性格付けが明確であること。
 そのあたりが効いているんじゃないかな。
 CAモノとか職業モノとか、そういう先入観がなくても、楽に話に入り込んで行ける
 そんな敷居の低さがあって好感が持てます。
 荷台から落ちたり、職場で野菜をバラ撒いたり、飛行機に話し掛けてしまうシーンが
 僕は結構好きですね。

 蘭佳代子特有の(あくまで推測だけど)リズム感の良い場面展開と
 キレのある台詞回しは今回もちゃんと生きていて、この辺はちょっと意外に思いました。
 作画が変わるとこの辺は大抵変わってしまうものなんだけど、画面を見る感じでは
 特にそういった違和感は見られなかったように思います。

 キャラクターデザインも好感が持てます。
 画力の点では、鉄人・かたやままことに遠く及びませんが、比較的整理された
 シンプルな描線で頑張って原作に追随しているな、という印象。
 ただ、描線にメリハリが乏しいのと、感情表現が今一歩なあたりが減点ポイント。

 話の進行は悪くないですね。
 テンポもメリハリも十分で、バランスも良く、オチもあるし、キメもある。
 一般的なストーリーマンガの水準以上の結果が出ていると思います。
 読み切りのスタイルと言うと、話を詰めすぎて散漫になってしまうか、話がスカスカで
 物足りないか、そういった印象のモノが多いんですけど、この作品にはそれがない。
 過不足なく詰めてきっちり読ませて、後半の数ページで今後の展開まで期待させてしまう。
 実によくやってると思います。
 まあ、これだけ時間を掛けておいて水準以上の結果がなかったら、まさに編集部の怠慢以外の
 ナニモノでもない訳ですが。

 色々誉めておいてなんですけど、問題点も結構あります。
 これだけ描いておいて読み切りはないだろう、ということと、掲載位置が後ろということ。
 作品の面白さを理解できなかった編集者に問題アリ、でしょうね。
 それと、何でコミックバンチなんだ、何でこんなに遅れたんだ、ということ。
 冒頭でも書きましたが、当初の情報では連載になる、という話だったのです。
 それが何らかの理由で大幅に遅れて、読み切りになった。
 で、掲載誌はあの「ガウガウわー太」を切り捨てたコミックバンチ。
 これは編集側に何らかの怠慢があったか、作画に問題があって連載は無理か、そのあたりが
 原因だろうと推測します。
 「プロです!!」の時なんか、連載休んだことは一度もなかったし、初回は必ず前寄りだったし。

 いつものように点数をつけると、今回は70点ってところかな。
 ストーリーは95点、作画は70点、編集能力は45点。足して3で割ると70点。
 誌面上から見ても、作画と編集で足引っ張ってるのがよく分かります。

 しかしヤングアニマルの時もそうでしたが、今回もこんな雑誌でよく頑張りました。
 でも、できれば連載で読みたい。連載してくれないかなぁ。