ライン入力しかないアンプやポータブルスピーカー。
ヘッドフォン出力しかないポータブルオーディオ。
両者を繋いで音を出したい、という要求は多い。
もちろん直結してヘッドフォン出力のボリュームを開けてやれば
一応音は鳴るんだけど、アンプ側に必要な電力を得るには
かなりの音量が必要となる。
無事に音が鳴っても、問題がある。
音量は十分でも音質はダメだ。腰が軽く量感の乏しい音になりやすい。
大きな音を出す関係で、ポータブルオーディオの電池の消耗が激しくなる。
電源周りが弱ければアンプの出力に揺すられ、やっぱり音質は悪くなる。
世間ではUSB DACを介してオーディオへ繋ぐのが流行しているようだが
そこまでする必要があるか?と思ったり、もっとプリミティブな方法で
ちゃんとした音が出ないだろうか?と思ったのがそもそもの発端だ。
インターネットラジオチューナーを作った時、トランスを内蔵して
ライン出力仕様に改造したことがあった。
そのトランスを箱に詰めて外付けにすれば、ヘッドフォン出力を
ライン出力に変換できるような気がしたのだ。
回路図はこんな感じだ。
画像は BB-Shout - FAQ ( http://bb-shout.tristate.ne.jp/bb_faq.html )から引用
入力は3.5mmのミニジャック、出力はRCAの赤白に決定。
ミニジャックはスイッチなしのオープンBOXを選択している。
手持ちのケースの都合でタカチのSW-T55を使っているが、深さが同じなら
他にも使えるケースがあるだろう。
端子や部品の配置を考えると、我が家の作例が実用最小限に近いと思う。
寸法ギリギリというか、トランスの上下がケースに挟まれている。
ツメを外側にきっちり開かないとフタが閉まらない。
ピンセットを駆使して電線を引き回し、素早くハンダ付けするのだが
そこに残されるのはコテ先が入るか入らないかギリギリの隙間。
RCAとミニジャックを避けながら、ハンダ付けの順序をよく考えて行う。
抵抗を付けるか外すか迷った末、手持ちの機材全てで試聴して決定。
もし音が歪むようだったら、テストしながら抵抗値を下げてやればよい。
無事結線が終わったらスポンジを詰めて動かないようにする。
ホットボンドを充填して固定する手段もあるけど、こういうのを作る人は
後々必ず蓋を開けることになるだろうから、あまりお薦めできない。
ふたを閉めるとこんな感じ。ただの箱だ。
入出力が分かるようシールでも貼っておけばよい。
効果は絶大だ。
線の細い騒がしい音が、骨太で制動力のある音に変わる。
より小さな音量で必要な入力が得られるから電池の消耗も軽減できる。
ライン出力を持つ機器に比べると若干劣るかも知れないが、トランス無しとは
明らかに次元の違う音に変わる。
ライン出力がないばかりに出番のない機器は、どこの家庭にも必ずある。
それがもしWi-Fiを備えた携帯電話で、しかも機種変更で用なしになっているとしたら
今すぐ立派なネットラジオとして復活できるのだ。
こんなローテクで救済できる機材が思いのほか沢山ある事実に驚くはずだ。