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はったりオーディオ研究室
古典的なICでアンプを作る。



 

 2013年、アクティブスピーカーに載せる用途で
 LM386でアンプを作った。
 主にハウスでの作業に使うので、安価で簡素な造りで
 それでいて、できるだけ音質の良いものを目指した。
 市販の廉価品の筐体を流用し、見た目にも極めて自然な
 使いやすい形に仕上げた。

 

 その際、一時期巷で流行った「LM386革命アンプ」を
 回路定数と電源電圧を変更した試作品を載せた。
 それは、まじめなオーディオ用途として使えるか否かの
 技術試験の意味合いもあった。

 

 画像右側のグレーの物体がその完成品。
 実に平凡で安っぽい見た目だが、これが予想以上の高音質で鳴った。
 これは電源回路やケースのデザインを煮詰めると結構いいレベルに
 なると確信した。
 原典からICを小変更して、NJM386Dを使うところまでは
 アイデアがまとまっていた。

 その後紆余曲折があって、アンプを作る計画は中断したまま
 5年の歳月が過ぎてしまった。
 ようやく落ち着いて何かを作れるようになったのは、2018年の
 初夏を過ぎてからだった。

 

 単体のプリメインアンプとしてケースにまとめるのは、これが3個目になる。
 単純に2回路を基板に載せて、電源と出力をまとめればいい、と
 思っていたが、どうも狙い通りの動作にならない。
 増幅基板では変な歪みが盛大に出た。
 電源回路では手抜きしてACアダプター直結にしたらノイズが出た。
 結局、増幅基板はミュート回路を手直しして歪みが消えたが
 その原因にたどり着くまで一昼夜を費やした。
 電源回路は過去に実績のあるいつもの方式に戻すことにした。

 

 電源回路の試験中。
 仮組み、通電、試聴。部品を入れ替えて仮組み、通電、試聴。この繰り返しだ。
 毎回違うACアダプターを使うので、仮組みと試聴は欠かせない。
 これが面倒で手抜きしたのが失敗の元だった。
 三端子レギュレータを挟むいつもの方式がベストらしい。

 

 試聴の結果出来上がった電源基板。
 なんだか不安になるような小ささだが、ノイズ除去と音質の
 安定化にはこれで十分だと判断。
 NJM386Dの直近に配置したOSコンが効いているらしい。
 前段は25V 1000μF、後段は16V 470μFで落ち着いた。
 放熱器も小さめのものに改め、18VのACアダプターで給電。

 大音量で鳴らす場合は容量がちょっと少ないので、いつもの超弩級仕様にするか
 電源基板を左右で別々にするといった対策が必要になる。
 NJM386Dにも放熱器が必要になる。

 

 ケースの中の様子。
 前作と基本構造がほぼ同じなので細かい説明は省略。
 デザインの統一性を重視して、いつものタカチのSY-150Bを使ったら
 予想以上に隙間だらけになってしまった。
 電源スイッチはLED内蔵に変更。緑色に点灯する。
 ネットラジオやFMトランスミッターと同じものだ。
 ボリュームは試聴の結果、20kの2連に決定。

 押しの強さやスピード感を前面に出すTA7232Pとは違い
 NJM386Dの革命仕様は空気感や奥行きの表現が格段に優れる。
 もちろん、スピーカーに耳を近づけてもノイズはほとんど聞こえない。
 それは曲間の無音さえも美しいと感じるレベル。
 個人的には原典よりもNFBが弱めのほうが好みなのだが
 あとでいじる楽しみが残っている、と考えれば楽しくなる。
 電源部のケミコンとNFBの帰還抵抗がこの回路の勘所なのだろう。

 そろそろ趣味のアンプ作りも打ち止めにしようか、と思いつつも
 そのうちまた何か思いついて、作るかもしれない。