退職給付会計と税務

 近年、会計基準と税法上の違いがみられ、現場では、混乱しています。そこで退職給付会計と税務上の差異を記載しました。参考になれば幸いです。

(法人税申告調整の手引き。 ASG税理士法人著より抜粋)

 

企   業   会    計

11.9.14「退職給付会計に関する実務指針 中間報告」(公認会計士協会発表)

 

税            法

退職給付会計基準の適用に関した法人税法上の改正はありません。

 

 

社内積立の退職給付と外部積立の退職給付を区別せず退職給付にかかる費用、債務を包括的に把握する。

T、退職給付引当金の計上額

 退職給付債務

年金資産

±未認識過去勤務債務

±未認識数理計算上の差異

±未認識会計基準変更時差異

退職給付引当金

U退職給付費用の計上額

退職給付費用

+勤務費用

+利息費用

±過去勤務債務の費用処理額

±数理計算上の差異の費用処理額

±会計基準変更時差異の費用処理額

期待運用収益相当額

退職給付費用

V費用負債の計算

退職給付会計上各数値の算定は、外部の

専門化に計算を依頼するのが一般的

 

 社内積立による退職給付と外部積立による退職給付を区分して損金算入額及び債務を算定する。

T、社内積立による部分(退職給与引当金)

 従来は、繰り入れ限度額の範囲内で損金算入したが平成14年に廃止した。

廃止前の引当金は平成144月1日以後開始する事業年度から以下の方法で取り崩す。

@中小法人及び協同組合等

10年間(毎年1/10)

Aその他

 4年間

 平成14年、15年度 3/10

 平成16、17年度 2/10

U、社外積立(厚生年金基金、退職金共済、確定給付企業年金等)による部分

@厚生年金基金の掛け金、徴収金は掛け金等の計算期間の事業年度の損金

A退職金共済、確定給付企業年金の掛け金は掛け金の拠出時の損金

V、社内積立と外部積立の区分

 社内積立と社外積立が併存している場合には、両者を区分する区分計算書を申告書に添付すること用件に損金算入を認める。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事例

パターンT

(退職一時金制度のみ採用している場合)

期首退職給付引当金 50、000 内繰入限度超過額35,000

当期繰入額 3,600      当期退職給付費用計上額

当期取り崩し額 1,200

期末退職給付引当金 52,400

当期末退職給与要支給額 52,000

期末資本金 2億円

 

会計処理

@退職給付費用の計上

 退職給付費用3,600 / 退職給付引当金 3,600

 税法 全額損金不算入

A退職一時金の支給

退職給与引当金 1,200 / 現金預金 1,200

期末退職給与引当金の残高の3/10を14年15年は取り崩す。

計算 (50,000−35,000)×3/10=4,500

 

実際に取崩した額 1,200

別表4で加算  4,500

別表4で減算  1、200

 

申告書の書き方

別表4  加算 退職給与引当金繰入額 3,600  総額&留保

     加算 退職給与引当金取崩し不足額 4,500 総額&留保

     減算 退職給与引当金繰入超過額認容 1,200 総額&留保

別表5の一

     当期中の増減A欄に 退職給付引当金(旧) 1,200

     当期中の増減Bに  退職給付引当金(旧) 4,500

     当期中の増減Bに  退職給付引当金(新) 3,600

別表11の三

      2欄に1,200

      3欄に税務上の退職給与引当金 15,000

       50,000−35,000=15,000

      15欄に会計上の退職給与引当金 50,000

      20欄に前期末の別表5の一繰越限度超過額から本別表の2欄の1,200           を控除した金額を書く。 35,000−1,200=33,800

 

 

 

 

 

事例

パターンU

(退職一時金制度と確定給付企業年金制度を併用している場合)
「退職一時金部分」

期首退職給付引当金 50、000 内繰入限度超過額35,000

当期繰入額 3,600      当期退職給付費用計上額

当期取り崩し額 1,200    退職金の実際支給額による取崩し

期末退職給付引当金 52,400

「確定給付企業年金部分」

期首退職給付引当金 70、000 

当期繰入額 2,000      当期退職給付費用計上額

当期取り崩し額 1,200    掛け金拠出による取崩し

期末退職給付引当金 70,800

「当期末退職給与要支給額」 52,000

「期末資本金」 2億円

 

会計処理

@     退職給付費用の計上

 退職給付費用3,600 / 退職給付引当金 3,600 退職一時金部分

 退職給付費用1,200 / 退職給付引当金 1,200 確定給付企業年金部分

A     退職一時金の支給

退職給与引当金 1,200 / 現金預金 1,200

期末退職給与引当金の残高の3/10を14年15年は取り崩す。

計算 (50,000−35,000)×3/10=4,500

B掛け金拠出時

退職給付引当金 1,200 / 現金預金 1,200

掛け金損金算入

 

申告書の書き方

別表4  加算 退職給与引当金繰入額 3,600  総額&留保

     加算 退職給与引当金取崩し不足額 3,300 総額&留保

     加算 確定給付企業年金退職給付費用 2,000 総額&留保

     減算 確定給付企業年金掛け金認容 1,200 総額&留保

別表5の一

     当期中の増減B欄に 退職給付引当金(旧) 3,300

     当期中の増減Bに  退職給付引当金(新) 3,600

     当期中の増減Aに  退職給付引当金(確定給付企業年金) 1,200

     当期中の増減Bに  退職給付引当金(確定給付企業年金) 2,000

別表11の三

      2欄は  記入なし

      3欄に税務上の退職給与引当金 15,000

       50,000−35,000=15,000

      15欄に会計上の退職給与引当金 50,000

      20欄に前期末の別表5の一繰越限度超過額35,000

      を書く。 

(注意)確定企業年金制度のみの場合は、上記パタ−ンの企業年金部分を参考にして下さい。

   退職一時金制度や確定給付企業年金制度で退職給付信託を設定した場合は省略しています。

   参考図書でご覧下さい。

    参考文献 「新会計基準による法人税申告調整の手引き」

    ASG税理士法人 ASG監査法人 共編 発行者 新日本法規出版梶@

(注意) 中小企業の場合は、1/10づつ10年間で廃止前の退職給与引当金を取崩す。

平成15年10月現在で記載しています。以後改正が行われるかもしれません。実務では

必ず専門化である公認会計士や税理士にご相談し確認下さい。