エロスを嗅ぎ取る熱帯夜。
どうも、こんばんは。心の嗅覚が敏感ちゃんです。
ほんとねぇ、『ンコ』シリーズはねぇ、どうしてもねぇ……。
夏だから海に行くんですって。お相手は、ゼウス。
我々、海なし県民ですので、高速道路を使って新潟県までお邪魔します。したら、高速道路のくせに道がでこぼこしてるし、片側1車線になる区間もあるし、挙げ句、中央分離帯まで消えちゃうし、何なんだ上信越道!
ゼウスから聞いた話では、こーゆー高速道路も決して珍しくないんですって。そうなの? いいの? 法的に許されんの? こんなもん、一般道じゃねぇか。
割と早めに出たので、午前中に上越市到着。海水浴目的ではないので、海の家の日焼け金髪お兄さん達による熱心な客引きをすり抜け、無料で入れる砂浜へ。
ということで、やって来ました日本海! いやぁ、海に来たのは中学時代の臨海学校以来ですよ。12・3年振り? うん、風が熱くて生臭い。あと、海藻まみれのゴミだらけ。ネガティブな感想しか出てこない。いや、ほら、自分、山に囲まれて育った人間だもんで――。
とは言え、海。水。青。眼前に広がる波の乱反射。水平線まで遮るものなし。地球の表面の7割がこれなんだって。ほんとかよ。畏怖すら感じます。
続いて、上越市立水族博物館へ。
鮮やかなイルカショーとか、イルカの鳴き声は時におならみたいとか、『この子達はこの中でしか生きられないもの』なんつって綾波ごっことか、毛の生えた亀がいやらしいとか、ピラルクを飼いたいとか、骨が透けて見える魚すごいとか、肺魚すごいとか、やたらとウツボだらけとか、2階まで突き抜けてる巨大水槽とか、カニは大きな虫に見えて怖いとか、サメの生卵とか、白熊の剥製とか、展望台から臨む日本海とか、ペンギンが可愛いとか、アザラシが可愛いとか、小学校の遠足でたまたま来ていた巨乳の先生が可愛いとか、はいはい、魚以外に目が向いてきたから帰りますよ。
なかなか楽しい水族館でした。新潟の水族館と言うと、マリンピア日本海が有名なようですけれど、上越市立水族博物館もいいもんだよ!
直江津中学校がここにあるということは、直江津高校もこの辺りにあるんじゃないの? 阿良々木君やガハラさん(化物語)がいるんじゃないのー?
と胸をときめかせるも、本人・コスプレイヤー・そっくりさん全て不在。残念。
海辺の町並みや金属の錆具合や海風で曲がった松の防風林を眺めながら、飲食店探し。まぁ、海ですよ。観光地ですよ。飲食店くらい山ほどあるでしょう。
なんつって、無計画に車を走らせていたのだけれど、あ、あれ? 店がどこにあるのかわからない看板。入れるのかどうかわからない民宿。開いてるのかどうかわからない定食屋。そんなのばかりで困る困る。
とは言え、ここまで来て妥協するわけにもいきますまい。牛丼屋とか、全国チェーンのファミレスとか、そーゆーの、いけない。半ば、意地になって海沿いを走り続けます。
1時間半くらい経って、新潟への信頼が揺らいできた頃、看板に『道の駅 風の丘米山』の文字を確認。青き衣を纏った風の丘のヨネヤマが、目を真っ赤にした僕達を救ってくれるはず!
と思いきや、これまた開いてるのかどうかわからないような寂れ具合。へぇ、こんな道の駅もあるんだね……。
それもそのはず、風の丘米山のすぐ手前に日本海鮮魚センターを始めとした商業施設の集合体があるんですもの。むしろ、こっちの方が車で入りやすいし、いろいろ揃ってるし、見た目も派手だし、何より賑わっている。案の定、駐車場には群馬ナンバー多数。みんな、考えることは一緒だね。
海鮮丼をいただいて満腹。新潟感に満足。これは勝ったね。新潟を信じた僕らの勝ちだ。
階下のお土産屋さんを眺めてたら、ん? この店、置いてあるもの全てに値札が貼られてますぞ? 飾りかと思った絵も、人魚像も、カジキ像も、船の計器類も、シャコ貝も、その全部が売り物。万単位の値段が付いてる。
シャコ貝なんて150万円。いやいや、そんなもん、囲いもケースもなしに床に置かれても……。もしもの事故があったらどうすんの?
もちろん、普通のお土産もたくさんあります。食べ物とか、それ以外のお菓子とか、お酒とか、置き物とか、ぬいぐるみとか、おもちゃとかね。
その中でも僕らの視線を独り占めしたのが、ほだれ酒という地酒です。まぁ、ちょっと画像検索していただきたいんですけど、これが男性器を模した陶器に入ってるんですわ。それが剥き出しでディスプレイされてたんですわ。そりゃあ、周りを見回して誰の視線もないことを確認してから、飛びかかるが如く手に取っちゃうよね。ご機嫌麗しゅう! こんな所でお目にかかれるとは!
後で調べてみたら、新潟にもかなまら祭りみたいなお祭りがあるんですって。その名も、ほだれ祭。ご神体が男根を模していて、豊作・安産系。やるじゃねぇか新潟!
ゆるゆると帰途。お腹がいっぱいで眠たいねー。
なんつってたら、新井パーキングエリアで目が覚めた。ここ、道の駅あらいと繋がってやがる! 高速道路を降りなくても徒歩で簡単に行き来できる上に、各種飲食店・コンビニ・お土産屋・ホテルまで揃ってる。
……新潟を信じた俺達が馬鹿だったのか? 夕食にするには昼食が遅過ぎたし、はしゃぐにしてはここに来るまでにはしゃぎ過ぎた。言い知れぬ敗北感。何つーか、これはちょっとずるいんじゃない?
絶望ついでに怖い話で盛り上がる。女の人が淡々と喋る怪談は怖いとか、【地獄先生ぬ~べ~】のトラウマ回とか、稲川淳二の【生き人形】とか、2ちゃんねるなら【きさらぎ駅】とか、【不安の種】映画化とか。
思いの外、盛り上がり過ぎて背筋が寒くなったので、やだぁ、あたし、1人で帰れなーい。ということで、ゼウスの家に泊めてもらうことにしました。もう、いい歳なのにね……。
しかし、懲りずに怪談続行。お互い、怖がりのくせに怪談が好き過ぎるんですよ。これぞ、怖いもの見たさ。
トイレもお風呂も行きたくないくらい怖じ気付いてるんだけど、寝る前にはおしっこしておきたいし、夏だから汗も流したい。まぁ、問題は恐怖心だけなんでね、意を決して行ってきます。こういう夜は、子供の頃からよくあった。慣れっ子。
したら、案の定、入浴中に電気を消されるっていうね。やめろやめろー! そりゃあ、予想はしてたけど、怖いだろうが! 電気を消されたり、物音を立てられたり、窓を叩かれたりして、散々肝を冷やしてからお風呂を出た後に、『は? 俺、そんなことしてねぇよ? つーか、うちの風呂、窓なんか付いてねぇけど?』って怪訝な顔されて、徹底してやがんなこの野郎、と歯を噛み締めてたら、『そもそも、ぴぃじゅ、ずっとこの部屋にいたじゃん』って言われるところまでは予想してたけど、怖いだろうが!
布団に入っても、耳が敏感になり過ぎていて困る。家鳴りや布が擦れる音さえ気になる。
しかも、こんな夜に限って、猫ちゃんがやたら元気。あちこちをバタバタと駆け回った末に、僕の首元に突撃してくる。あー、びっくりしたー。じゃあ、一緒に寝ようよと撫でていたのに、またすぐに駆けていく。いや、お前、落ち着けよ。しゃかりきコロンブス(パラダイス銀河)かよ。
まぁ、アレが本当に猫だったかはわからないけれど。
なんつって、結局は割と早い段階で寝たんだけれど。
翌日、家に帰ってからも、ゼウスに聞いた怪談を検索しちゃったりして。昨日、あれだけ怖がってたくせに。我ながら、怖いもの見たさが過ぎるだろ。
それどころか、もはや、海のことなんか忘れてたからね。新潟まで行った意味!