Hppy your call

午後の穏やかな陽が窓から差し込む俺以外は誰もいないリビングは、痛い程の静けさの中で時計が秒針を刻む音だけがやけに大きく響いている。ソファーに深く身を沈めながら壁に掛かったカレンダを何となく眺め、時折ちらりとリビングの隅にある電話に視線を注ぐ・・・気付けばそんな事をずっと繰り返していた。

カレンダーの指し示す今日の日付は4月24日、1年でたった1日の特別な日・・・俺の誕生日だ。
自分で言うのは可笑しいかもしれないが、君ならきっとこう言うかも知れないから・・・。
けれどもこれ以上はどうしようもなくて、いつもと変わらぬ日常に小さく溜息を吐くしかない。


高校を卒業してから俺は留学のためドイツに香穂子は日本にと、互いに離れた日々を過ごして数年になるが、この日だけは毎年必ず彼女から電話がかかってきていたのだ。
蓮くんお誕生日おめでとう、と耳から伝わる笑顔に、身体中が包まれる優しい温かさと祝福を乗せて。


今日の日が心密かに待ち遠しかったのは自分の誕生日だからか、それとも君の声が聞けると思うからなのだろうか。今年もきっとかかってくる・・・約束などは無いけれど、心にポッと灯る小さな明かりがそう伝えてくるから、朝からずっとこうして待っていた。

会えるとまでは思っていないが、せめて君の声だけでも聞けたらどんなにか幸せな1日になるだろうか・・・。
そう思ってソファーの背にもたれていた身体を起こし前に屈むと、支えるように膝の上へ組み合わせた手を祈りを込めて握り合わせた。



会う事はもちろんだが、海を隔てた遠い距離や時差という障壁がある為、頻繁に声を交わす事さえもままならない。だが数少ない機会だけれども紡がれる一言一言がしっかり心に録音されてゆくから、何度も何度も再生して香穂子の声を聞くたびに俺を守ってくれたり、勇気付けてくれる。電話のベルはどれも同じ音な筈なのに、彼女からの電話だけはすぐに分かるのは、きっと俺の心のベルも一緒に鳴り響くからなのだと思う。



「・・・・・・!」


静寂を打ち破る電話のベルに身体が反応して素早くソファーから立ち上がり、リビングを駆け抜ける勢いのままに電話に飛びつく。すると予感通り・・・いや、願っていたそのものな彼女の声が耳に届いてきた。



『もしもし、蓮くん?』
「・・・! 香穂子か!?」
『良かった〜家にいてくれたんだね。蓮くん久しぶり、元気だった?』
「あぁ、こちらは変わりない。君も元気そうだな」
『うん! 蓮くんの声を聞いたから、元気いっぱいだよ』


突然の彼女からの電話に驚きを隠せないが、それ以上に声を聞けた喜びの方が数倍も大きくて。今にも飛び出してきそうな元気さ弾ける彼女の声から気配の全てを感じ取ろうと、耳を傾けながら意識を集中させた。
受話器を握り締める手の平の強さや押し当てた耳の熱さが・・・話しているだけで浮き立つ俺の心が・・・君からの電話は特別なのだと伝えてくれる。

耳に届く声は俺の心の中にある映像を目の前にいるかのように写し出してくれて、わくわくした気持を抑えきれずに、大きな瞳を輝かせながら身を乗り出してくる笑顔の彼女がそこにふわりと現れた。


『ねぇ蓮くん、私は今どこにいると思う?』
「どこって・・・香穂子の家じゃないのか?」
『残念でした、ちょっと遠いんだけどお出かけしてるの。さぁ〜どこでしょう、当ててみて!』


こちらは今午後がひと段落してお茶の支度でもしようかという落ち着いた時間なのだが、先に時間の進んだ日本はだいぶ夜遅い時間の筈だ。どこ・・・と言われても家以外には思いつかないが、そう言えば電話向こうにいる香穂子の周囲がざわついて聞こてくる。ひょっとして外にいるのだろうか? 遅い時間なのに一人で?


妙な胸騒ぎがして全神経を耳に集中すれば、ざわめき混じって届くのは何故か空港の搭乗アナウンス。
しかも日本語や英語ではなくドイツ語だ。そういえば、いつも電話で感じる音声の遠い距離感を全く感じない。
気のせいであって欲しいが・・・でもまさか!?

考え着いた答えに暫し呆然となり空白が流れた次の瞬間、ハッと我に返ると両手で受話器を強く握り締める。切羽詰ったように電話口に勢い良く身を乗り出しながら、空間を隔てて電話の向こう側にいる香穂子に向かって叫んだ。


「香穂子、今どこにいる!」
『えっ!? 私が蓮くんに質問してるのに・・・・・・』
「いいから、まず俺の質問に答えるんだ。君がいる場所は、日本じゃないな・・・まさかっ・・・・・・」
『もう〜そんなに怒鳴らなくってもいいじゃない。でもね、そのまさかだよ。今ベルリンのテーゲル空港なの!』


ふふっ・・・蓮くんに内緒でこっそり来ちゃった〜と、電話口の彼女は変わらず無邪気に笑っていて。
驚きを通り越して真っ白になってゆく意識を、もしもし蓮くん聞こえてる?と俺を呼びかける声が引き戻す。
受話器を握りなおすと、気持を落ち着かせる為に大きく深呼吸をした。こうしてゆっくり話している場合では無いのだ、すぐ彼女の元へ行かなければ。放っておけば彼女の事だ、家まで一人で行くと言い出しかねないから。


「直ぐに迎えに行く。香穂子、そこから絶対に動くな!」
『・・・・・・っ!』


電話口の香穂子がビクリと身を竦ませたのが気配で分かる程に鋭い熱さで伝え、勢いのまま受話器を叩き置くとすぐさま自分の部屋に駆け上がり、ジャケットを羽織りつつ腕時計、パスケース、財布、家の鍵・・・とりあえず必要最低限の物だけを次々に引っ掴む。今は一秒たりとも時間が惜しい・・・腕時計を見て強く唇をかみ締めつつ、タクシーの方が早いだろうかと考えを巡らせながら家を飛び出し、テーゲル空港へと向かった。






空港のロータリーに乗ってきたタクシーが滑り込むと支払いを済ませて飛び降り、彼女の待つ到着ロビーを目指す。これから旅立つ人や訪れた人・・・溢れる人の波をすり抜けながらひたすら駆け抜けると、やがてヴァイオリンケースとスーツケースを抱えて座る、人待ち顔な香穂子が見えてきた。駆け寄りながら名前を呼べは俺に気付いて立ち上がり、嬉しそうに飛び跳ねながら、ここだよとアピールするように大きく手を振っている。


会えずに留まっていた間の時の流れが一気に押し寄せ俺を飲み込み、いざ彼女を目の前にしたら何から伝えたら良いか分からなくなってしまう・・・話したい事がたくさんあった筈なのに。切れた息と激しく高鳴る鼓動を宥め抑えながら、嬉しさを満面に溢れさせた俺を見上げる大きな瞳を受け止めると、背に腕をまわして胸に掻き抱き、懐深く閉じ込めた。


「蓮くん、びっくりした?」
「君ならいつかやるだろうと予想していたが、実際は驚いたなんてものじゃない・・・心臓が止まるかと思った。だが・・・会えて嬉しい。香穂子、良く来たな」
「突然ごめんね、どうしても蓮くんに会いたくなっちゃったの。ふふっ・・・でもやっぱりここが一番安心する、居場所だなって思うもの。蓮くんにぎゅ〜ってしてもらうと、来たんだな〜ってようやく実感が湧いてきたよ」
「日本を発つ前に連絡してくれたら迎えに来たのに・・・俺がいなかったらどうするつもりだったんだ。香穂子にもしもの事があったら俺はっ・・・!」
「事前に知らせちゃったら、サプライズにならないじゃない。それに電話していないようだったら、直接蓮くんのお家の前で待ってるつもりだったんだよ。まだ道が不案内だけど何度か来たから場所は分かるし、一応合鍵も貰ってあるでしょう? でも絶対に会えるって、信じてたの!」


そう言うと俺の背にキュッとしがみつき、甘えるように胸へと頬をすり寄せてくる。

一人で待っている今も何かあったら・・・とここに来るまでの間も気が気ではなかったのに、そんな俺の焦りと心配を、君はいつも身軽に飛び越えてしまう。抱き締められた腕の中から真っ直ぐ俺を見上げてふわりと向けられる微笑が、心配しないで私は大丈夫だよと逆に俺を宥め、熱く逸って波立った心を穏やかにしてくれるのだ。


俺に会えると、ただそれだけを信じて海を渡り、遠い異国までやってきた香穂子。
一点の曇りも無い、その溢れる自信はどこからくるのだろうか・・・。


君と出合ったあの頃から時は流れ、俺たちも少しずつ変わっていくけれども、自分と相手を真っ直ぐに信じる君の強さは変わることなく輝き続けている。変わっていく中にも、変わらずにいてくれる大切なものがある事がこんなにも嬉しくて、身体の中心から熱く震えてくるようだ。

彼女が纏うその輝きは、まるで透明な翼。彼女を大きく羽ばたかせるだけでなく、空を見上げて独りうずくまっていた俺の心にも翼を与えてくれる・・・あの頃も、今も。



「蓮くん、お誕生日おめでとう!」
「誕生日・・・。香穂子、まさかそれを言いにわざわざドイツまで来たのか!?」
「うん、そうだよ。ちゃんと4月24日に間にギリギリ合って良かった。予想外に途中の乗り継ぎで時間がかかったり、日本と時差があるからドキドキしっぱなしだったの」
「時差?」


こちらの24日はまだ充分にあるが、なぜ時間をそんなにまで気にしていたのだろうかと、眉を寄せて質問の意図を探るべく大きな瞳をじっと見つめた。分からない?と小首を傾げて愛らしく謎賭けをしてくる香穂子に降参だと困り果ててそう言えば、僅かに身動ぎ出し俺の腕からするりと抜け出してしまう。

隠した秘密をこっそり話す時のように、ふふっと小さく笑った香穂子が俺の隣へピタリと肩を並べ、見てとそう言って俺の前に腕時計を差し出してくる。時刻はこちらの時間に合わせ直したもので、16:30過ぎを示していた。この時間に、何か深い意味があるのだろうか?


「今はサマータイムだから、日本とドイツの時差は-7時間。蓮くんのいるドイツの方が後から時間がくるじゃない。まず日本で24日になったらおめでとうって最初に言えるでしょう? でも更に7時間経ったらドイツでも24日になるからもう一度おめでとうが言えるんだよ。2回お祝いできるなんて、凄いと思わない?」
「香穂子から2度も祝ってもらえるのはとても嬉しいが、君の気持は1回だけでも俺には充分過ぎる程だから」
「そう?私は大好きな人への“おめでとう”は、いっぱい言いたいんだけど・・・蓮くんならきっと一度で良いってそう言うと思った。だからね、両方の国の時間が重なる時にお祝いすればいいんだよ!」



ドイツで16:30だと、日本では23:30頃と言う事になる。かろうじてまだ24日・・・彼女はこれを言っていたのか。
俺に一言伝えるために、そんな深い所まで考えてくれたのだと思うと、息が止まりそうなくらいに愛しさで胸が苦しくなる。想いが溢れて言葉が紡げずにいる俺に下から覗き込みながら柔らかく微笑みかけると、隣から向かい合わせになるように正面に移動し、両手を取ってそっと包み込んだ。


「蓮くんの故郷で私のいる日本と、蓮くんが今暮らしているドイツと・・・二つの国からのHappy Birthadayを伝えたかったの。最初はね、電話だけのつもりだったんだよ」
「そうだったのか・・・」
「空は繋がってるのに、不思議だよね。時計を眺めて重なる時間を調べてたら、早く声が聞きたくなっちゃって・・・会って直接私の言葉で伝えたい・・・今すぐに蓮くんに会いたいって・・・どんどん胸が熱くなっていったの。一度走り始めたら、もう自分の想いが止められなかった・・・」
「・・・・・・」
「それでね、フライトスケジュールを調べてみたら、ちょうどぴったりな時間があってね・・・電話したら空いてますって言うから、すぐにチケット取って。気付いたら私、飛行機・・・乗ってた・・・。突然で迷惑かなって思ったけど、どうしてもお誕生日おめでとうって言いたかった・・・蓮くんに会いたかったのっ・・・・!」



始めは俺を見つめて柔らかく微笑んでいた瞳が、言葉を紡ぐうちに次第に眉を寄せ必死に縋るような色を見せてゆく。まるで心に溜め込んだ想いの全てを吐き出そうと、生みの苦しさと鬩ぎあっているようで。瞳から・・・俺の手を包む手に込められた握る手の強さから・・・痛い程に伝わってくるのは彼女の熱い想い。そして潤む大きな瞳から溢れ出す光の雫が一筋頬を濡らした瞬間、俺の心にも降り落ちたそれは大きく波紋を描き出した。


驚きに目を見開く彼女をスローモーションのように捕らえながら再び腕の中に引寄せ、俺はしなる程強く華奢な身体を閉じ込めていた・・・想いのままに。
包む頭を抱えるように胸に押し付けると、くぐもった声の振動が耳だけでなく心に直接響いてくる。


「思いついたの出発の当日だったから、本当に急で何もプレゼント用意して無いんだけど・・・ごめんね」
「ありがとう、香穂子。俺こそ、すまなかったな・・・つい驚きのあまり取り乱して君にきつく当たってしまった。だが、何よりも君に会えて嬉しい。君がここにいてくれる・・・それが俺にとって最高の誕生日プレゼントだ」
「例え離れて寂しい事があっても、私は蓮くんからたくさんの優ししさや幸せをもらっているんだよ。いつも挫けそうになった時に、空間を飛び越えて心の中に現れて、励ましたり支えてくれるの。だから蓮くんにももっとたくさん“幸せだな”って思って欲しくて・・もっと幸せになって欲しいから、どうしても伝えたかった」


私はいつも心の中で祈ってる、蓮くんの幸せを。
ありがとう、大好きだよ。


涙を堪える為に声を詰まらせなせながらも、赤く染まった目元と僅かに震える唇を緩ませて、精一杯の笑顔を向けてくる。そんな彼女がいじらしくて、愛しくて・・・温かく優しく満たす感触に身を委ねながら、俺も腕の中の香穂子の耳元に囁きかけた。想いの波紋が君の中でも広がるようにと、甘さと熱い吐息に乗せて。


「ありがとう、香穂子に出会えて本当に良かった。心の中にいる君がずっと笑顔なのは、俺の為にと祈ってくれているからなんだろうな。これまでどれだけ励まし支えられて来た事だろうか・・・。だから俺もいつも祈っているよ。いつでも君が君らしく輝いて、大好きな笑顔でいてくれるように・・・君の心にある俺も笑顔であるようにと」



心の中を甘い糸で締め付けられるような切ない苦しさが胸に湧き上がり、細めた瞳で腕の温もりをじっと見つめたまま片手を伸ばし、頬を包み込んだ。こぼれ落ちた雫が描いた光の道を、目尻から頬へと親指で辿り、そっと拭い去ってゆく。


どうか心から笑ってほしい・・・消えた涙の道の跡に、眩しい笑顔の花が咲きますようにと。


絡み合った視線が熱く弾けたその時、人々のざわめきが止み、忙しなく行き交う人の流れも何もかもが動きを止めて-------俺と君以外全ての時間が止まる。切り取られて止まった空間の中で、激流のように流れ出した俺達の熱い想いだけが高速で時を駆け抜けて。

身を任せながら互いに互いを引寄せ合い、奪うように唇を重ねた。









「長旅で疲れただろう。さぁ、行こうか」
「あのっ・・・ちょっと待って、蓮くん」
「どうした?」
「えっとね・・・怒らないで聞いて欲しいんだけど・・・・・・」


ざわめきが戻り再び慌しく動き出した、俺達を取り巻き流れる時間。

ゆっくりと身体を離した後に香穂子の大きなスーツケースを持ち、ヴァイオリンケースを肩にかけて歩き出そうとすれば、行こうとする俺の腕を掴み待ってと引き止めた。どうした・・・と、頬をほんのり赤く染めたまま佇む彼女に緩めた瞳で微笑みかければ、あの・・・あのねと、口篭りながらも縋るように俺を見つめており、必死に何かを伝えようと心の中で勇気を振り絞っているように見える。


「ドイツに行こう!って思いついてすぐ行きのチケットだけ取って、その日のうちに飛行機乗っちゃったの。とりあえず行けば何とかなるかなって思って・・・だからね、帰りの飛行機まだ取ってないんだよ。ゴールデンウイーク終わる前までには帰るつもりなんだけど・・・」
「は!?」
「それとね、急だったし蓮くんに会えるって信じてたから宿の手配まで気が回らなくて・・・。あのね・・・その・・・今更だけど、蓮くんの家にお泊りしても・・・いいかな?」


掴んでいた腕をポスンと力無く離すと火を噴出しそうな程顔を真っ赤に染め出し、両手を前にキュッと握り合わせながら俯いてしまい。そんな彼女にクスリと小さく笑いを零しながら、香穂子・・・と緩めた瞳で優しく呼びかければ、やがておずおずと上目使いでそっと見上げながらはにかんだ笑みを向けてきた。


変わらないな・・・君は。
だからこそ俺は目が離せなくて、いつも一瞬で君に捕らわれるんだ。
君らしく大切な輝きを失わず、このままずっと変わらずにいてくれたらと、そう思う。


「思い立ったら後先考えずに、真っ直ぐ突き進むところは昔から相変わらずだな。どんな時でも前向きで、決して後ろを振り返らない。まぁ、そこが香穂子のいいところでもあるんだが。心配しないでくれ、いつでも香穂子が来れるようにと、君の部屋はちゃんと用意をしてあるから」
「えっ! 私の部屋があるの? あっ・・・でもまさか・・・・・・」
「そう、そのまさか。君の部屋は俺の部屋だから」
「も〜蓮くんてば・・・」
「嫌か?」
「・・・うぅん、そんな事ないよ。照れくさいけど、私だってやっぱり一緒は凄く嬉しいもの!」


行こうかと手を差し出した俺の手を、ピョコンと飛びついた彼女の手がしっかり握り締め、振り仰いだ嬉しそうに輝く瞳ごと離さないように絡め取った。





君がくれた、一本の電話が運んでくれたもの。


目の前にいて確かな温もりを感じられる君と、今この瞬間の出来事、そして自分自身・・・絡み編みこまれていく糸のように二人で紡ぐ想い・・・。全ては君が俺に教えてくれた事であり、君がくれた大切な大切な贈り物。
それらを愛しいと・・・大切だと感じる時、もっと大切にしようと思う時、心の中にもうひとつ、新しい大切なものが生まれるのだ。


一つ一つ数えたらあっという間に両手いっぱいに塞がってしまい、手から溢れ出したそれらに包み囲まれてしまうけれど。ここで生きている俺は、何て幸せなんだろうと思った。


心にある透き通った羽根を羽ばたかせ、海を越えて祝福を届けに来た君は、俺にもその翼を与えてくれた・・・いや、君そのものが俺にとっての翼だから。
この手を繋ぎ合ったまま、心の大空をどこまでも羽ばたこう・・・二人で共に。