放課後にヴァイオリンの練習を終えて校舎の外へ出れば、練習室の窓から見たオレンジ色は、いつの間にか深い藍色に変わっていた。短い冬の太陽は漆黒のヴェールに姿を隠し、代りに月と星たちが夜空に浮かび澄んだ輝きを放っている。街へおいでと、夜空の元へ旅立とうと・・・俺たちを誘うように。
いや・・・誘われているのではなく、俺の願いを感じ取った彼らが背中を押してくれているのだ。
正門前で香穂子を待ちながら、湿度の少ない冬の空気に、通り過ぎる生徒達の足音や話し声が賑やかに響き渡る。普段は気にならない人のざわめきが、決意を灯した心を無言で追い立てるように思えて、落ち着かなければと大きく深呼吸をする。冷たさが火照りを沈めて、身体の内側から優しく語りかけてくるようだ。
手の中に握られ眺めているのは、コンサートのチケットが二枚分。元は仕事の都合で行けなくなった両親のものだったが、譲り先を探していると聞き、ぜひにと名乗り出て譲り受けた。珍しく積極的な俺に驚きを隠せないながらも、コンサートの日程や二枚という条件から俺の考えなど両親はお見通しだったのだろう。
楽しんできなさい・・・頑張ってと笑顔でそう渡され、照れ臭さに熱さが募ったものだが。
君と一緒に音楽を楽しみたい、共に同じ時を過ごしたい・・・。
だがこれはきっかけにしか過ぎないんだ、本当に伝えたい事や届けたい想いは別にある。
数々の期待と不安が押し寄せ、苦しさに飲まれてしまいそうだ。
やがて聞きなれた軽やかな足音がパタパタと聞こえてくる・・・彼女だ。
月森が柔らかく瞳と頬を緩ませ微笑むと、チケットを大切に封筒へ戻し鞄の中へ片付けふと視線を上げる。
急がなくていいと言っているのに、今日も走ってきたのだろう。笑顔の彼女は、寒さより温かさを感じさせる白い綿のような吐息を次々と生み出しながら、息を弾ませた香穂子が目の前にふわりと舞い降りた。
「お待たせ、月森くん! 寒いのに待たせてごめんね。帰りになると息が真っ白だよ」
「いや、俺もちょうど来たところだから。じゃぁ帰ろうか・・・そうだ香穂子。もし時間が平気なら、少し遠回りをしていかないか?」
「いいよ、どこかに寄るの?」
「どこ・・・という訳ではないが。駅前通りでクリスマスの飾り付けやイルミネーションが綺麗だったから、君と一緒に見たいと思って。その・・・駄目だろうか?」
嬉しいと頬を染めて綻ばせる香穂子の笑顔は、寒さに身を凍らせていた俺を優しく溶かしてゆく。
向けられる眼差しと笑顔が、ずっと俺だけのものであったらいいのにと、願わずにいられない。
胸に湧いた甘く苦しい想いは胸に閉じ込め微笑みを返しながら、早く行こうと急かし先に駆け出す彼女を追って、正門を潜り抜けた。
12月に入り寒さが次第に厳しさを増し、年の瀬が慌しく過ぎ去り始めるとやってくるのがクリスマス。街や通りには驚くほどの大きな規模ではないが、心踊り創造性溢れる飾りやイルミネーションが光りを灯していた。
“街にクリスマスがやってくる”という歌の歌詞にもある、ぴったりな季節の到来だ。
香穂子と過ごすようになってから、歩くペースがゆっくりになったと思う。だが今日はいつにも増して更にゆっくりだ。共に肩を並べながら周りを見つつ、会話が出来るような穏やかな速さで・・・それもいい。ゆっくりゆっくり歩いてゆけば、見失って気づかなかった物が見えてくるから。道端に咲いている小さな花や、隣で感じる君の鼓動や息遣いなど・・・大切なものたちを一つ一つ心のポケットに拾い集めよう。
駅前の広場では子供達の手作りツリーが飾られ、ささやかな点灯式が開催されている。人垣に混じって眺めながら、多少のいびつさが可愛らしく温かいねと微笑む君が言うように、世界にたった一つだけのクリスマスツリー。地元の学生合唱隊が披露する、ジングルベルやきよしこの夜といったお馴染みのクリスマスソングが、街の夜景を背に響き渡っていた。
子供達の白い吐息が冷気に溶け込み、柔らかい暗闇の一部になってゆく。夢中になって魅入る君の吐息も、甘さとなって俺を心ごと包んでくれる。はっきりとした理由も無いのに嬉しくて幸せな気分になるのは、俺の隣に君がいてくれるからなんだな。そろそろ行こうかと耳元で囁くと、ピクリと身を震わせ目を見開き、瞬く間に頬を赤く染めてしまう。邪魔をしないように静かに声をかけたんたが、驚かせてしまっただろうか・・・。
「すまない・・・驚かせるつもりは無かった。ここで立ち止まっているのも何だし、そろそろ行かないか」
「う、うん・・・。へへっ、子供達の歌声に聞入ってたらすっかり無防備で・・・ビックリしちゃった。耳元で月森くんの声聞くの初めてだったから、えっと〜その。私こそ驚かせてごめんね」
香穂子は顔を真っ赤に染めながら誤魔化すように笑い、声の吹き込まれた耳をしきりと撫でている。あからさまに驚いたのが恥ずかしいのか、別の何かが気になるのか。答が分からないまま、かき分けるように人垣を抜け出てほっと一息つくと、再び緑と赤の飾りや電飾に彩られた街を歩き出した。
視線が絡む度に照れ臭くて互いにはにかんでしまうのは、日の暮れた街をそぞろ歩いているのは恋人たちが多いから・・・だろうか。季節と場所が彼らを、いや俺たちを引寄せるのかもしれない。手を繋ぎ腕を組み、誰もが二人で寄り添って穏やかに流れる人の流れと時間に身を浸している。
言葉に出せば余計に恥ずかしさが募るから黙っていると、隣を歩く香穂子がぽつりと呟いた。
「ねぇ月森くん、何かこう・・・そわそわ落ち着かないね。とってもくすぐったい感じなの」
「君もだったのか、実は・・・俺もそう思っていたところだ」
「どうしてクリスマスになるとカップルが街に増えるんだろうね。周りから見たら、私たちもこの景色に溶け込んで、同じように見えてるのかな?」
「それは俺たちが、恋人同士と意味だろうか」
「あっ! その・・・ごめんね何でも無いの、気にしないで! 月森くんと一緒だったから、嬉しくてつい・・・」
はっと我に返った香穂子は急に慌て出し、夜目にもはっきり分かるほど、ゆでだこのように顔や耳までも真っ赤になっていた。両手と頭をブンブンと横に振る勢いに押されながらも、愛らしさと小さな可笑しさが込み上げる。彼女が誤魔化したり照れ臭さを隠す時の仕草だと分かるんだが、ではなぜそんなにも恥ずかしがるのだろう。ひょっとして君も、俺と同じように望んでいるからなのだろうか。
淡い期待が心に浮かび、小さく灯った光だけで生きる喜びが沸くようだ。
恋人同士・・・本当にそうであったらいいのにと心の底から望み、想い、そして希う。
胸の中に湧く想いの炎で焼け付く熱さを感じて、耐えるように拳を握り締める。
熱さを薄皮一枚で留めながら香穂子を落ち着かせる為に、俺も嬉しいとそう言って香穂子へ微笑みを向けた。
コンクールが終ってからも、香穂子と過ごす日々は変わらない。毎日一緒に登下校して、放課後には一緒にヴァイオリンの練習をし、休日には時折出かけることもある。周囲からは、既に付き合っているように見えるようだが、俺たちは友達以上でありながら恋人未満の状態が続いていた。
大切な最後の一欠片が足りず、パズルが完成しないように。
想いを音色に乗せた愛の挨拶を俺に届けてくれたように、音楽なら言葉に出来ない想いも伝えられる・・・。
そう信じてヴァイオリン君に奏でても、あと一歩の距離を埋めるのには肝心な何かが足りず、心もとない。
君を好きだというこの気持を、俺は言葉に出来ずにいた。本当はずっと伝えたくて今でも胸に熱く抱えているのに・・・。たった二文字の言葉では全てが収まりきらず、どう伝えたら良いのかと悩んでいたんだ。
一番大切なのは、俺自身の言葉で君に想いを伝える事。
難しく考える事は無い、好きだという言葉自体が深い意味を持つのだと、ようやく気づいた。
手を伸ばせば触れられる距離にいるのに、近いようであと一本が遠く、触れる事が出来無い。
俺の手を少し寄せれば君の手と繋げるし、肩を抱き寄せ温もりを感じられる程なのに。互いの心もすぐ近くまで歩み寄っていると感じる事が度々あるものの、確信を得る勇気が出なかった。俺も君も言葉にしていなかったから確信が持てなかった・・・繋がりを感じるものの、ひょっとして自分が想うだけだったらと知るのが怖くて。
君に向かい溢れる想いと包む空気ごと箱に詰めリボンをかけ、心に直接届けられたらいいのに。
伝えて壊れてしまうよりは、もどかしさを感じる距離に身を委ねていた方がいいのだと思っていた。だが時間はただ流れるだけで、小さな世界の中で同じ日々が繰り返されるのみ。壊れる事を恐れて一歩を踏み出せずにいては、何も始まらないし前に進めない。
前に進む大切さを教えてくれたのは君だから、今度は俺が応えたい。
俺の想いを確かな言葉で伝えたい・・・君の心を知りたい・・・受け止めてもらえるだろうか。
「月森くん見てみて、大きなクリスマスツリーだよ!」
「綺麗だな」
「星がたくさん集まった夜空を、指で摘んで持ち上げたみたい」
感嘆の声をあげ前方を指差した香穂子の瞳に映る煌きは、ツリーが照らすものなのか、彼女自身の煌きなのか。引寄せられるように数歩前に進み出る背中を追い、守るように背後へ佇みむと、香穂子がじっと見あげるる先を追った。
小さな電球がつけられたワイヤーが高い位置から放射線状に伸び落ちて、電飾のクリスマスツリーを作り出していた。一番上にある星型飾りが、色とりどりに変化し続けている。ツリーに寄り集まる真っ白い光りの粒は星の輝きのようでもあり、舞い振る雪に溶け込む銀世界のようだ。傍らには電飾のワイヤーで作られたトナカイが、温かいオレンジ色の光りを放ちながら寄り添っていた。
「クリスマスか〜。みんな大好きで大切な人と一緒に過ごすんだね・・・」
高く見上げていた視線を足元へ降ろすと、寄り添う二頭のトナカイへ優しい笑みを向ける。
その言葉の先にあるものは、切ないほどに胸を締め付ける、香穂子の望みであり憧れなのだと分かった。
君の大切な人の中に、俺はいるのだろうか? 熱くたぎる想いの中に投げ込まれた小石は、音を立てて燃え盛り聞かずにはいられなくて・・・気付けは言葉に出していた。
「香穂子は、クリスマスはどう過ごすんだ?」
「私?」
「あっ、その・・・誰とというか、何をするのだろうかと知りたくて。いや・・・個人的な事だな、すまない」
「私はね、大切な人と過ごすの」
「え!?」
「ふふっ・・・毎年同じで家族と一緒だよ、今年も家族でクリスマス。チキン食べてケーキ食べて・・・それでおしまい。でもね、いつか家族以外の大切で大好きな人と、二人きりで過ごしたいなって思うの。きっと温かくて幸せなんだろうな〜憧れちゃう」
赤い髪を揺らしながら肩越しに振り返りった香穂子が、どこか悪戯っぽさを感じさせながら、ふわりと笑みを浮かべた。大切な人と聞いて一瞬冷たい水を浴びせられ、鼓動ごと時が凍ったが家族・・・か。崩れ落ちそうになる膝を堪えつつ、気づかれないように安堵の溜息を零し胸を大きく撫で下ろした。
「月森くんは? 誰とクリスマスを過ごすの?」
「俺は・・・・・・」
ツリーを背に俺の正面に向かい合った香穂子が、切ない輝きを宿したひたむきな瞳で真っ直ぐ射抜く。
なぜそんなにも、物問いたげに俺を見つめるのか。君も望んでいると・・・重なる音色のように想いも向き合っていると期待してもいいのだろうか。
「・・・俺は、一人だ。両親や祖父母も演奏会や仕事で出かけてしまうから」
「今年だけじゃなくて、今までもずっとそうだったの? 寂しくなかった?」
「揃う時もあるし、揃わない時もある。寂しくなかったと言えば嘘になるか、子供の頃は特に。今は・・・いや、何でもない、気にしないでくれ。大丈夫だから・・・」
瞳を緩めて微笑むと、唇から零れた吐息が白い綿を作り、泣きそうに歪んだ香穂子の表情をゆっくり溶かしてゆく。自分の事のように悲しんでくれる君が愛しくて、触れずにはいられなくて・・・。一瞬躊躇い伸ばしかけた手を戻したが、ぐっと拳を握り締めると勇気を出して一歩を踏み出し、そっと頬を包み込んだ。触れた時には冷たかった頬も、次第に温かく柔らかさを取り戻してゆき、絹のような滑らかさが手の平に吸い付く。
一度触れてしまったら、もうこのまま君を離したくはない。
触れる手の平に次第に熱さを感じると、月森くん・・・と躊躇いがちに呼ぶ声が聞こえた。気づけば頬を染めた香穂子が困ったように、あの・・・手・・・と呟きながら俺の顔と自分の頬を包む手とを交互に視線を送っていた。すまないと、そう言って慌てて手を引き戻したが、更に赤みを増す彼女の頬が手の中にも熱を伝えてくる。手の平に残る柔らかさと温もりを逃がさないように、そっと拳を握り締めた。
光りを集めたクリスマスツリーを瀬にして立つ香穂子が、黙ってしまった俺を心配そうに見上げている。
大きく息を吸い込んだ分だけ胸いっぱいに満ちてくる、空に輝く星と地上に輝く星の欠片たちが、俺たちが進むべき道を照らしていた。手を伸ばそう、光りの先にあるものを求めて・・・今こそ君に伝えよう。
「もうすぐ期末のテストが始まるから、香穂子と一緒に練習できる時間が少なくなるな」
「テストかぁ・・・嫌だなぁ、勉強しなくちゃ。でもテストが終ったらクリスマスだし、冬休みも始まるよ! あっ、学校休みになったら、もっと月森くんと会えなくなっちゃうじゃない。冬休みは嬉しいけど、もっと寂しいな・・・」
「俺も、こうして毎日会えなくなうのは寂しい。そうだ香穂子、コンサートのチケットがあるんだ。もし良ければ、冬休みになったら一緒に行かないか?」
「本当!? 行きたい! 生で聞く機会って滅多に無いんだもん、凄く嬉しい。で、日にちはいつなの?」
「終業式が終った、次の日曜日なんだ」
鞄から取り出したチケットを一枚渡すと、早くも興奮を押さえ切れない様子で飛びついてくる。逸る鼓動を抑えながら見守る時間が、短い筈なのに長いように思えて気が遠くなりそうだ。チケットを内容を確認していた香穂子の無邪気な笑みが驚きに変わり、目を大きく見開いた。
「冬休み最初の日曜日。このコンサートの日って12月24日、クリスマスイブじゃない!」
信じられない驚きと嬉しさとが混ざり合う香穂子の想いを、振り仰ぐ瞳ごと月森が真っ直ぐ真摯に受け止める。揺るがない眼差しと、手に託されたチケットが夢では無いのだと確かに告げていた。
「私で・・・いいの? 大切な日なのに・・・大切な人と過ごす日なのに」
「あぁ、君でないと駄目なんだ。俺は香穂子と一緒に過ごしたい。ずっと君を望んでた、伝えたかったんだ」
「月森くん・・・!」
「来年も再来年もその先も、一緒にいたいと思う。移り行く他の季節も、君と共に」
----------香穂子、君が好きだよ。
「好きだ」とそう言った時に心へ湧いた温かさが俺の中を満たし、もっと幸せな気持になれた。
自分が喋る言葉は自分も聞いている。だから隠さず迷わずに、想ったままを素直な言葉で話をしよう。
君の言葉や音色が耳からすとんと落ちてくるように、俺の耳から入ってくる真っ直ぐな言葉の力を感じて。
コンサートのチケットを胸に抱き締めていた香穂子の唇が僅かに震えた。開きかけては閉じ、閉じては開いてを数度繰り返すのは、必死に言葉を紡ごうとしているから。溢れる想いを形にする為に、向ける眼差しにが語る言葉に追いつこうとしているのだ。焦らせずに、彼女の言葉を待とう。
「れ、蓮くん」
「・・・・・・っ!!」
まさか・・・今、彼女は何て言ったんだ? 聞き違え出なければ、蓮くんと。
頬を染めながら恥ずかしそうに、でも真っ直ぐな輝きを宿した瞳で射抜きながら、はっきりとそう言った。
いつか聞きたいと願っていた名前で呼ばれただけなのに、甘い痺れが全身を満たし、浮き上がる心地良ささえ感じる。耳から吸い込まれた言葉が熱さを生み、魂から震えるようだ。
「大好きだよ、蓮くん。私も蓮くんと一緒にいたい、一番大切で大好きなのは蓮くんだもん」
「香穂子・・・」
「コンクールが終って音色が届いたあの時に、ちゃんと言葉でも伝えていれば良かった。音色が全てって訳じゃないのに。付き合っているのかな、違うのかな・・・私の片想いのままなのかなって、ずっと不安だった。聞く事も言い出す勇気も無くて、弱虫だったの。こんな私でもいいの?」
「傷つく事を恐れて弱かったのは俺も同じだ、すまなかった。俺は香穂子が好きだ、弱さも強さも優しさも・・・君の全てが。これからは、君を守るために強くなると誓おう」
「ふふっ・・・私が言おうとしてた同じ事、蓮くんに先に全〜部言われちゃった」
泣きそうに潤んだ瞳が和らぎ、肩先の髪がさらりと揺れる。どちらとも無く見交わす瞳に笑みが零れ、引寄せ合うように俺の手と君の手が一つに重なった。繋がった心を離さないように、指先に力を込めてしっかり握り合う。愛が心を温めてくれるから、繋いだ手の柔らかさが・・・重なる視線や微笑の何もかもが温かい。
苦しいくらいに鼓動が走り出し、笑みの下ではとても平静でいらないが、ドキドキするのはきっと恥ずかしい事じゃないんだ。俺の心を動かせるのは、いつだって君だけなのだから。
「お互い随分時間がかかったけど、やっと言えたね。今日から新しい私たちの始まりだよ」
「急がなくてもゆっくり俺たちのペースで、お互いを知っていけばいいと思う。来年もと言う前に、まずは今年のクリスマスイブにもう一度、二人でこのクリスマスツリーを見に来よう」
「うん、今よりもっと素敵に綺麗に輝いて見えるだろうね。大切な蓮くんに想いが届いた夜景を、忘れたくない」「俺も忘れない。俺たちの思い出の糸を辿ったら、繋がる先はきっとこの夜だと思う」
手を繋ぎ肩を寄り添わせながら、二人で見上げる純白に輝くクリスマスツリーが、優しい光りを放ちながら俺たちを包み込んでくれる。俺たちの頭上を覆うのは、輝く月と冬空に煌く満天の星達。
空と地上の夜景と、二つの星の元で君に想いを誓う夜。君は何を願う?
クリスマスの街がかけた魔法-------。
星降る夜に舞い降りた、光りの妖精・・・それは、奇跡という名の消えない想いの灯火。
君の心の温もりを夜景が教えてくれたんだ。その光りをずっと心に灯して行こう、共に温め育てながら。
星の奇跡