紙飛行機の重心位置について
紙飛行機の重心位置について、経験的な位置決めについて書きます。
実際の飛行機、滑空機では水平尾翼は主に機の縦方向の安定と、そのコントロールに用いられますから、水平尾翼の揚力はあまり重要な要素では有りません。
しかし、紙飛行機では、コントロールの必要は有りません(出来ない)ので、水平尾翼の揚力も積極的に利用されます(一般的に)。
従って、水平尾翼面積が結構大きい場合が多いのです。
紙飛行機の揚力中心は、主翼と尾翼の揚力バランス点にあります。
では、そのバランス点はどの様にして決めるのか、 説明の都合上、例として主翼面積を9、尾翼面積を3と仮定して話を進めます。 揚力は面積に比例しますから、この場合、主翼の揚力と尾翼の揚力は3:1の
関係になります、
この状態での全体的な揚力中点(バランス)は図1の関係位置になります。
図1では、簡単なモデルとして、主翼、尾翼とも矩形翼として表現します。
面積は比率を示すためで、単位は有りません。 主翼単独の揚力点は、ほぼ主翼平均翼弦の30%
同様に尾翼平均翼弦の30%が尾翼の揚力点です。
主/尾翼の揚力の大きさは面積に比例して3:1です。
主翼/尾翼の揚力点の間の距離をモーメント長と言いますが、このモーメント長を面積比の3:1に
分岐する点で主/尾翼の揚力が等しくなります。
この揚力バランス点に重心が一致している場合は水平な飛行が出来ます。(推力が有る場合)
もしもこの点より後方に重心が在ると、当然、機首上げが起こります、反対に前に重心が在ると機首下げとなります。
紙飛行機(滑空機)の場合は、飛行機のようにプロペラなどによる推力がありませんから、前に進む力は
坂道を滑り降りるように、落下する力(重力)を利用します、そのためには当然重心位置は揚力中点よりも
前方に位置する必要が有ります。
最も揚力を活かした位置は、揚力中点と重心位置が一致している場合ですが、反面、滑空速度が遅くなり
揚力も低下し飛行も不安定になります。
適度な滑空角度を維持し、滑空速度も必要充分に得られる位置は、揚力中点のやや前にあります。
どの程度前か?は その機体の翼の形式やキャンパーなどの状態でも変化します。
垂直上昇法による発進をする場合の私の調整と重心位置の決め方を参考までに解説します。
1. 図1の関係で求められる、揚力中心位置をマークして置きます
2. マークの2〜5mm前に重心が来るように、調整します。(概ね機首の錘による)
3. 手投げテストをします、一定の高さから、同じ程度に水平に手投げして、最も距離、時間の長い状態
になる様に、重心の位置を調整します。 この場合、水平尾翼は水平のまま無調整とします。
4. 満足できる状態に調整がすんだら、ゴムカタパルトによる水平発射テストをします。
5. 水平に発射した機体が直線的に地面に突っ込む場合は、尾翼後端(エレベーターとなる位置)を
僅かにアップします。
6. 反対に急速に上昇する場合は、エレベーター部分を僅かに下げます。
7. 最終的に、直線的に水平飛行をして、そのまま穏かに滑空状態になる様に主翼/尾翼を調整します
8. 調整が済んだら、垂直に発進してみます。
9. 垂直に上昇した機体が上昇の最後に滑空姿勢に入る(返り)なら、OKです
10 そのまま下向きに直線的に降下する場合は、エレバーターを本当に僅か上げるか、機首の錘を僅か
少なくします(重心を下げる)
11 垂直に上がらずに、宙返りしてしまう場合は、エレベーターを僅かに下げます。
12 返りが良く、滑空状態になったのに、滑空が悪く時間が延びない場合が多いと思います、垂直上昇
法は、在る程度滑空を犠牲にして、高さで時間を稼ぐ方法ですから、止むを得ませんが、僅かにキャ ンパーを加える等を試みてみます。(実際にキャンパーの有無は大差有りません)
「飛行訓練室2」のアニメーションなど参考にしてください。
以上の様な方法で重心位置を決め、調整すれば、良い結果が得られるでしょう。
しかしながら、留意すべき点が有ります、ゴムカタパルトによる発進(手投げもしかり)をする紙飛行機は
実際の飛行機には有り得ない飛行をします、それは、初速と定常滑空速度の差があまりにも大きい事です、この速度差(ゴムカタパルトでは約20倍)どちらにも適応する状態を作る事です。
特に発進時の高速状態(約200km/h)では、主/尾翼の僅かな形状の変化も極端に現れてきます。
このあたりが、「紙飛行機は指で飛ばす」と言われる原因です、貴方なりの調整法が最善の方法です。
各種翼平面形状に対する揚力点、平均翼弦の求め方については別に記します。