主翼の形状
主翼の平面形状には色々な形があります、代表的な物を挙げると次の様な種類があります。
楕円翼
翼幅に対する翼弦の長さが、楕円関数になるような形です。翼端に発生する抵抗は
楕円翼では最小になります。実際の飛行機では製作に難しさがあり、量産性、コストに
問題があって、良いのが解っているが使われる事は少なかった、実機では過去には
スピットファイアー等に導入されたが、現在は殆ど使われていない。
模型の分野では、翼前後縁が楕円曲線で作られているものを楕円翼と言っている。
実機と違って模型では、製作に問題も無いし、コストも変わらないから有効に使って
良い形と思います。実際に作ってみると、同じ翼面積、翼面荷重でも滑空速度の違いが
体感できます。
後記するテーパー翼と違い平均翼弦長を求めにくいが、私の場合、乱暴に最大翼弦長の
85%で計算しています。(二宮モデルには、多く使われています)
矩形翼
最も単純な、矩形の翼で、翼弦長が取付部から翼端まで同じである翼形状です。
簡単で作りやすい事から、実機では初期の航空機に多く使われました。
現在でも、小型機や、ライトプレーンなどで使われています。
失速状態に近い時でも、翼端に近い部分の気流の剥離現象が起きないため、操縦が
最後まで可能なために、ライトプレーンなどのスカイスポーツ機には向いているのが
その理由のようです。
紙飛行機などでは、同じ面積、形状の楕円翼やテーパー翼に比較して、揚抗比が悪く
また同じ翼幅の場合でも、付け根に掛かる力が大きく充分な補強が必要なので、殆ど
使われない(プロフィール機を除き)。
テーパー翼
現在、最も一般的な形です。取付部が最大翼弦で翼端に向かって直線的に小さくなる。
構造的な強度、揚力分布が、楕円翼に近い特性を持っているために、楕円翼の代わりに
広く使われている。
紙飛行機の場合、直線的で工作が易しく、左右のバランスの取りやすい形と言える。
これ等が基本で、その他も有るが一般的には変形翼として扱われている。
平面形の違い以外に、取付形状による翼形状の分類が出来る、多くは航空機の速度の
増加に対応した変化で有るが、後退角を持った翼などが、その例です。
次に、それらの様子を説明します。
後退翼
翼弦の25%を結ぶ線が後方に生じる角度を後退角と言う、この目的は、航空機の
速度が音速近くになると生じる衝撃波の発生と抗力の増加を抑える事が出来る事である。
模型飛行機などの速度では、この後退翼の効果は殆ど意味を持たない、ただ形状的に好みで
導入される(その他にも僅かな理由はある、後記)。
実機では構造的、特性的に色々長所があるが、紙飛行機や模型飛行機では、低速で翼端失速
を起こし易い欠点の方が目立つ、ただ、同じ上反角でも後退角が有ると、ローリング安定には
有利で、僅かながら上反角の役目もする為、紙飛行機の垂直上昇機には経験的に使われている。
デルタ翼と言うほぼ三角形をした翼が実機には有るが、これは後退角を持ったテーパー翼の
テーパー比の大きい物といえる。
前進翼
後退角と反対に前方に角度を持つ、前進翼と言う形式がある、実機ではカナード機に採用されて
いる事が多い(先尾翼機)その理由を私は良く理解していない。
前進翼の場合、マイナスの上反角効果が有るので、結果的に操縦不安定になりやすい。
しかし、一部の戦闘機などに採用されているのは、戦闘機の場合、復元力が色々な戦闘姿勢を
取る場合の妨げになるからで、安全な飛行を保証する為ではない様です。
一部の滑空機にも使用されているが、これは翼端失速を起こしにくい特性を利用したと考えられる。
可変翼
飛行中に、その飛行速度や、飛行状況に合わせて後退角を変化させる事が出来る可変翼と言う
物が有る、多くは戦闘機(戦闘爆撃機)に使われているが、離着陸の速度、距離の低減と、
航続距離の増加を目的としている。
この他にも、翼の平面形を特徴付ける要素に、主翼の縦横比(アスペクト比)がある。
理論的に同じ翼面積である場合、アスペクト比が大きいほうが、揚力は大きいが構造的に
限界がある、人力飛行機などでは、非常に大きいアスペクト比の翼が使われている。
紙飛行機などでも、アスペクト比の大きい方が滑空比は格段に向上するが、所詮紙なので
翼端にねじれを生じてしまうので、可能な範囲は決まってしまうようです。
色々な形式を作って体験してみてください。