「紅葉の曼荼羅」

                                中谷健太郎


「もの好きな旦那衆」から小銭を集めて、「湯布院がらみのアート」をストックしよう、と
「湯布院アート・ストック・クラブ」を創った、7年前ほど前の話である。
 裏さんが事務局を支える観光協会の「湯布院・アート・プロジェクト」、その舞台に、
大勢の作家や、作品群が登場する。それを「湯布院がらみのアート」と呼ぼう。
中にポロポロと零れ落ち、あるいは踏みとどまって、ご縁をつないでくださる作品がある。それ
らをストックして蓄えよう、いつの日か、「湯布院町立美術館」が開かれる時、「建物、ありがと
う、中身はお任せを」と、すんなり、「全ストック」を寄贈する。ヨロシイ。「貧者の一灯、苦節二十
年の仕掛け花火」じゃ。
 ところが今年、突然、町が「治権」を失った。「町立美術館」の夢は消えた。
新しい「由布市」とやらにお願いしてまで、「湯布院がらみの一灯を、贈るつもりはねえよッ」。
見得を切ってはみたものの、夢は仕掛けの花吹雪、口惜し涙の後髪、どの道さして登ろうか
と、思案投げ首、ちょうどの「切り」へ、現れ出たのが、ドルドーニュ美術館です。
 「アート・ストック・クラブ」のメンバーたちが歩いてきた「アーティスト・結び」の筋道を、
裏さんが個人でひっそり、辿ってくれていた事になる。
 やれやれ、未来図が見えてきたぞ、由布の山道、紅葉の曼荼羅。


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