新説ゼロヨンQ太 伝説を継ぐ者

〜ν-MAGNUM(ニュー=マグナム)号〜

第1話


 

「きゃっほ〜〜〜う!
今日のレースもこのキュウ(Q)様がいただきよ〜〜〜!!
いけいけマグナム〜〜〜っ!」


 *  *  *  *

 某月某日、とあるデパートの一角。恒例となったチョロQレースの会場に、少女の元気な声が響く。このオテンバ娘の傍らには、レース展開を物静かに見つめている美少女の姿。実に対照的な二人である。
 ところで、『マグナム』と呼ばれた赤のニュービートルは、一躍トップに踊り出るなり、今まさに独走体制に入ろうとしていた。と、その時。


「あ、あのマシンは〜〜〜っ!?」
 オテンバ娘の絶叫をかき分けて、一台のマシンがニューマグナム号を襲う。
「わっはっは。驚いたかキュウ!
オレ様のデュークスペシャルだ〜〜っ!!」

 『デューク』こと矢名 公灼(やな こうしゃく)が猛る。このカスタムマシンで今度こそキュウをギャフンと言わせてやるのだ!

 *  *  *  *

 ニューマグナム号が抜かれる。オテンバ娘は驚きの色を隠せない。
「は、早い!?
あれがチョロQのスピードなのっ!?」


 緊張が走ったその時、美少女の凛とした声が張り詰めた空気を破る。
「問題ないわ。」
 彼女はオテンバ娘を制すと、2枚のコインを取り出した。
 面前で両腕が交差する。秘技コインシュート・・・。

 1枚目のコインが空を切裂いて、ニューマグナム号のコインホルダーに収まる。その勢いでガルウィングとリアウィングが展開、『赤い弾丸』が身悶えた。

「不死鳥形態(フェニックスモード)。」

 再び彼女が口を開いた時、2枚目のコインがホルダーに収まる。すると、一瞬動きを止めた後、ニューマグナム号は生き返ったかのように雄々しく走り出した。

 そして・・・。


 このレースは、ニューマグナム号の劇的な逆転勝利によりその幕を降ろしたのである。

 *  *  *  *

 帰り道。伊井野 奏(いいの かな)が、傍らの美少女に話しかける。
「キュウ、今日は危なかったね。」
 微笑を浮かべるキュウ。
「余裕ありまくり。可愛くないんだから、もう。」と、返す奏。

 そんな他愛もない会話が続くなかで、『キュウ』、即ち向江 弓(むかえ ゆみ)は、突き刺さる視線―それも複数の―を感じ取っていた。
 ・・・やれやれ。
 ポケットの中で、愛車ニューマグナム号をそっと握り締めると、キュウは天を仰いだ・・・。

作者:竹下広司さん

注意:本作品はゼロヨンQ太 続編を想定したパロディです。


第2話