地理教材研究会 春の例会 巡検

・日時: 2009524日(日) 1300 JR守山駅 集合

・案内:高橋春成先生(奈良大学)・

安藤誠也氏(奈良大学・院卒)・福岡崇史氏(奈良大学・院生)

・テーマ:「野洲川の水害」・「琵琶湖の外来魚問題」・「比良山地の獣害問題」 

13時にJR守山駅駅前に集合。今回はマイクロバスにてポイントをまわる。

@野洲川の水害について



「三角州」の読図問題でお馴染みの野洲川は、鈴鹿山系の御在所山に源を発し、甲賀地方を貫流して、琵琶湖に注ぎ込む。古くから洪水を繰り返し、下流域の人々の生命や財産を脅かしてきた。さらに天井川になっている河川としても知られている。
  ゆえに、野洲川下流域においては、水害史跡が多く見られる。これらには、防災祈願や水害からの復旧を願い建立や植樹されたもの、被害にあったり殉職した人々を弔うもの、水害対策野洲川はかつて河口付近において二股に分流(いわゆる「北流」と「南流」)していたが、昭和28年の台風13号襲来により大きな被害を被ったことを契機として、野洲川改修工事が行われ、新たに野洲川放水路が掘削された。野洲川放水路は昭和54年に開通している。廃川となった部分は、今日、河川改修の際の代替地、公園として整備されているほか、堤防部分の植生があるところは野生動物の棲家としていわば「里山」的な地として大事にされている。元来、天井川であり、その堤防は8〜9mもあり、景観はまさしく里山のようである。
 また、当地在住でもある高橋先生から、当地域は水害常襲地ゆえに、「堤防が切れる」という言い回しがあったり、防災無線など情報伝達手段が無い時代は集落内の寺の鐘を「早鐘」とわれるように連打し異常を住民に知らせるなどしたという興味深い話を伺った。

参考:国土交通省 近畿地方整備局 琵琶湖河川事務所HP

http://yasu.biwakokasen.go.jp/index.html 

A    比良山地の獣害問題

 全国の中産間地域で現在、獣害により50億円相当の被害で出ているという。特に西南日本において多いという。獣害とは、野生鳥獣による農業への被害をいう。その被害とは、農作物への食害のみならず、圃場や畦畔を荒らすなどもある。これらの被害の原因は何かといえば、人間の社会・生活の変化にあるという。つまり、高度経済成長期以降、日本各地の里山と呼ばれる地域の景観や環境が大きく変化し、農業人口減少・米の減反政策等により田畑が姿を消し、耕作放棄地となっていくところにあるという。耕作放棄地は、今日草木が繁茂する藪地となっており、それがイノシシ等野生鳥獣にとっては格好の活動の場である。結果として、人間の活動領域と野生鳥獣の活動領域が接近し、さらには交錯してくるなかで、獣害が発生・拡大してきているともいえよう。
 獣害対策としては、田畑のまわりに電流を流した防護柵を設置し動物の侵入を防ぐとともに、各地に捕獲用の仕掛けを設置し駆除する方法が行われている。ただ、各集落における営農意欲等によってはなかなかこういった対策が十分に行われず、機能していない地区も多くあるという。

 志賀町在住のN氏からは、捕獲用仕掛けの説明や実際の営農者としての立場からの獣害についての話を多々うかがうことが出来た。高橋先生からは、研究者として獣害について、現状と対策、あるいはこの問題の解決にむけて如何に取り組むべきかという示唆に富んだ話を伺った。
 また、安藤氏からはイノシシと放置竹林というテーマで説明を頂いた。竹林とは元来人間が植樹してはじまったものであるが、日常生活から竹製品(たとえば笊・団扇のホネ)の減少に伴い、放置竹林が増加した。その放置竹林をイノシシは、栄養価の高い食物であるタケノコを摂取できるエサ場・移動経路・潜伏場所・子育ての場として利用しているという氏の綿密なフィールドワークも基づく貴重な話を伺うことが出来た。 

参考:
高橋春成『人と生き物の地理』古今書院、2006120頁。
高橋春成「イノシシ被害対策の歴史(シシ垣)とGPSテレメトリーからみた近年の被害地におけるイノシシの動向」生物科学、602号、200969-77頁。
安藤誠也「イノシシと放置竹林」竹、106号、200814-16頁。 
シシ垣ネットワークHP http://homepage3.nifty.com/takahasi_zemi/sisigaki/sisimein.htm

B    琵琶湖の外来魚問題

 新聞やニュースなどでも知られているように、今日琵琶湖では、ブラックバスといわれるような外来魚が多く生息し、ニゴロブナなど琵琶湖固有種が絶滅の危機に瀕している。
 福岡氏からは「地理学の視点から外来種問題を考える」というテーマで、琵琶湖岸にて説明を頂く。外来種とは何か、外来種の何がどのように問題なのか、またその問題に対してどう取り組むべきなのか問説明を頂く。日本は海外に比べて外来種に対する対策が非常に遅れているということや、琵琶湖の伝統的漁法である「えり」も現在では大部分が外来種を捕獲する目的であることや、琵琶湖では釣上げた外来魚はリリースすることが禁じられており「回収BOX」が湖岸に設置してあることや、「キャッチ&イート」を目指し様々な料理法が考案されているなどのこれまた非常に興味深い話をしていただいた。

参考:
福岡崇史「オオクチバスの季節的食性の変化」奈良大学大学院研究年報、第14号、2008125155頁。
琵琶湖博物館HP http://www.lbm.go.jp/emuseum/zukan/gyorui/

                       (記録・井ノ元宣嗣)