目次
・今月の勘違い ・近況報告『日本晴れ・再び』 ・読書録 (『オオカミ族の少年』『ドーム郡物語』『彩雲国物語4・5』『七姫物語2』) |
今月の勘違いまたまた我が家のとんちんかん会話集です。☆夫「土肥温泉って古い温泉なんだって」 私「えっ、ぬるい温泉?」 ☆私「牧場に、牛がいっぱいいたよ。あたりまえだけど」 息子「えっ、屋上に牛がいた?」(←ぜんぜんあたりまえじゃありません!) ☆息子「俺、今日から二週間、衣替えなの」(←息子の中学校は、衣替えの時期に二週間の幅を持たせているのです) 夫「えっ、子供がいるの!?」 ☆私「行ってきまーす」 息子「えっ、ミッキーマウス!?」 ☆夫「今の電話、誰からだったの?」 私「信金の人」 夫「えっ、締め切りました? 何を?」 ☆私(クレープ屋のパートから帰ってきて、猫を撫でようとしたら、猫がしきりに手の匂いを嗅ぐので)「お母さんの手、バターの匂いがするでしょう」 夫「えっ、マダムの匂い?」 ☆夫「『風と彫刻の丘美術館』で特別展をやってるんだけど……」 息子「えっ、『魔娑斗チョップの丘』?」 |
近況報告『日本晴れ・再び』 このあいだ、6月号から9月号にかけてのこの通信で3回にわたって連載(笑)した、宇宙人襲来ものテレビドラマの夢。 |
読書録★『オオカミ族の少年 クロニクル千古の闇1』 ミシェル・ペイヴァー 評論社 すごい面白かったです。久しぶりにこういうがっしりした児童文学で思いっきりわくわくしたような気がします。童心に返って面白い物語というものの原点を思い出した感じです。 特に、雪山で割れ目に落ちるシーンとか、洞窟で熊から隠れるシーンとか、臨場感があってハラハラどきどき。五感に訴える力強い描写に、読んでるこっちまで野性の生存本能が掻き立てられる気分でした。 特筆すべきは、まるで少数民族モノやサバイバルもののドキュメンタリーを見ているかのような、古代生活のリアリティ。濃厚な神秘の気配と、厳しい自然の中に生きる太古の人々の生活のディテイルにわくわく。酒井駒子さんのイラストも素敵。続刊が楽しみです! ★『ドーム郡物語』 芝田勝茂 小峰書店 約二十年ぶりにシリーズの新作が出たというので、新作を読む準備として、昔読んだことがあるはずだけど内容を全く覚えていない一巻目から読み返してみた……つもりだったんですが、最後まで読んでも全くどこも記憶になかったと言うことは、もしかして私はこれを読んでいなかったのかも……? 『ふるさとは夏』という作品がすごく面白かった、好きな作家なので、これもとっくに読んだと思い込んでいたのですが……(^_^;) もしかして、図書館員だった頃、貸し出し返却書架整理等の際にしょっちゅう手にしてはいたので、表紙だけ見て読んだ気になってたのか!? というわけで、読んでみたところが全く記憶になかったシリーズ一巻目。シリーズといっても、一作でちゃんと完結してます。 えーっと、面白かったけど、読んでて恥ずかしかったです……。特に、最初の方。 森の小屋で1人で暮らす素朴でやさしい娘が木綿のスカートをひらひらさせながら小鳥と一緒に歌って踊る……。この本、昔、福音館から出てた頃は、当時としては画期的だった和田慎二の少女漫画イラストが表紙を飾っていたんですが、なるほど、出版社の人がその決断を下したのもすごく納得できる、メルヘンチックな70年代少女漫画テイスト。きゃ〜、照れる……。 しかも、要所要所で彼女が歌う歌の歌詞が挿入されているのが、また恥ずかしい……。 いや、別にけなしてるわけじゃないんですけど……。ただ、このトシになってこれはちょっとキツい……(笑)。 でも、きっと、初版発行当時に読んでいれば、あるいは本来の対象年齢である(と思う)小学校高学年の頃に読んでれば、違和感なく楽しく読めたに違いないです。今でも、最初の照れ臭ささえ乗り越えれば、特に後半は大変面白かったです。やっぱり名作だと思います。佐竹美保さんの新挿絵もいいし。面白かったです。 ★『彩雲国物語・想いは遥かなる茶都へ』『同・漆黒の月の宴』 雪乃紗衣 角川ビーンズ文庫 あいかわらず楽しいです。さらっと読めて、前向きで元気が出て、軽妙な笑いも乙女なトキメキも満載の、正統派のライト少女小説。 『がんばる女の子へのお姉さんからの応援歌』的な、適度な教育臭(笑)のせいもあってか、オールド少女小説ファンにも馴染みやすいため、かなり読者の年齢層が幅広いらしく、後書きに、ファンレターの10通に1通くらいには『私が読者の最年長かも』と書いてあるとあったのには笑いました。 冬木42歳、私こそは最年長か? いや、きっと、もっと上の人もいるでしょう。中高校生の娘さんと仲良く回し読みしてる40代後半のお母さんとか。あるいは、お孫さんから借りて読んでる60才のお祖母ちゃんとか……は、さすがにいませんよね(^_^;) でも、少数の例外はあっても、こういう少女小説を、『職業柄』とか『研究・分析・評論の対象として』とかじゃなく、素で、娯楽として読んでる人の上限って、だいたい40代半ばくらいじゃないでしょうかね? というのは、コバルトで氷室冴子さんがデビューした1977年に高校生だった人たちが、今、私より少し上の40代半ばのはずなので。コバルトで氷室冴子や久美沙織や新井素子なんかをリアルタイムで読んで育った人たちの中には、途中で中断を挟みながらも今でも少女小説を読んでる人もいるんじゃないでしょうか……と、想像します。 (私は中高校生時代から続けての少女小説読みじゃなく、社会人になってからおもむろにコバルトを読み始めたクチなんですが……) ★『七姫物語第二章 世界のかたち』 高野和 電撃文庫 少女の目線でゆったりと描き出される、どこか懐かしい歳末風景が良かったです。 今回、一番、この作品の特徴が出てるなあと思った箇所は、黒胡椒風味の鴨料理を食べるシーンなんですが、黒胡椒の風味を、それを初めて食べる子供の視点で、そろそろと手探りするかのようにゆっくり丁寧に描き出してゆくのです。で、『その見慣れない香辛料が黒胡椒だ』というのは、描写が終わるまで書いてないんだけど、描写だけで、『あ、これはきっと黒胡椒だな』と、見当がつく。 まるで、赤ちゃんが周囲の世界にたどたどしく手を伸ばして、手に触れるものすべてを触ってみたり舐めてみたりして、その形や色や味や手触りをじっくりと五感で味わいながら、まっさらな頭の中に徐々に世界のありさまをイメージしてゆく過程を主観に寄り添って静かにじっくりと追ってゆくような、そういう描き方だと思います。 そんなゆったりした静かな描き方ながらも、一応、いろいろと危機一髪の事件が起こったり、国際情勢が大きく動いたりしているのですが、そういう出来事自体より、それらの出来事が子供の澄んだ目に映し出されるさまを描くことのほうに、この作品の重点があるような気がします。子供の目に映る世界の輪郭や色、風の匂いや温度――つまり、副題の通り、『世界のかたち』を描いた物語。なるほど確かにタイトル通りだ……と、読み終えて思いっきり納得です。 『なにが起こっているか』ではなく、『それが少女・空澄の目にどういう風に映っているか』を描くから、何もかも、空澄の眼差しというフィルターを隔てたカメラの向こうの出来事のように、少し遠くて、そして、その、遠くの風景を描く手つきが優しい――。少女視点一人称であってこその、この作品、その魅力だと思います。 ☆読みかけ等メモ 『彩雲国物語 朱にまじわれば紅』『ちーちゃんは悠久の向こう』『虹への旅』『ブラック・ベルベット』『空の鐘の響く惑星で7』 |