月刊カノープス通信
2005年6月号

 目次 

・季節の便り
・今月の勘違い
・近況報告『夢の連続ドラマ・その1』
・読書録
(『空ノ鐘の響く惑星で6』『彩雲国物語2』『我が家のお稲荷さま。3』『ミナミノミナミノ』
『グインサーガ100』『魔法の庭』)




 季節の便り 

 今日、毎年恒例の蛍見物に行ってきました。『行ってきた』と言っても、家から車で2分ほどの近所のたんぼです。
 昼間は暑かったけど夜の谷津田(山間の田んぼ)はひんやりとしていて、気温が低いせいか蛍はあまり飛んでいませんでしたが、草の間にいっぱい光っていて、時々ふわっと飛び交ってくれました。
 今日は見るだけだけど、これも毎年恒例で、農薬の空中散布前日には、少し捕まえてこようと思います。
 長袖長ズボン、ゴム長靴に身を固めて行ったけど、おでこを蚊に刺されました……(^_^;)





 今月の勘違い

 またまた我が家のとんちんかん会話集です。
☆夜寝る前に給湯のスイッチを切った時の会話。
 私「台所の電気、消すよ。お湯も消しちゃったからね
 夫「えっ、天然ボケしちゃった? ……いつものことじゃん」

☆夫が途中まで洗い物をしてくれた時の会話。
 夫「箸はまだ洗ってないからね
 私「えっ、ハチはまだ笑ってない? ハチって、ハチ公?」

☆私「私、先にお風呂に入っちゃおうかな
 夫「えっ、行方不明になっちゃおうかな?」

☆先日、テレビで映画『リング』をやった時の会話。
 夫「今日、お父さんは9時から怖いテレビを見るから、お前たちは早く寝たほうがいいよ」
 息子「えっ、怖いテレビって何を?」
 夫「『リング』を
 息子「えっ、『貧乏』?」
 ……確かに、それは怖いです……(^_^;) 我が家にとっては、日々、生活を脅かされている一番の脅威で、まさに『今そこにある危機』ですから(^_^;)

☆テレビアニメの次回予告で、『そろばん天才』がナントカと言っていた時の会話。
 夫「えっ、シルバー戦隊?」
 息子「えっ、ごますりセンター?」

☆テレビのニュースで季節の話題をやっていました。
 テレビ「春の訪れを告げる……」
 夫「えっ、猿のお告げを告げる?」




 近況報告『夢の連続ドラマ・その1』

 先月、ヨン様がいっぱい出てくるヘンな夢の話をしましたが、今月もまた、ヘンな夢を見ました……。

 夢の中で、私は子供で、学校の教室にいるのです。
 教室は校舎の二階か三階にあるようで、窓からは空が見えます。
 その空に、ふと見ると、ミラーボールを潰したような銀色の楕円形の多面体がほぼ静止状態で浮かんでいるのです。
 さらに、よく見ると、その近くに、似たような形の、厚紙で作ってあるかのような白い物体も浮かんでいます。
 元がどのくらいの大きさのものか分かりませんが、かなり低空に浮かんでいて、月や太陽よりかなり大きく見えます。
 どうみても『未確認飛行物体』なのですが、私は、手を上げて、大きな声で先生に報告します。
「先生! 月が二つあります!」
 いや、あれは月じゃないでしょう、月じゃ……(^_^;) そもそも、昼間だし……。

 まあ、それはともかく、なんにしても上空に怪しい物体が浮かんでいるわけで、私はてっきり先生から机の下に隠れるように指示があるものと思って、もう机の下に隠れる体制をとりかけていたのですが、先生の指示は、違いました。
「すぐに校庭に避難して、集団下校になります」
 私も含めた生徒たちは、座布団代わりに椅子に敷いてある防災頭巾をかぶり、あわただしく避難を開始します。

 目が覚めてから冷静に考えてみると、空からUFOが攻めてきた(らしい)時に机の下に隠れたってしょうがないような気もするのですが、でも、さらによく考えてみると、上空に不審な飛行物体を見かけたら、やっぱりとっさに出来ることといえば、窓から離れて机の下に隠れることのような気もします……。だって、窓際にいて宇宙人に見つかっちゃうと怖いし(笑)、窓越しに機銃掃射されたりするかもしれないし、さらに、あわてて校庭に逃げたりしたら、ヘタすると上空から狙い撃ちされ放題じゃないですか。
 でも、あの時、夢の中の先生は、瞬時も迷わず、ただちに校庭への避難を指示したので、もしかすると、あの世界では、あれはすでに可能性を想定されていた非常事態で、先生方の間では、あらかじめ、そういう万一の場合の対処が決められていたのでしょう。

 そんなわけで、私たちは校庭に避難します。
 そこではすでに先に降りてきた生徒から順に、用意された臨時のスクールバスらしきもの(といっても、10人ほどしか乗れないミニバンのようなものです)で一団ずつ送り出されているところです。
 私たちが降りてきたときには、ちょうど前の一台が出て行ったところで、昇降口の前で次のバスを待つことになるのですが、上空にはあいかわらずUFOが無気味な沈黙を保って浮かんでいるし、虫や動物たちも異変の予兆を感じたのか、学級花壇の土の中からありんこがわらわらと出てきて靴に登ってきたので、私は恐慌をきたして、足踏みしたり、片足づつ足を振ってみたり、そこらを跳ね回ったりします。

 ありんこに怯えて焦りながら早く次のバスが来ないかと待っていると、校庭の真ん中に、一台の白い軽バンがドアを全開にしたまま止っているのが目に入ります。
 運転席には誰か座っていますが、どうやら寝ているようです。後ろの座席にも、頭から上着をかぶった幼児が寝ている様子です。
 二人しか乗っていないならあの車に一緒に乗せてもらおうと、私たち数人は、その車に駆け寄ります。
 その時には、いつのまにか私は、もう子供の役ではなく、先生方の一人になっています。若い女教師であるらしいです。

 車に取り付いて中を覗き込む時、私は一瞬躊躇します。
 だって、このパニック状態の中、校庭の真ん中に車を止めて無防備にドアを開けっ放して昼寝をしている人がいるなんて、どう考えても不自然です。いや、パニック状態でなくても、それは不自然です(笑)
 こういう場合、この車の中は何か怖い状態になっているというのがお決まりのパターンではないでしょうか?
 特に、後ろの席の幼児! これは明らかにヤバい! 頭からかぶった布をめくったら、その下には、何か凄く怖いものをみてしまうのが、この手のパニック・ホラーSFの世界(なのか?)のお約束ではないでしょうか……。

 でも、その、夢の中での一瞬の予測が、かえって良かったらしいです。
 私は、最近、眠りながら夢の内容をある程度コントロールする術を身につけたらしく、見ている夢があまりにも怖い展開になりそうだと予測すると、先の展開を修正して、あまり怖くない夢に変えられることがあるのです。だから、最近、それほどひどい悪夢は、あまり見ていません。このまま行くとひどい悪夢になりそうだな……という時には、自分で夢の展開をある程度修正出来てしまうので。(もちろん、ある程度の修正であって、完全に内容をコントロールできるわけではありませんが)

 そんなわけで、車に乗っていた人は、誰か、お迎えに来たお母さんの一人で、なぜかうっかりうたた寝をしていただけで、後ろの子供も本当にただ寝ていただけで、私たちを快く同乗させてくれ、私たちは学校を出ます。
 今、冷静に考えると、そんな状況の時には、道路は避難車両でいっぱいで大渋滞しているんじゃないかと思うのですが、夢の中では、学校さえ出てしまえば、町の様子は普段とあまり変わらず、道路も別に混んでいなくて、私たちは郊外の住宅地を目指します。たぶん、一緒に車に乗った人たちは、みな、同じ方向に帰る人だったんでしょうね。

 商店街を抜け、陸橋を渡り、郊外に向かう車の中で、移り変わる車窓の風景を見ながら、私は考えています。
 ――とりあえず家に帰れそうでよかった。これから世界が滅ぶにしても、とりあえず家族と再会でき、一緒にいられさえすれば、なんとかなるような気がする。少なくとも、家族と一緒に最後の時を待つことが出来る――

 家族といっても、その『私』はこの『私』ではないので、家族も私の家族とは別の家族です。
 どうやら、夢の中の私は独身で、家にはお母さん(これも私の本当の母とは別人)が待っているらしいです。

 バスは町を抜けて、どこか高原の別荘地を思わせる疎らな木立の中に建つ、粗末な平屋根平屋建ての集合住宅に到着します。その一室が、私の家です。
 家は、うなぎの寝床状に何部屋か繋がった間取りで、一番奥は各戸共有のものらしい殺風景な中庭に面して大きな掃き出し窓がある居間です。その部屋の一方の壁際には、なぜか出しっぱなしだったらしい八段飾りのお雛様が飾ってあり、その前に、母がこちらに背を向けて座っています。
 そして、家にいるのは母だけではなく、なにやら大勢の人がいるのですが、よく見ると、それは、女・子供と高齢者ばかりです。どうやら、私がいない間に、私の家は、地域の人たちの集団避難所のひとつになっていたようです。

 ……わあ、長い……。長いので、この夢の話の続きは、また来月!
 まさか夢の話を月刊で連載することになろうとは……(^_^;) ゴメンナサイm(__)m




 読書録


『空ノ鐘の響く惑星で6』 渡瀬草一郎 電撃文庫

 ついに『柱』『ビジター』関係のSF的要素が、異世界ファンタジー的な王国の政治や国家間のごたごたという要素と大きく関わってきました。
 異世界からやってきた人が異世界ファンタジー的な物語の中で活躍する話というのはわりとよくあると思うのですが、その人が異世界の人だということ、異世界とその世界が繋がっていることが、ファンタジー的な世界での物語に、こういう風に根本的な影響を与えることは少ないような気がします。
 主人公が異世界から来た人だろうとなんだろうと、異世界ファンタジー的な世界内での物語は、基本的にその世界内で完結しているのが常なんじゃないかと。
 そういう意味で、これは凄いかも、と思います。当初からの期待を裏切らない展開です!
 どうも、私は、この話のキャラや人間関係のドラマにはあまり強く感情移入できないのですが、そういう、キャラ萌えや人間ドラマへの共感という楽しみを抜きにしても十分に楽しめる、がっしりしたストーリー。これは、期待に違わず凄いお話かも……。

 ちなみに、私がこの作品ではキャラや人間ドラマに感情移入が出来ないのは、キャラが好みじゃないとか、描かれる人間ドラマが共感できないようなパターンであるからとか、そういうわけではありません。
 ただ、作品としての完成度が高すぎ、縦糸になるメインストーリーと横糸になる人間ドラマのバランスが良すぎて、綻びがないため、まるで表面がつるつるしたものにはとっかかりがないように、強く感情移入する隙がないのではないかと思います。
 どのキャラも、この作品の中でその役を演じるのに必要十分な個性と魅力を持っており、必要に応じて巧みに配置されており、逆に言うと、それ以上の、ストーリー展開上の必要性を超えた濃すぎる個性や、全体のバランスを崩すほどの過剰な思い入れを感じさせないので、こちらも、過剰に思い入れを誘われないのではないかという気がします。
 キャラの魅力が少ないわけじゃなく、キャラの魅力だけが突出していなくて作品全体のバランスが取れているために、キャラの印象が薄いんじゃないかと。
 バランスの取れた癖のない味の飲み物みたい?
 パンプキンとかムスカとか、ビジター側の面々はけっこう印象的なんですが……。

 でも、これは私の個人的な感覚であって、フェリオ王子なんか、このあいだ読んだ『このライトノベルがすごい 2005』のキャラ人気投票ですごい上位に入ってたので、たぶん、みんなはあのキャラに感情移入できてるんですね。たしかに、正統的な主人公タイプの、普通に好感の持てるキャラだとは思いますが、私には『好感』『好意』以上の『萌え』までは抱かせてくれないんですが……。
 やっぱり、作風との相性の問題でしょうか。私が強く感情移入するのは、もっと、理知より皮膚感覚に偏った作品の場合が多い気がします。

 でも、キャラに萌えなくても十分に楽しめる、キャラの魅力だけに頼らない本当に面白いお話だと思うし、今、特に楽しみなシリーズの一つです!


『彩雲国物語2』 雪乃彩衣 ビーンズ文庫

 相変わらず楽しいです。王様のイカれたプレゼント攻撃に、ニマニマ……。
 あと、『超梅干し』サイコー!!
 ヒゲもじゃボサボサ男が身なりを整えたらイイ男なのもお約束!
 黄奇人も名前どおりキテレツで素敵〜v
 でも、私には相変わらず、武官と文官、二人の若手エリートの区別が付かないぞ……(^_^;)

 そんなふうに楽しい中に、進路に悩む女の子の気持ちも描かれていて共感できます。
 ああいう状況(女の子には公務員への道は閉ざされているとか、嫁に行った先で勉強なんかしてたら陰口言われるだろうとか)って、大昔の中国風異世界じゃなくても、ほんのちょっと前までの日本でもごく普通にある状況だったし、今だって建前はともかく一皮向けばまだまだああいう意識ってけっこう残ってるよね……。


『我が家のお稲荷さま。3』 柴村仁 電撃文庫

 こちらも相変わらず楽しかったです。
 でも、今度はちょっと、一巻だけではけりがつかない大きな敵組織なんかが現れてしまって、大きな事件が起きてしまったので、その分、細かい遊びが減ってしまって、普通のストーリーものに近くなってしまったのが、ちょっとだけ残念。
 やっぱり、三巻目ともなると、ちょっと大きな敵組織でも出さないと間が持たないんでしょうか。
 事件を解決するお話が面白くないわけじゃないんですが、そういう面白さは他にいくらでもあるので、今後、そっちに押されてこのお話の独自の持ち味を出す余裕が減ってしまわないといいなと思います。

 あと、今回、後書きでちょっとびっくり。この作者、女の人なんだ〜。


『ミナミノミナミノ』 秋山瑞人 電撃文庫

 『猫の地球儀』『イリヤの空 UFOの夏』の秋山さんの新刊\(^o^)/
 面白かったです!
 あいかわらず人物や世間の描写に妙なリアリティが……。荒唐無稽さと卑近なリアリティのバランスがいいです。
 カンフーさんのキャラクターとか天誅さんの『おしっこ』のエピソードとか、強烈です。
 カンフーさんが初登場で『ああ〜っ、とんでもないことをしてまった!』みたいな顔をするところで、もう大笑い(^O^) いいキャラだ〜。
 別に美形なわけでもカッコいいわけでもない普通のあんちゃん、おっさんを、たいした字数も費やさずにこれだけキャラ立ててしまうって、すごい。
 あと、『便所カレー』! これは強烈だ! 『便所カレー』ですよ、『便所カレー』! 確かに常軌を逸している!

 ……って、これ、未読の人には何のことだかさっぱりわからないですよね(^_^;)
 とにかくもう、『あるかでぃあ号、離水!』、なんですよ〜!!\(^o^)/
 嵐の夜の航海のシーンは、臨場感があってスリル満点でした。
 これ、ドラマ化すると良さそうな話だなあ……。NHK少年ドラマシリーズのノリで、夏休みにやって欲しい。


『グインサーガ100』 栗本薫 ハヤカワ文庫

 例によって微ネタバレ注意です。

 何か、グインとイシュトヴァーンは、また、前巻と同じことをもう一回やっているような……(^_^;)
 イシュトについてイェライシャが言っていたことは、非常にもっともだと思います。
 『ああいう人は中途半端に情けをかけて関わっても自分にも相手にもためにならないない』みたいな。
 私だって、もしイシュトと現実に知り合いで、グインが私の友達だったら、きっと同じことを忠告すると思います。もしも、現実の世界でだったら……。
 ああいう根本的な欠損を抱えた人には、中途半端に片手間で情けをかけては、自分も傷つくだけでなく、相手にとっても最終的にはかえって傷を深める可能性も高く、かといって、『中途半端に』ではなく、その人のために自分のすべてをなげうって自分の愛で全身全霊をかけて立ち直らせてあげようなんて、うっかり思い込んでしまったら、それはそれで、そう思ってしまった人のほうも、ブラックホールのようなその人の欠損に取り込まれて、その人の傷の一部になってしまうだけなんじゃないかと……。

 でも、それでも、読んでいて、グインにイシュトヴァーンに手を差し伸べて救ってあげて欲しいと思ってしまうのは、グインが物語の主人公だからです。
 しかも、ただの主人公ではなく、無敵のスーパーヒーローだからです。
 グインというキャラがあまりにも人間離れしてすごい主人公だからこそ、読者である私には、『この物語の中では、グインになら何でも出来る』と感じられてしまうのです。グインというキャラは、それだけヒーローとしての風格を備えた、傑出した主人公なのですよね。
 普通の、文庫本一冊で終わるようなお話の中で、主人公のことを、『この人はものすごく強くて偉大で何でも出来るんです、万能無敵なんです』みたいに言葉で説明してあったら、ヘタすると「はぁ?」みたいな感じになってしまいますが、グインの場合、グインが心身ともにいかにすごいかということを、今まで100冊分をかけて色々と具体的に見せつけられ続けていますから、読者は、グインのスーパーヒーローぶりをイヤと言うほど納得しています。これも、長さの力、文字数の力ですね。

 そんなグインだからこそ、この物語の中では、イシュトヴァーンのような人が誰かの愛によって救われるという、自分が現実においてはあまり信じていないけれどだからこそ物語の中でくらいは見せてもらいたい美しい奇跡をも、彼になら起こすことが出来てしまいそうな気がして、つい、期待してしまうんです。

 でも、まあ、この話の場合、現段階で本当にそういう奇跡が起ることはストーリー展開上ありえないのは分かっているわけなのですが、それでも、つい期待しちゃうから、じれじれ、イライラしちゃうんですよね……(^^ゞ


『魔法の庭』 妹尾ゆふ子 プランニングハウス

 大好きな作家の、大好きな傾向のファンタジーなのに、なぜか読みそびれていたシリーズ。しかも、すでに絶版の……(T-T)
 私、妹尾ゆふ子さんの大ファンなんですが、ファンになったのが、実は、ごく最近なんです。前々から名前と作品名は知っていて、たぶん激しく自分の好みだろうと予想はしていたのに、あまりにはっきりそれが分かっているためか、ついつい、手を出すのが後回しになっていて……。
 だから、古い作品には読んでないものもあるのです。
 で、この作家の古い作品には、入手困難なものが非常に多いのです(T-T)
 このシリーズなんか、大陸書房から出てたのが、大陸書房が倒産して絶版になり、その後、この、プランニングハウスから再刊されたら、プランニングハウスがまた倒産してしまったという不運さ……。

 でも、図書館には、ちゃんとあったのです\(^o^)/
 もし、すぐ手に取れる棚にはなくても、リクエストすれば書庫から出てくるのです。あるいは、他の図書館から借りてきてまで貸してくれるのです。ありがとう、図書館! ビバ、図書館!

 で、期待通り、超絶好みのお話でした。ああ、いいなあ、うっとり……。骨の髄までファンタジー!
 なんと言っても、文章が! 文章だけでファンタジー!

 お話の中で、主人公の歌人が歌の歌詞を作り、それを別の人が、もっと装飾的に作り直して聞かせるというシーンがあります。
 で、最初の歌も十分良くて、それだけ読んだら、それでも十分素敵だと思ったはずですが、それを、この物語の中に出てくる『北方歌謡』の定型を踏んで作り直した典雅な歌詞を読んで、
(あ、確かに違う……。こっちの方が、もっとファンタジーだ!)と。
 内容は同じなんですが、語っている言葉が違うんです。
 その違い方は、ちょうど、他の、凡百のお手軽ファンタジーと、こういう作品の違いのようなものだなあ、と……。

 ごく普通の、普段着の言葉で書かれたファンタジーも、私は好きだし、ストーリーの面白さやキャラの魅力という点ではそういう作品も全く劣るところはないのですが、たまにはこういう『文体だけで骨の髄までファンタジー!』という作品にも触れると、心が震え、ファンタジー魂が奮い立ちます。ああ、私はファンタジーが好きだ……と、あらためてしみじみ実感します。そんな風に思わせてくれたこの作品に感謝です。こういう作品が存在してくれること(絶版だけど)が嬉しいです。
 なのに、自分では本を買えなくてごめんなさい……(T-T)

☆その他、メモ。『キーリ5』、兵長と女の子のエピソードには、ちょっとうるっと来ました……。大きなストーリーが動き出してるので次巻に期待。『このライトノベルがすごい 2005 (宝島社)』、ほとんど男の子向けレーベルの作品しか取り上げられてないから知らないものも多かったけど、そういえば、女の子向けのレーベルもそんなにちゃんとチェックしてないし……要するに私は読んでる本が少ないんですね(^^ゞ この中で、まだ未読で読んでみたくなったのは『吉永さんちのガーゴイル』と『神様家族』かな。
 他に、『蒼路の旅人』『スーパー・トイズ』『グインサーガ101』読み途中。


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