月刊カノープス通信
2005年1月号

 目次 

・季節の便り『七草がゆ』
・今月の勘違い
・近況報告『ハデハデのお茶?』
・読書録
(『長野まゆみ月間』『6』『風の王国』『グインサーガ98蜃気楼の旅人』)




 季節の便り『七草がゆ』

 一応、一月号とはいえ、もう正月気分もすっかり抜けた今頃となってはちょっと季節外れな話題ですが……。
 皆様、七草粥は食べましたか?
 我が家の七草粥は、ちょっと変わっていて、ごく薄い塩味で炊いた七草入りのお粥に、火を止めてから、一センチ角くらいのさいの目切りにしたお餅を入れて少々蒸らし、それに、お砂糖をかけて食べるのです(しかも、かなり大量に……)。

 お正月のご馳走で疲れた胃腸を労るどころか、ますます胃腸が疲れそうなレシピですが、私はこれが好きで好きで、お正月じゃなくても一年中いつでも食べたいくらい。
 七草粥に、お餅はまだしも、砂糖をかけるというと「えーっ!?」と言われることも多いのですが、セリを初めとする七草の青臭くも爽やかな風味と白砂糖の優しく上品な甘さが絶妙に調和して、とってもおいしいんですよ!

 七草って、必ずしも全部揃わなくても、とりあえず美味しく食べられますよね。
 子供の頃は、母か私が近所の空き地や道端で手に入るだけのものを摘んできていましたが、東京の住宅地で一月初めに手に入る野草といえば、ナズナ(ぺんぺんぐさ)、ゴギョウ(母子草)、ハコベの3種類くらいでした。あと、『ホトケノザ』と呼んでいる野草も生えていることは生えていましたが、それはどうやら、七草でいう『ホトケノザ』とは全く科が違う植物らしいので除外してました。
 あとは、それに、もしあればスズナ・スズシロ、つまりカブと大根を加えていました。
 だから、『七草粥』ではなく、その年によって『三草』〜『五草』粥でした(^_^;)

 今では、スーパーで七草の詰め合わせが売っていますね。高いけど。
 ワタシ的には、七草の風味のメインはセリだと思うので、以前は、セリだけ買って来て、後は近所で手に入る野草三種(ハコベ・ペンペングサ・ハハコグサ)を加えていた頃もありますが、最近ではそれも面倒になって、スーパーでちゃんとした七草セットを買っています。セリ一把も結構高いので、それくらいなら、七草パックを買ってもあまり変わらないし。
 ちゃんとした七草セットといっても、今年、うちが買ったのは、ハコベが『ウシハコベ』だったのがイマイチでしたが……(^_^;)

 でも、ウシハコベくらいなら、まだ許容範囲内です。
 数年前のこと、近所のスーパーで見かけた七草セットは、びっくりでしたよ。
 ほかのセットより100円ほど安かったので、「おっ?」と思って手に取ってみたら、中身が……みんな、普通の野菜! 野草なんてぜんぜん入ってないの!
 カブの代わりにラディッシュが入ってるのはまだいいとしても、そのほかに入っていたのは、七草とは全然関係ない普通の葉物野菜ばかり。
 何が入っていたか、もうよく覚えていませんが、たしか、チンゲンサイが入ってたような……。
 そして、一番どうかと思ったのは、カイワレと春菊!
 春菊は、正式な種類がどうこうとか縁起がどうこう言う以前に、味的にまずいでしょう、アクが強すぎて……(^_^;)
 あとの二種類は何だったかなあ。ホウレンソウ? コマツナ? セリは入ってたっけ……?

 どうやら、その七草セットは、他のものと違って、セット状態で仕入れてきたものではなく、そのスーパーで独自に詰め合わせたオリジナル商品だったようですが、さすがに売れなかったらしく、8日になってもそれ一種類だけ売れ残って半額処分になっており、それでも売れ残ったらしく、翌年からはもう売られなくなりました(^_^;)




 今月の勘違い

夫と私のとんちんかん会話集です。
☆夫「あれ、なんだ?」
 私「えっ、汗ばんだ? こんなに寒いのに?」

☆私「ありがとう
  夫「えっ、ヘンな顔?」
 「ありがとう」と「ヘンな顔」は一つも共通する音がなくて、字数以外、全く似てないと思うのですが……。

☆私「おかしいなあ……」
 夫「えっ、プラシーボ? プラシーボって何だっけ? ロシアの挨拶だっけ?」
 ちなみに『プラシーボ』というのは偽薬のことで、ロシアの挨拶は『スパシーボ』です(^_^;)

☆夫「のどが痛いの?」
 私「うん、風邪だもん
 夫「えっ、カメラマン?」

☆私(新聞の家庭欄を読みながら)「へぇ〜、低温火傷は水で冷やしても意味がないんだって」
 夫「えっ、テレホン・ヤクザは耳がない?」
 『テレホン・ヤクザ』って、いったいどんなヤクザでしょう……。

☆夫が、鯉が滝を昇る絵を書きました。そのことを知人にメールして、『鯉が滝に昇る絵を……』と打とうとしたら、『恋敵に登る』と変換されたそうです。ちょっと古いですが、漫画『ぼのぼの』の、『お父さん登り』を連想してしまいました……。





 近況報告「ハデハデなお茶?」

 夫が、近所の店の初売り記念プレゼントで、『純金茶』なるものを貰ってきました。
 そのお茶の袋には、こんな↓文字が……。



 一瞬、『らめ入り』かと思ってびっくりしてしまいましたが、中身は、金箔入りの梅昆布茶でした。
 ラメ入りのお茶って、いったいどんなハデハデなお茶なんでしょう(^_^;) 確かに、新春に相応しく、非常にめでたそうな気はしますが……。




 読書録

『少年アリス』 長野まゆみ 河出書房

 先月から今月にかけて、私は、長野まゆみ入門月間開催中です!
 長野まゆみは、いかにも自分が好みそうな作家なのに、なぜか、デビュー作で『これは!』とチェックして以来、今まで十年以上『そのうち読んでみよう』のままで来てしまった作家さんなのです。
 で、ちょうど、ネットの知り合いが長野作品の話をしていたので、思い立って、『これから初めて読もうと思うんだけど、なにがオススメですか?』と聞いてみて薦めてもらった三冊『少年アリス』『銀木犀』『上海少年』を読んでみました。

 『上海少年』は、ファンタジーではないので、私には守備範囲外なので今ひとつ理解できず、レトロな雰囲気は楽しめたものの、ストーリー的には『いったい何の話だったのか良く分からなかった』というのが正直な感想ですが、『銀木犀』と『少年アリス』は良かったです。この3冊の中では『少年アリス』が一番好きでした。

 『銀木犀』は、なんといっても、瑞々しい情景描写が魅力でした。
 こういう瑞々しい描写を読むと、自分が、そういえば最近、季節の移ろいとか、時間によって色を変える光や風とか、身近な草花とか、雨とか星とか泥濘とか、巣から落ちた鳥のヒナとか林檎の果肉とか、そういうものをじっくり見つめて五感で色々感じ取ることがめっきり少なくなってしまったことを、ふと思い知らされたりします。
 そういえば夜明けの空はそんな色だよなあとか、それが時間が移るとそういう風に変化していくんだっけなあとか、夏の湿気ってそんなふうかも、とか、そういう忘れかけていた皮膚感覚のようなものを思い出し、今の自分がそういうものを忘れかけて心を干からびさせかけていることに気づかされ、もう一度、子供の頃の感性を取り戻してそういうものに目を向けてみたいという新鮮な気持ちにさせられる作品でした。

 そして、『少年アリス』は、レトロでノスタルジックで、日本的なのにどこかエキゾチックな舞台設定と、まるでお人形のような少年たちがポイント。
 全編に、甘美なノスタルジーやキラキラしい幻想と同時に、なんとなく不安な、不安定な翳が潜んでいるのも魅力です。
 途中、主人公のアリス少年が親友蜜蜂の前から姿を消してしまったり、今までの自分の人生は一夜の夢だったのではないかと思わされたり、鳥になってしまうシーンがあって、ずっと、漠然とした喪失の予感と失われゆくものへの愛惜が物語の底を貫いている――その危うさが、少年たちの一瞬一瞬をより輝かせていると思いました。

 そして、これは、とても映像的な作品でした。
 私は徹底的に左脳人間で、文章を読んで頭に絵が浮かぶということがあまり無いのですが(逆に、絵を見て文章や物語が浮かび、歌詞の無い音楽を聴くといつのまにか頭の中で勝手に歌詞がついたりするほう)、これは、読んでいる間に、頭の中でどんどん映像が展開しました。
 特に印象的だった映像は、ほの暗い沼地の飛び石を跳び移る子供が振り上げる腕の白さ、波打ち際の引き波に浮かぶボール、透き通った水に差し入れられた子供の手、広げた翼から石の表皮を振るい落として飛び立つ塑像の白鳥など……。
 少年二人も、レトロな童画風のイラスト(誰か実在のイラストレーターの絵柄というわけでなく、私のオリジナル絵柄(^_^;)らしい)というわけになって頭の中で動くので、私に絵が描ければ頭の中の彼らの肖像をイラスト化できるのにと、残念なほどです。

 というわけで、長いこと気になり続けていた長野まゆみ、読んでみて良かったです。
 これも、ネットでの本好き同士の交流のおかげですね。良いきっかけを得ました。いろんな本好きの方とお話すると読書の幅が広がります(^^)


『bU 1〜3』 あさのあつこ 講談社

 実はこの人も初めて読む作家さん。
 前々から複数のネット仲間がハマっているのを横目に見て、『そうか、面白いんだ〜。そのうち読んでみよう♪』とは思っていたのが、今まではジャンルが私の守備範囲から外れていたので後回しになっていました。
 それが、私好みのヤングアダルト向け近未来SFを書いたので読んでみたら、期待通り、すごく面白かったです。

 ドームに覆われて厳重に管理された清潔な未来都市と、ドームの外で生きる人々。ドームに対する、それぞれの想い……。この手の設定、大好きです。
 ハラハラドキドキさせるし、泣かせるし、そして考えさせられるストーリーで、続きが楽しみ。

 ただ、内容は面白いんだけど、あの、写真挿絵はちょっと……。少なくとも人物写真は止めて欲しかったです(^_^;)

 あと、私が読んでもとっても面白かったけど、これは、美少年や、少年同士の強い絆に特別な萌えを感じられる人が読むと、きっと、私とはまた別の楽しみもあって、もっともっと面白いのではないかと。
 最近、あまりにもそういう風に思うことが多い(そういう作品が増えたのか、それとも自分のほうがそういう要素を嗅ぎつける嗅覚を身につけたためか……(^_^;))ので、自分にその方面の趣味がないことが、ちょっと残念なくらいです。その趣味があれば、いろんな作品をもっともっと、二重三重に楽しめるだろうに、なんだか損してるような気がします……。


『風の王国』 毛利志生子 コバルト文庫

 これもネット仲間のお勧めで興味を持った作品です。やっぱりネット仲間との交流は栄養になるなあ……。

 異世界じゃない歴史モノのオトメ小説。漢の商家の娘が皇帝の養女になって皇女としてチベットの王に嫁ぐという政略結婚もの。
 なんといっても舞台がチベットというのが稀少な魅力で、面白かったです。歴史上の実在の人物も出てきたりして、興味深いです。

 政略結婚とか俄か王女というのは、オトメの定番ですね。翠蘭とリジムのサバイバル紀行も、なかなかに萌える王道シチュエーションでした。オトメのドリーム、『髪の毛にキス』も来た〜\(*^o^*)/
 でも、一ヵ所だけ、オトメ的には、ちょっと疑問が……(以下、ネタバレ&R15気味問題発言(^_^;)につき反転)

 いくら相手が元既婚者だからって、初めてのキスで舌を入れたり胸触ったりって、オトメ的には、有り? みんなは、そういうの、OKなの?
 これは、ぜひ、現役の、リアル乙女の皆さんのご意見を伺ってみたいところです。
 ちなみに私の中の『永遠の十七歳』嬢は、激しくNGを主張してるんですが。
 特に、舌はまだしも、胸は……「こらっ、このスケベ! その手は何っ! 気持ちは分からんでもないが、ヒーローならその場はぐっと堪えてカッコつけて見せろよ! それがオトメ向けヒーローの美学ってもんでしょ!?」と言いたい気持ちでいっぱいなんですが。

 そういうシーンがあること自体は、別にいいんですよ。でも、ヒロインと本命ヒーローの初めてのキスでは、それは止めて欲しい!
 オトメ向けヒーロー諸君、やっぱりそこはカッコつけてぐっと痩せガマンしようよ。そういうことは、やるなとは言わないけど後で読者が見てないところでやろうよ、ね?

 ……というわけで、現役乙女時代は既に遥かな時の彼方となった私でも、今まで、少女小説を読んでいる限りは『オトメの世界は今も昔も変わらんのう……(*^^*)』と思えていたんですが、やっぱり時代は変わってるんですかね? 私の乙女心は時代遅れ?(^_^;)
 しかし、堂々とこんな話をしてること自体、既にオトメ失格宣言も同然のような気も……(^^ゞ


『グインサーガ98巻 蜃気楼の旅人』(栗本薫 ハヤカワ文庫)

 反転はさせませんが、ややネタバレにつき、未読の方でネタバレを特に気にする方はご注意ください。
 まあ、最新刊といっても発行されてから何ヶ月もたってるものだし、これだけ長寿シリーズのグインサーガで既刊分のネタバレを気にしていたら何も語れなくなってしまいますよね(^_^;)

 グインはやっぱりあの人とくっつくのかなあ。最終巻の予定タイトル『豹頭王の花嫁』って、やっぱり彼女のこと?
 それは、ごく初めのほうの巻から(もしかして……)という節はあったんだけど、あんまり信じたくなかったんですけど。私、彼女にはグインとくっついて欲しくないんですよね……。
 彼女自体、私はあまり好きなキャラじゃなくて(子供時代の彼女はまあまあ好きだったけど、大人になったら、いい子ちゃんになって、つまらなくなった。『赤毛のアン』シリーズの二冊目以降のアンが好きじゃないのと同じ)、シルヴィアのほうが好きなんですけど、グインと彼女に結ばれて欲しくないのはそのせいじゃなく、グインと彼女の間の絆は、ずっと、結婚とか恋愛とかそういうのとは関係ない次元の、でも特別な強い絆であって欲しいからです。だって、そのほうがロマンだから。
 この先、二人が結ばれたりしたら、これまでのふたりの間にあった特別な絆が、愛とか恋とかのありふれた言葉で表せる普通のものになってしまうのがちょっとがっかりな気がするのですが……そんな風に思うのは私だけ?

 それにしても、シルヴィア。不憫だ……(T-T) グインてば、あんまりだ……。ザザのいうとおり、記憶喪失になったって惚れた女のことだけは忘れないのが男ってもんでしょ!

 ザザといえば、今回、ザザは可愛かったです。得意げに素っ裸で水浴びして、ぶるぶるっと羽(無いけど)を震わせて水を跳ね飛ばすところとか、カラスっぽくて。前足を投げ出してくつろぐウーラも可愛かったv

 他に、『もののけ1』(山内昶 法政大学出版会)『空の鐘の響く星で』(渡瀬草一郎 電撃文庫)を二巻まで読みました。面白かったです。

 その他、メモ。『ICO 霧の城』、『こちら魔法少年育成センター3』、図書館の本を優先するため、あいかわらず中断中。『バッカーノ』『暗き神の鎖(後編)』読みかけ。


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