月刊カノープス通信
2004年12月号

 目次 

・季節の便り『ツリーの無いクリスマス』
・近況報告『仔猫の里親探し』
・今月の勘違い
・読書録
(『キーリ』『ブルーローズの謎』『彩雲国物語他)



 季節の便り『ツリーの無いクリスマス』

 子供たちには悪いけど、今年は、我が家では、クリスマスツリーを飾れません。
 なぜかというと、日記を読んでくださっている方は知っていると思いますが、今、うちには猫が二匹いるから。

 猫がいるのは前からですが、今いる猫の片方は、この間拾ったばかりで、まだ、テーブルに載ってはいけないなどのしつけが出来てないし、仔猫なので、とにかくイタズラが激しくて、クリスマスツリーなんか飾ったら、絶対、飾り物をみんな引っ張って、ツリーを倒したり、飾りを壊したりするに決まってます。ワタで出来た雪やモール飾りなんか、飲み込んだら大変! このあいだは、本の栞紐を食べられてしまって参りました……。

 で、ツリーは諦めて、ドアの高いところに、リースだけ飾ってみたのですが……。
 下から150センチくらいの高いところに下げたのに、やっぱり猫にやられてしまいました!
 あそこなら届かないと思ったんだけどなあ……。

 というわけで、今年は、クリスマスの飾り付けは諦めます(^_^;)



 近況報告『仔猫の里親探し』


 ところで、その、拾った猫。
 実は今も膝の上でゴロゴロ言ってるんですが……。

 拾った時点で生後3ヶ月ほどと、前の6匹より育ちすぎていた上に、器量もいまいち悪いので(マニア好みのファニー・フェイス……)、いまだに貰い手が付きません!
 ネットで里親探ししているんですが、あちこちの里親募集掲示板に書き込みをしても、ぜんぜん問い合わせが来ないんですよ……(T-T)
 前のはまだ小さかったし、一部を除いて(笑)器量よしで可愛かったから、書き込みしたとたん、何通も問い合わせメールが着たのに、今度はさっぱり。
 困ってます(^_^;)

 あ、もし、万が一、この仔猫に興味がお有りの方がいたら、メールか掲示板にお問い合わせくださいねv デジカメ写真あります! 生後約四ヶ月の黒白ソックス猫、メス、ちょっとヘンな模様だけど、人懐っこくて甘えん坊で可愛いですよ。



 今月の勘違い

☆12月8日のことです。夫がラジオを聴いていると、
「今日はチョン・デノンの命日です」と言っていたので、(『チョン・デノンって、誰? 誰か有名な韓国人か中国人……?)と思ったらジョン・レノンの聴き間違いだったのでした。
 韓国人または中国人の『チョン・デノン』氏……。確かに、なんとなく居そうな雰囲気ですね(^_^;) 漢字で書くとどういう字なのでしょうか。

☆夫は、この季節になると必ず街に流れるユーミンの名曲『恋人がサンタクロース』の一節、「♪恋人がサンタクロース、背の高いサンタクロース」を、ずっと、「手の早いサンタクロース」だと信じていたそうです。そんなサンタクロース、嫌ですね(^_^;)

☆ある雨上がりの会話です。
 私「雨、止んだね。雲の切れ間が見えたよ」
 夫「えっ、ホモの車が見えた?」

☆テレビの大河ドラマを見ながらの夫と私の会話です。
 夫「土方歳三は五稜郭で死んだんだよ」
 私「えっ、ゴーヤ食って死んだ?」
 それって、食中毒ということでしょうか……(^_^;)

☆やはりテレビを見ながらの夫と息子の会話。
 夫「このあいだ、『ライオンのごきげんよう』って番組でさあ……」
 息子「えっ、『ライオンのワキ毛よ〜』?」



 読書録

『キーリ』 壁井ユカ子 電撃文庫

 なんとなく今まで手を出さないでいて、読んでみたらとても好みだった作品。もっと早く読まなくて損した!
 謎の不老不死男と霊感少女が鉄道でいろんな街を旅するという、ちょっと男女が逆の『銀河鉄道999』みたいなSFファンタジーです。
 同じ電撃文庫の『キノの旅』には全くハマれなかった私ですが(別に『キノの旅』が悪いというわけではなく、若々しすぎて(^_^;)私の感性にはぴったり来なかっただけ)、これは感性にぴったりきました!
 あと、イラストも綺麗で品があり、女の子が可愛いのもポイント高し(^^)

 そして、何がいいって、世界の雰囲気がいいです。
 蒸気機関で車が動き町の中心には教会が聳え立つノスタルジックな遠未来の荒廃した殖民惑星。物悲しい灰色の空。寂れた鉄道駅。レトロな黒制服の寄宿制女学校。ホログラフ(?)に彩られた都会の夢。打ち棄てられた荒野の戦争遺跡……。ツボです!

 旅の途中で出会う個々のエピソードは、実に古風でオーソドックスな幽霊譚です。
 ルームメイトのエピソードとか、車掌さんやピエロのエピソードとか、どれも、ありふれているといえばありふれているのですが、それを陳腐とは感じさせないのは、SF的な舞台設定と独特の雰囲気のおかげでしょう。
 そして、小エピソードを連ねる一方で、それと絡めつつ大エピソードを着実に先に進めて行く手際も見事。

 次々いろんな街を旅して一話完結型のエピソードを語っていけばいくらでも続くはずのタイプの物語ですが、新人賞への応募作品ということで、とりあえず一冊で大エピソードが完結しています(まあ、今、あの手の文庫では、たとえ新人賞応募作でなくても最初からあきらかに続き物として出すのは難しいかと思いますが……)。
 でも、本当は、途中のエピソードをどんどん書いて何冊も続けて欲しかった物語。
 続きが出ているのは知っていますが、あの、一巻目のラストにたどり着くまでに、もっともっと時間が、そしてエピソードの積み重ねが欲しかったです。

 でも、きっと続きも素敵なことでしょう。これから読むのが楽しみです。


『ブルーローズの謎』 松本祐子 小峰書店

 『リューンノールの庭』の続編。
 面白かったです。謎とサスペンス要素が加わった分、前作より面白かったかも。ページをめくる手をなかなか途中で止められませんでした。
 主人公は中学生だけど、今回のテーマはけっこう大人向けと思います。
 そして、前回は『雪の女王』だったけど、今回は、『茨姫』と『不思議の国のアリス』でした。ロマンチックですね(^^)
イラストも、今回も素敵。DDは今回も可愛い。

 今回、楽しかったのは、未散ちゃんがお料理をするところ。
 電動ハンドミキサー無しでメレンゲを泡立てる大変さは多くの女の子が「うんうん」とうなずけるところだろうし、一人で叔母さんの家の留守を預かることになっての自炊シーンは、なんか作ってるものがしゃれてておいしそうだし。
 『ちょっとオシャレ』というのも、『ちょっと背伸び』と同様、この年頃の女の子にとっては大事ですよね。
 ハーブの鉢植えが並んだキッチンで一人でお料理(しかも、お味噌汁とかラーメンとかじゃなくて、なにやら小洒落た洋食)とか、ボーイフレンドとパソコンでメールのやり取りとかいう要素が、背伸びしたいお年頃のローティーンの女の子たちにはとても嬉しいんじゃないかなと思います。

 あと、今回はDDが前回以上に重要な役どころで活躍して楽しかったです。

 未散ちゃんと啓太君の恋愛も、期待通り、ほんのり進行中です(^^)
 恋愛といえば、啓太君のパパと沙那子叔母さんのほうには進展が無かったけど(そもそも啓太君のパパが出てこなかった)、次回以降に持ち越しかな? それとも、あれはあれで終わり? 沙那子叔母さん、別の若い男に憧れられてた(?)し……。

 それにしても、啓太君、あいかわらずおませさんですね〜。イケメンお兄さん出現にヤキモチやいてるし。赤ずきんちゃんの話なんか持ち出して未散ちゃんにお説教……(笑)
 で、展覧会で陰鬱な絵を見て、「何か、こう、胸に迫るものがある」とか言っちゃうんですよ。『胸に迫る』ですよ、中一男子が……(笑) もしかして、啓太君って、私の好みのタイプ(=『若年寄り』)? ポッ(*^^*)

 ところで、このシリーズで独特なのは、身内の大人、中でもおばあちゃんの扱いだと思います。
 児童文学では、おばあちゃんというのは、たいてい理想の存在として描かれますよね。
 ところが、このシリーズでは、未散ちゃんはどうやら実のおばあちゃんとあまり相性が良くなくて、おばあちゃんは未散ちゃんより弟の方を余計に可愛がっているらしいとか、おばあちゃんにはけっこう性格的な欠点もあるとか、おばあちゃんとお母さん、おばあちゃんとお父さんの間の関係も決して理想的なものではないらしいとか、そういう微妙な事柄が、目をそむけることなく、ちゃんと(でも、そんなに深刻にならずにさらっと)描かれているのです。

 私にも身に覚えがありますが、わりと血縁環境に恵まれた子供であっても、中学一年にもなれば、『大人というのはみんな中身も完全な大人であり、血縁同士はみんな互いに仲が良くて、すべての身内の大人はすべての身内の子供を同じように可愛がってくれるものであるはず』という建前が幼年時代の幻想で、身内の大人にもそれぞれ何がしかの欠点があったり、身内の誰かと自分との相性が悪かったり、身内の誰かと誰かの間が必ずしもうまくいっていなかったりすることに、うすうす気づいているものでしょう(環境によってはハナからそんな幻想を持たせてもらえなかった子供もいるでしょうが)。

 でも、身内というのは仲良くなければいけないものだとか、おばあちゃんという存在はすべての孫に等しく無条件の無償の愛を注いでくれるはずのものだという建前があまりに堅固である場合、実はおばあちゃん(とか親戚の他の誰かとか)があんまり好きになれなくて、自分でもそのことを自覚している子は、そんなのはヘンだ、いけないことだと思い、そんなふうに身内の誰かをあまり好きになれないと感じてしまう自分を微妙に後ろめたく思っていたりしているんじゃないかと思うんです。

 そんな時、『理想のおばあちゃん』じゃないおばあちゃんと、そのおばあちゃんに時々いらだってしまう未散ちゃんがさらっと描かれていると、そういうことってあるんだ、自分だけじゃないんだと安心できそうな気がします。
 また、おばあちゃんの性格や、自分とおばあちゃんとの相性は変わらないけど、それでもお互いうまく付き合っていこうという気持ちがあれば騙し騙しでもそれなりの関係を保てる――そういう現実的な処世術みたいなものを安易な妥協として否定したりしない懐の深さが、未散ちゃんと同じく身内にいらだってしまうことがある子供たちには救いになると思うんです。

 まだ閉ざされた小さな世界に住んでいる子供にとっては、おばあちゃんが自分より弟のほうばかり可愛がるというのはすごい大問題だけど、世界が広がれば、そんな問題は、相対的に小さい問題になるんですよね。
 で、他のところで色々な経験をして成長し、世界を広げた後の未散ちゃんは、おばあちゃんの人間的な欠点に気づきながらも、おばあちゃんの良いところも認め、そんなおばあちゃんと自分の関係を、それなりに受け入れていこうとする段階まで成長するのです。
 おばあちゃんのことだけじゃなく、お父さん、お母さん、叔母さん、それぞれの一人の人間としての性格や心理や関係を、未散ちゃんは、様々な体験の中で徐々に理解して成長していきます。
 そういう成長を、ストレートに話の中心にはしないで、ファンタジックな冒険の傍らでさらっと描いているところが、とても好きです。


『彩雲国物語 はじまりの風は紅く』 雪乃彩衣 ビーンズ文庫

 中華風異世界を舞台にした異世界ファンタジー。でも、幻想色・超自然的要素は薄く(皆無ではない)架空歴史モノに近いです。
 で、たいへん楽しかったです。これぞコバルトという感じ(コバルトじゃないけど(^_^;))の、正統的なライト少女小説。堅苦しくない程度に程よくライトに砕けてるけど品がなくなるほどじゃない、ほど良い匙加減で、笑いも美形も、オトメなトキメキも満載!

 私、ファンタジー好きだけど、よくある宮廷での美形満載ドロドロ愛憎劇とか陰気な陰謀劇とかには、ものにもよるけど大雑把な傾向で言うとあまり興味が無く、どっちかというと、そういうちまちまとまどろっこしい、インドアな、人間臭いものより、広大な大自然の中を旅してモンスターと戦っちゃったりするようなアウトドアでワイルドな話や、世界が滅びたり滅びなかったりするような壮大な話や、あるいはもっと幻想色の強い神秘的なもののほうが好きなんですが、王宮すったもんだモノも、こういう楽しいのならOKです。

 それと、若い美形男性も各種取り揃えて出てくるけど、どっちかっていうと、おちゃめなじいさんや可愛いおじさんのほうが印象的で、そこがまた楽しいです。『梅茶梅饅頭』、最高(^O^)
 ただ、じいさん・おじさん連中が実に印象的なのに比して、若い美形男性キャラが、王様以外はいまいち印象が薄いのがちょっと残念で、私の場合、中華モノの名前を覚えるのが苦手だということもあって、どちらも美形で俊才であるらしい文官と武官、二人の青年の名前を結局最後まで覚えられず、人間像もいまいちつかめないままだったのが惜しかったですが、これはまあ、私がもともと若い美形男性よりジジイ&オヤジのほうに興味があるせいもあるのでしょう。

 この後、微ネタバレにつき、反転します↓

 あと、最初は、(偉い大臣たちが揃いも揃って王様が暗愚だから勉強させようとがんばってるなんて、ずいぶん浮世離れして人の良過ぎる話だなあ、この人たちにとっては王様は暗愚なほうが傀儡にしやすくて都合がいいんじゃないの? 普通はこういう人たちは王様の暗愚に乗じて自分の権力を伸ばそうと画策するものじゃないの?)と思わないでもなかったんですが、これについては、後半で、だいたい納得。
 でも、あの楽しいじいさんたち、特にあの一番偉い人(名前覚えられなかった……)には、最後まで、『楽しいじいさん』のままでいて欲しかった気も……。

 以上、反転終わり。
 というわけで、楽しかったです。続きが出てるから今度読もうっと。


その他いろいろ

 他に、『ソード・ソウル 遥かな白い城の姫』(青木祐子 コバルト文庫)『女子高サバイバル1』(須賀しのぶ コバルト文庫)『星空から来た犬』(ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 早川)を読みました。面白かったです。

 そして、オンライン小説出身の新人・橘早月さんの『オーバー・ザ・ホライズン 僕は猫と空を行く』(電撃文庫)
「我らの星!」……という期待が大きすぎたせいか、ストーリー展開には実はちょっと疑問に思うところがあるのですが、とりあえず、イワノフ最高! 渋いおじ様も出てきたしv ラスト近くの演習場でのアクション・シーンはアニメで見たかった……。
 そして、陰ながら今後の活躍をお祈りします!(本買ってなくて申し訳ないけど、気持ちだけは思いっきり応援してます……)
 プロデビューしたオンサイン作家さん、サイトから小説を下げるのはしかたないけど、日記はネット上に残して次回作の執筆状況なんかをお知らせしてくれると、より応援のし甲斐があって、楽しめただろうなあ……。ちょっと残念。

 あと、小説じゃないけど、いろんな珍しい職業の人を紹介した写真集『世にも奇妙な職業案内』も面白かったです。
 それほど「えっ」と驚くような職業はそんなに無くて、大半は、もう存在は知っていた職業や、「普段はあまり考えたことはないけど、考えてみればそういう職業の人もいるのはあたりまえだよな」というものでしたが、そういう職業の具体的な内容や、働いている現場の写真というのは、たしかに、なかなか貴重。例えば、蝋人形というものがあるならそれを作る仕事をしている人がいるのは考えてみれば当たり前だし、ポテトチップだろうとコン○ームだろうと、工場で作るものには何でも検査係がいるのも考えてみれば当たり前だけど、あらためて、毎日そういうものをひたすら検査している仕事というものを考えると、けっこう不思議なものだし、その仕事風景というのは大変面白かったです。


 その他、メモ。『ICO 霧の城』、『こちら魔法少年育成センター3』、図書館の本を優先するため、あいかわらず中断中。あさのあつこ『NO.6』、二巻まで読了。三巻読み途中。面白い! そして、来月は長野まゆみ入門月間(笑)予定。『上海少年』『少年アリス』『銀木犀』を借りました。


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