月刊カノープス通信

  2004年5月号-1

──今月の詩──
『野ばらの白と罌粟(けし)の朱(あか)

五月の野には
野ばらの白と 罌粟の朱(あか)
草に埋もれた奥城(おくつき)
五月のひかり 降りそそぐ
かっこうの歌 降りそそぐ
昔 いくさがあって
名もなき兵士の血が流れ
兵士の赤き血が流れ
そして 今
草に埋もれた奥城に
五月のひかり 降りそそぎ
かっこうの歌 降りそそぎ
緑の野には罌粟の朱
名もなき兵士の血のように
五月の野には
野ばらの白と 罌粟の朱
真昼の日差しに 風は凪ぎ
蜂の羽音も ふと途切れ
草に埋もれた奥城に
黒い揚羽が 舞い降りる

五月の野には
野ばらの白と 罌粟の朱


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