月刊カノープス通信
2004年4月号

 目次 

・季節の便り
・今月の勘違い
・近況報告『わくわく洞くつ?』
・読書録
(『ゲルマーニア伝奇』シリーズ、『ヨーロッパ古層の異人たち』他)




 季節の便り

 この『月刊カノープス通信』も、もうすぐ3年目。4月号はこれで3回目です。
 毎年この時期に桜の壁紙を貼っていると、その年の桜の開花時期が記憶に残ります。4月号をアップする4月1日に、その年によって桜がまだ咲いていたり、もう散っていたり。

 おととしは、4月号の『今月の詩』に桜の壁紙を用意していたら、桜の開花が早くて、東京近辺では、4月にはもう桜は散っちゃってたんですよね。で、『でも東北地方ではまだ咲いてるからいいや』といいながら、桜の壁紙を貼ったんです。
 そして、去年は、はやり4月に桜の壁紙を貼ったら、今度はちょうどいいタイミングで、4月1日前後に東京近辺の桜が見ごろだったらしいです。
 たしか、何年か前には、4月1日にはまだ桜の影も形も無かった年もありましたよね。
 
 今年は、桜の開花が早そうだったので、3月号に桜の壁紙を貼ってしまいましたが、それで正解だったみたいですね。
 今年の東京の桜の開花は18日。うちの近所では、これを書いている今日、3月25日現在、桜が咲き始めたところです。
 なんとか入学式まで桜がもつといいですね!

 というわけで、今年は桜は3月に貼っちゃったので、4月はスミレの壁紙を。日ごろからさんざんお世話になっている大好きな素材屋さん、自然いっぱいの素材集さんのフリー素材です。

 今日、犬の散歩の途中、近所の野原で、名残りのふきのとうを摘んできました。もうかなりトウが立ちゃってて、ふきのとうのてんぷらは、今年はもう、これで終わりかな。
 庭に勝手に生えてきたタラの木の芽が膨らんできたので、それも掻き取って、てんぷらにする予定。

 ふきのとうのそばには、スミレも咲き始めていました。
 今日見かけたスミレは、葉っぱが細くて花が濃い紫の、いわゆる普通の『スミレ』と、やはり細長い葉っぱで藤色のノジスミレでしたが、もう少しすると、葉っぱがハート型で花が空色っぽい薄紫のタチツボスミレが咲き始め、そうすると、あの空き地は、スミレの群生に埋もれて一面淡く空色に染まって見えるほどになるはずです。

 普通のスミレはひっそりとした花ですが、タチツボスミレは、日当たりの良い場所にびっしり群生する性質がある上に、株が大きく繁茂して花付きも良く、花型も普通のスミレのような下を向いた筒型ではなく花びらが蝶々のようにぱっと開いた形で、しかも花が上を向いていて、色合いも明るいので、咲き揃うと、とても華やかで、遠くからも目立つのです。
 ちなみに、この壁紙の写真は、はっきりとはいえませんが、見たところ、おそらくタチツボスミレではないかと……。

 タチツボスミレが盛りを迎える頃には、花つきは少ないけれど大輪で香りのある濃紫のニオイタチツボスミレもちらほらと咲き始めます。花は大輪だけど草姿が小さく、花数も少ないので、タチツボスミレよりぐっと控えめな印象です。




 今月の勘違い

  毎度おなじみ、あいかわらずのとんちんかん会話集です。

★夫:「ここ、やまと糊で貼ったから」
  私:「えっ!? 生玉ねぎ貼った?」

★家事をしながら子供たちがテレビを見ている音声だけを聞いていると、 「二本足馬茶」という言葉が聞こえました。
 (えっ?)と思って慌てて画面を見たら、「にごらせ旨茶」のCMでした。

★私:「このビンの蓋、堅いから、後で開けてくれる?」
  夫:「じゃあ、後で疲れると出来なくなっちゃうから、力のあるうちに
  私:「えっ、千倉(ちくら=千葉の地名)の主(あるじ)?」(一瞬、夫の高校の先輩で千倉在住の某氏のことかと思いました……)

★お風呂に入浴剤を入れようとした小二の息子が、『温泉のもと』の容器を見て、
「えっ、納豆の湯?」と驚きました。
 どういうことかと思ったら、その『温泉のもと』には『伊豆の湯』と書いてありました。二年生にはまだ『伊豆』は読めないんですね(^_^;)

★これも息子の読み間違い。こちらは5年生の上の子ですが、テレビアニメのサブタイトル『慕情』を見て一言。
「……ばくしょう?」
 確かに、『爆』と『慕』は、ちょっと似てますね。名画『慕情』を下敷きにした、とってもしんみりしたお話だったのに、『爆笑』とは……(^_^;)




 近況報告『わくわく洞くつ?』

 先日、東京ビッグサイトであった『わくわくペットフェスタ』というイベントに行って来ました。
 世界の犬猫の展示やペットグッズの販売の他、アジリティ競技のデモンストレーションとかフリスビー犬のパフォーマンスとか、犬のしつけ教室とか猿回しとか、イベントもいろいろあって楽しかったのですが、そんな中で一番印象的だったのは、『わくわく洞くつ』なる、謎の展示コーナー。

 ペット用の蚊取り線香などを販売している殺虫剤のメーカーのブースの一角に、いかにも子供心をそそる雰囲気のちょっとしたトンネルが設置されていて、入口には『わくわく洞くつ』と書かれているだけで中に何があるかは書かれておらず、会場に入った瞬間から、あれはなんだろうと思って激しく興味を引かれていたのです。
 で、もちろん、子供たちと一緒に、まっさきに行ってみましたとも! 何を隠そう、私、洞窟が好きで好きで……(^^ゞ

 そしたら、全長3メートルほどの薄暗いトンネルの壁面に展示されていたのは、まず、生きた『アカイエカ』が群舞している透明ケース!! ケースの中にはステキなイミテーション観葉植物が飾ってあって、その周りを、数え切れないほどの蚊が、わんわん飛び回ってる! うわぁ、怖い! 万が一、ケースが壊れて、これが逃げだしたりしたら、恐ろしいことに……。

 隣のケースは、『マダニ』の生体展示! ご丁寧に、通常の状態のものと、血をすって膨らんだヤツが、見比べられるように並べられています! うわ、キモ!!
 そういえば、時々、散歩から帰った犬の頭に、ああいう丸く膨らんだのがついてるよなぁ……。

 そして極めつけは、最後の展示ケース。
 底に白砂を敷き詰めたステキな水槽に、きれいな石や、透き通ったガラス(アクリル?)細工の貝殻が配置されていて、水を入れて熱帯魚でも泳がせればきっとオシャレ。
 なのに、そこにいたのは……白砂の上をびっしり黒く埋め尽くす、猫ノミの大群!! うじゃうじゃとうごめき、ぴょんぴょん跳ねまわってる! 見ているだけで痒くなりそう!
 以前、一度、うちで、部屋に猫ノミが大発生して家中バルサンを焚く大騒ぎになった、あの悪夢の日々の記憶が蘇えります……。なんて恐ろしい……。

 ああ、怖かった。気持ち悪かった……。
 と、いいつつ、怖いもの見たさで、結局、私は2度、子供たちは3度も、そのトンネルに入ってしまいました……(^^ゞ
(どこが『わくわく』だよ……)とあきれつつ、実はけっこうわくわくしたかも?




 読書録

(注・この読書録は、あくまで私の備忘録・個人的な感想文であって、その本を未読の人にマジメに紹介しようという気は、ほとんどありません(^^ゞ (……たまに、少しだけ、あります)。 ただ、自分の記録のためと、あとは、たまたま同じ本を読んだことのある人と感想を語り合いたくてアップしているものなので、本の内容紹介はほとんど無いことが多く、ものによってはネタバレもバリバリです。あまり問題がありそうな場合は、そのつど警告するか、伏字にしています。)

『ゲルマーア伝奇』シリーズ 榛名しおり
――『暗き樹海のメロヴェ』『レーヌスを渡る金狼』『宿命なる半身のアモル』『嘆きと癒しのカントゥス』
(以上、講談社ホワイトハート)、『花降る千年王国』 (角川ビーンズ文庫)

 二つの会社の二つのレーベルにまたがって出版されている珍しいシリーズもの。最初はどれから先に読んでいいか、悩んでしまいました(^_^;)
 それについては、結論を言うと、ホワイトハートのシリーズさえ出版順に読めば、『花降る千年王国』は後でも先でも途中でもOKみたいです。独立した番外編というか外伝というか、そういう感じ。

 『アレクサンドロス伝奇』を書いたこの作家らしく、中世ではなく、かなり古い時代のゲルマーニア(現ドイツ)を舞台にした歴史ロマンです。『アレクサンドロス伝奇』がほぼ超自然要素なしの歴史ロマンだったのに比べて、こちらは、多少、超自然的要素があるようで、ややファンタジー寄りな気がします。

 サクサク読めて面白くて止まらないまま、あっというまに5冊続けて読んでしまった感想は……これぞ乙女の夢! これぞ少女小説! これぞオトメちっく!
 この方は、どうしてこうも乙女心のツボをつくのでしょう……。
 しかも、失礼ながらそこそこトシのいってる方なので、現役乙女たちだけでなく、ある程度トシのいった元乙女たちが母や主婦やワーキングウーマンの顔の下に隠し持つちょっと昔の乙女心(^_^;)にぴったりくるものを備えているんですよね。
 いや〜楽しませてもらいました。

 ただ、あいかわらず文章は決して巧くないと思います(ゴメンナサイ)。でも、文章そのものは特に巧くはないけど、物語の語り方は巧い。話し運びや演出など、ストーリーテリングが巧いのです。
 文章そのものの巧さとストーリーテリングの巧みさって、ある程度の相関関係はあるけど、必ずしもイコールではないんですよね。

 それにしても、この人の書く少女たちは、みんな魅力的です。
 みんな、強く凛々しく勇ましく、気高く可憐で清らかで、健気でひたむきで真っ直ぐで、脆さ儚さ傷つきやすさと逞しさを併せ持ち、少女性の中に母性を秘めて神秘的。少女小説のヒロインはかくあるべしという、夢の聖少女たちです。

 はっきりいって、どのヒロインも、似通っています。一応、それぞれに違う個性が付与され、それぞれ違う場所に心の傷を持っていますが、読んだあと、それらはあまり印象に残らず、ただ、儚く貴い聖少女の面影だけが残ります。
 でも、それでいいと思うのです。実は、彼女たちの個々の個性って、そんなに重要じゃない気がします。
 彼女たちは、みな、少女というものの普遍的な理想形であり、それでいいのではないかと思います。


『ヨーロッパ古層の異人たち 祝祭と信仰』  (芳賀日出男 東京書籍)

 民俗学の本です。小説は好みに合わないと面白くないこともあるけど、この手の本で一般向けに読みやすくかかれたものは、まず例外なく面白い! しかも、この本みたいに、テーマが祝祭という華やかなもので、具体的な事例が多く紹介されていて、美しく珍しいお祭りのカラー写真がいっぱいあればなおさら!
 ユニークなお祭りの写真が実に楽しかったです。

 それにしても、スイス、ラトヴィア、ブルガリアなどの農村の冬から春の農耕儀礼って、日本の農耕儀礼と、驚くほど似ています。
「これなんかどう見てもナマハゲだよなあ……」とか、「まるで九州の離島のお祭りの鬼の仮装みたい」とか、妙に懐かしく感じられる行事がいっぱいで、それらが今でも生きているらしいです。

 本の中で、日本にも似た行事があると聞かされたラトヴィアのおじいさんの『どこの国でもやることは同じだ』というような言葉が紹介されていましたが、狩猟民族文化といわれることの多いヨーロッパにも、もちろん農民はいて、農民の農耕儀礼の元になる発想というのは、たしかに、国は違えど案外共通しているものなんだなあと思いました。

他に、『百鬼夜翔 昏い霧に眠る街』(北沢慶他、角川スニーカー文庫)グインサーガ『熱砂の放浪者』(栗本薫、ハヤカワ文庫)などを読みました。




『月刊カノープス通信』バックナンバー目録
→ トップページ

このページの壁紙は【『自然いっぱいの素材集】さんのフリー素材です。(リンクはリンク集から)