カノープス通信 
   2002年2月号-
1

  ──今月の詩──
      『早春』

斑雪(はだれゆき)が消えたら
鳥の図鑑と双眼鏡を持って
淡くけぶる 早春の野に出てゆこう
こんな日は レンズの向こうに
あの空のようにうす蒼く光って広がる
未来が 見えるかもしれない

長く暗い冬のあいだ
灰色の分厚いコ−トの下で
ぼくの心は 誰とも口をきかなかった
(けれど コ−トが代りに口をきいていたので
誰もそれに気づかなかった)

重いコ−トを脱ぎ捨てて
こんなに浅い春の
こんなにあおい風のなか
少し 震えながら
今 ぼくは自由だ

かすかな羽ばたきに
耳を澄まし 待とう
ぼくは きっと見つける
とおくから
やわらかな芽吹きの上を渡ってくる
うすみどり色の恋



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