『女王漂流』

私の中の 不思議な海を旅しよう
ゆるやかに 時は流れ
潮は満ち 潮は引く
なつかしい 薄明の いのちの海を漂おう

この海を育む 私は母であり
この海に抱かれる 私は赤子であり
舵は持たず 波に揺れ
泡のように浮かんでは ひとつづつ 消えてゆく
無数の 夢のたまごたちを見る

未来に宛てた手紙を託され
海流に乗る ガラスの小瓶(こびん)のように
私は 自分がどこへ行くべきか 
永遠に 知らずにいる

  それゆえに こころもとなく
  蒼ざめて 孤独に怯え

けれどなお この海は
すべて私のものである
底知れぬ水の冥(くら)さや 波の危うさ
生まれずに 消えて行く 無数のもの
それらすべてを所有する
私は 海の女王である

この海の すべては私が所有する
私は私を所有する
ひとつの宇宙を支配する
そのことに 未だ 慣れずに
私は とまどう女王である

  けれど今 誇らかに
  創世のちからを宿し


潮は引き 潮は満ち
ゆるやかに 時は流れて
女王は漂流する


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