★長編連載ファンタジー★
イルファーラン物語・あらすじ(3)
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イルファーランの首都、イルベッザは、温暖な気候に恵まれた海辺の都市である。市民たちは楽天的で、よく言えばおおらか、悪く言えばいいかげんであり、町並みは雑然としている。 そんなイルベッザを治めているのは七人の学者からなる合議制の<賢人会議>であり、その代表は<長老>と呼ばれている。一応は国の最高行政府あるはずの<賢人会議>は、弱体化・形骸化しており、その実態は、ほとんどイルベッザの市議会にすぎない。 市政が行われているのは、かつては王城だったイルベッザ城、通称<賢人の搭>で、イルベッザ城の構内には、軍の施設や治療院、学校、博物館、それらの職員のための宿舎や食堂や浴場など、あらゆる公共施設が無秩序にひしめき合っている。 イルベッザ城の前でローイと別れた里菜とアルファードは、キャテルニーカを連れたまま、特殊部隊への入隊手続きのために軍の事務局を訪れた。 アルファードの名前を聞いた事務官は、彼が前回の武道大会のチャンピオンであることに気づき、アルファードを里菜たちともども<賢人の搭>に連れて行く。彼は、軍務担当の<賢人>ファルシーンから、もしアルファードが入隊しに来たら自分のところに連れてくるようにと頼まれていたのだ。 ファルシーンの用件は、単にチャンピオンに会って話がしてみたいというミーハーなものだった。 そして、アルファードに会いたがっていたのは彼女だけではなく、アルファードは<長老>ユーリオンをはじめとする賢人たちに引き合わされるはめになった。 神話学者出身であるユーリオンは、以前、イルゼール村を訪れてアルファードの養い親に会ったことがあり、ずっとアルファードに関心を持っていたという。 ふたりは、そろいもそろってミーハーな賢人たちにさんざんもみくちゃにされた後、ユーリオンと後日の会食を約束し、彼の口利きでキャテルニーカの勤め先を確保してイルベッザ城を後にした。 キャテルニーカは、イルベッザ城構内の治療院で治療師見習いとして働きながら初級学校に通うことになった。 キャテルニーカに付き添っていった治療院で、里菜は、ユーリオンに紹介された治療師リューリと出会い、意気投合する。リューリは里菜と同い年の、妖精族の血を引く褐色の肌の美少女で、姐御肌の勝気な娘だが、父子ほどに歳の離れたユーリオンに四年越しで片想い中だという。 軍の宿舎は男女別で、女子宿舎は治療院の職員たちと供用だった。里菜とキャテルニーカは運良く同室になることができた。 そして、里菜とアルファードは、特殊部隊の兵士として魔物退治に従事するようになった。 魔物退治は、危険できつい、深夜の仕事である。 魔物は、灰色のマントを着た影のような人型をしており、剣で貫くと、マントだけを残して煙のように消えうせる。 そのマントを事務局に持っていくと報奨金がもらえるのだ。 里菜は、ただ、アルファードの後ろで魔物が魔法を使えないよう、魔法を消しているだけだが、夜毎、街を歩き回って闇に潜む魔物を狩り出す気の滅入る仕事に、精神的に疲れ果てる。 ふたりは多くの魔物を退治して市民たちの英雄として人気を得るが、それも慰めにはならない。 が、アルファードは異様なまでに熱心に仕事に励み、そんなアルファードに、里菜は距離感を覚えていく。 そんな辛い生活の中で、リューリやキャテルニーカとの食堂でのおしゃべりが、里菜の心の慰めである。 リューリには大勢の『子分』がいて、そのうちの一人、彼女の従弟のティーオは、若干15歳にして学者として将来を期待される天才少年である。彼は武術大会でのアルファードの勇姿に憧れ、魔法で火を呼び出せないアルファードのためにマッチを開発しているという。 また、ユーリオンとの会食の約束も果たされ、里菜とアルファードは、話を聞きつけて強引に付いてきたリューリも交えて楽しい一時を過ごす。 そうして、二人は、そのままイルベッザで春を迎えた。 アルファードの当初の話では、イルベッザでの仕事は冬の間の出稼ぎであり、その後、どうするかは春になったら考えればいいということだったが、アルファードは、ひたすら仕事に打ち込み、村に戻る話を一切持ち出さない。 また、二人には、村に帰りたくても帰れない理由もあった。 入隊の日に別れたローイが、それきり、行方知れずなのである。 アルファードは、昼間の空き時間にローイを探し続けていたが、ずっと手がかりをつかめないままだったのだ。 そして、里菜は、心塞ぐ暮らしが続くうち、また、ひんぱんに魔王の夢を見るようになっていた。 ある日の夢の中で、里菜は、誘惑に負けて魔王の元に歩み寄ろうとしたが、いつのまにか現れたキャテルニーカの声で我に帰る。 里菜の夢の中に現れたキャテルニーカに、魔王は、『我が小さき娘よ』と呼びかける。 ニーカは魔王の娘なのだろうか? 里菜には信じられない。 魔王は、自分は生物としてのキャテルニーカの父親ではなく、『娘』というのは象徴的な意味なのだと釈明し、キャテルニーカは魔王の言葉を否定も肯定もせず、ただ静かに魔王を哀れみ、手を差し伸べるだけである。 魔王は、ニーカの差し出した手を取ろうとはせず、里菜にいつものように『北へ来い』と言い残して去ってゆく。 そして、春も過ぎ、イルベッザに夏が訪れる。 あいかわらずアルファードの心は遠く、魔物退治は辛く、ローイは見つからず、リューリとのおしゃべりやキャテルニーカの存在だけが里菜の心の支えである。 里菜たちの活躍にも関わらず魔物は減るどころかむしろ数を増し、イルベッザの街はますます混迷を深めている。 今までひっそりと山中で共同生活を営んでいたタナティエル教団の導師たちが街中に黒衣の姿を現し、盛り場で辻説法を始め、まもなく<運命の日>が来て白昼に闇が訪れるという不吉な予言を広め始めたのも市民たちの不安をますます煽っている。 彼らの言葉を裏付けるように、ここしばらく、月が異常に大きく見えるようになり、海辺では高潮が来たり、見たことのない魚が網にかかるなどの異変も起こっているらしい。 また、タナティエル教団のものたちは、街中に出没しているだけでなく、今も里菜の周囲を探っている様子で、キャテルニーカはどうやら彼らと何らかの形で連絡を取り合っているらしい。 彼女に悪い意図があるとは思わないが、はやり気になることではある。 そんなある日、アルファードが、やっとローイ捜索の手がかりを掴んできた。 ローイは、とある酒場で唄うたいとして人気を博しているらしい 場所が盛り場であるため、アルファードは一人でローイを探しに行くつもりだったのだが、里菜は強引にアルファードについていく。 娼婦に絡まれたりしながらやっと目当ての店にたどり着いた二人は、北部からの避難民たちを相手に望郷の歌を歌っていたローイと再会を果たした。 どうやらローイは、その店で、歌を歌うだけでなく女性客に身を売ったりもしていたようだが、本人はそれを大いに楽しんで、全く恥じてはおらず、歌うたいという仕事にも誇りを持っているし、その界隈での生活も気に入っているという。 二人は、酒場の近くにローイが借りている部屋に招かれ、酒を酌み交わすことになるが、ローイは、里菜とアルファードに突っ込んだ話をされてはならじと、わざと無駄話ばかりして時間を稼ぐ。 アルファードは、その無言の拒絶を無視して、ローイに自分たちの元に戻ってきてくれないかと提案する。 が、ローイは、アルファードの提案を一蹴し、盛り場に残ることを宣言する。 ローイの部屋からの帰り道、里菜は、アルファードに、ローイが戻ってこなくても二人で家を借りて一緒に暮らしたいと告げるが、アルファードにすげなくはぐらかされ、さらに食い下がると、ついに、『俺と一緒になっても君は幸せになれない。君はそのうち自分に相応しい相手を見つけて幸せになれば良い』と、決定的な言葉を言われてしまう。 アルファードは『このことは忘れて明日からまた一緒に仕事をしよう』とだけ言い残し、目を潤ませる里菜に背を向けて宿舎に戻ってしまう。 数日後。ローイが、一夜を共に過ごした行きずりの女の部屋から自宅に帰ろうとして盛り場を歩いていると、タナティエル教団の辻説法に行き会った。 思わず足を止めて耳を傾け、そういえば今夜が新月であり、彼らの言う<運命の日>であることに思い至る。 部屋に戻ったローイは、新月の噂を口実に仕事をサボることに決め、投げやりな気分で、そのままうたたねしていた。 しばらくの後、ノックの音で目覚めたローイがドアを開けると、そこには里菜が立っていた。 予期せぬ訪問に驚くローイに、里菜はいきなり抱きついて、アルファードに振られたことを打ち明け、ローイに、『アルファードは諦めてあなたを選ぶから自分と一緒に北部に逃げてくれ』と告げる。アルファードがいるからイルベッザには居られないし、村にはローイの元婚約者であるヴィーレがいるから帰れない、いったん焦土となった北部でなら復興のどさくさにまぎれて二人で暮らしていけるだろうと言うのである。 ローイは驚きつつ、最初は里菜を宥めすかしてアルファードの元に帰らせようと試みるが、もともと里菜に片想いしている身としては、里菜に縋りつかれて腕の中で泣かれれば心が揺れる。 その一方で、ローイは、あからさまに自分を誘惑しようとする里菜の行動に、違和感も抱き始める。 葛藤の果てに、ローイは、里菜に、今すぐここで自分のものになれと迫る。そうすれば、『アルファードよりあなたを選ぶ』という里菜の言葉を信じ、共に北部に逃げようと告げる。 しかし、口付けを待ち受けて目を閉じた里菜の胸に、ローイは、隠し持っていたナイフを突き立てた。 一瞬の驚愕の表情の後、里菜の姿は、ローイの寝台の上から煙のように消えうせた。 ローイの元に訪れた里菜は、ローイが見抜いたとおり、偽者であり、人間ではなかったのだ。 そのまま床にうずくまって拳を震わせていたローイの前に、魔王が現れる。 ローイには魔王の姿は見えず、声が脳裏に響くのみである。 声だけの魔王は、ローイに、今の出来事が自分の企みであることを明かし、偽者の里菜が語った言葉がほぼ事実であり里菜は実際に悩み苦しんでいるのだということ、そして、これから自分が里菜を花嫁として迎えに行くのだということを告げて、去ってゆく。 里菜が魔性のものに見込まれて危機にさらされているのだと悟ったローイは、里菜の身を案じて、彼女の元に駆けつける決心をし、荷造りをはじめた。 そこに、今度は本物の里菜が現れた。 里菜は、夢に現れた魔王に、これからローイを連れに行くと告げられて不安に駆られ、ローイの安否を確めに衝動的に宿舎を飛び出してきたのだ。 ローイは、里菜を伴って、夜の道をイルベッザ城に向かった。 その夜は、いつにもまして魔物が跳梁していたはずだが、二人は一度も魔物に出くわすことなくイルベッザ城構内にたどり着いた。 そこでやや警戒を解いた里菜は、ローイに、いままでの魔王とのいきさつを説明する。 自分が以前から夢に現れる魔王に花嫁にと望まれていたこと。もちろん、その申し出を受ける気もなく、また、ただの夢だと思っていたので無視していたこと。 ところが、ここへ来て、<運命の日>の噂や、ローイが実際に危険にさらされたことから、この街や友人たちを守るために自分が魔王の元に赴くべきなのではないかと悩み始めたこと。 そのとき、ローイが、里菜の持っている守りの短剣のシルドライトの明滅に気づく。 その石は、魔物が近づくと明滅するので、これまで里菜は、魔物退治の際に探知機代わりに利用していたのだ。 危機を察した二人に、次の瞬間、魔物たちが襲い掛かった。 ローイは辛くも魔物を退けるが、その際、里菜を庇おうとして、里菜が抜き身で持っていた短剣の刃で傷を負い、その隙に、魔物の一体から<魔王の刻印>を受ける。 里菜は、倒れているローイを見て、状況が把握できぬままに、彼が死ぬのではないかと思って取り乱し、ローイに駆け寄って縋りつく。 そこに、ふたたび魔王が現れる。 里菜には黒衣の姿が見えるが、ローイには周囲より暗い闇の塊にしか見えないらしい。 魔王は里菜に、ローイが<魔王の刻印>を受けていることを告げ、浅い傷でも刻印を持つものにとっては致命傷になりかねないことをほのめかし、自分の元に来ればローイを元に戻してやろうと持ちかける。 それを聞いた里菜は、魔王の元に歩み寄ろうとするが、ローイに力づくで引き戻される。 魔王は、泣き崩れる里菜と怪我を押して強がるローイを残し、明日また来ると言い置いて去ってゆく。 里菜はアルファードに助けを求めてローイを治療院に運び込んだ。 治療院では、ちょうど、腕の良い治療師であるリューリが当直に当たっていて、ローイはリューリの治療を受けた後、そのまま入院する。 翌朝、眠れぬ夜をすごした里菜は、アルファードと共にローイを見舞った。 その段階で、里菜は既に、ローイとイルベッザの街を守るため、単身魔王の元に赴く覚悟を決めていた。 ローイは、怪我そのものは軽傷であり、一見拍子抜けするほど元気で、女性治療師や雑用係にめいっぱい愛想を振りまいて陽気にお道化ていた。 が、里菜は、その、普段以上に軽薄な態度が、周囲に心配をかけないため、また、自分を鼓舞するための自己演出であることを感じ取る。ローイの心の奥には、深い絶望が巣食っているのだ。 里菜は、ローイを救うために魔王に立ち向かう決意を新たにする。 その悲壮な決意を鋭く感じ取ったローイは、里菜を思いとどまらせようとするが、里菜の決意は変わらなかった。 病室を出た里菜は、治療院の廊下で、アルファードに、唐突に別れを切り出す。 自分には他にやらなければならないことがあるから今の仕事を辞めるという里菜の言葉に、アルファードは当然納得できず、理由を問いただしているさなか、外で騒ぎが起こった。 太陽が闇に侵され、白昼に闇夜が訪れたのだ。 里菜たちがいた治療院の玄関先は、逃げ込もうとする人々で溢れ、たちまちパニックになった。 そんな混乱の中で、里菜は別れの言葉を残してアルファードの手を振り解き、戸外に駆け出そうとした。 が、混乱の中で、里菜は思うように身動きが取れず、すぐにアルファードに追いつかれ、引き戻される。 腕を振り払おうと夢中で暴れる里菜の様子に、事情は分からないながらもただならぬものを感じたアルファードは、自分も一緒に外に出ようと告げ、里菜を腕の中に庇って人込みを掻き分け、玄関を出る。 外は既に闇に閉ざされかけていた。 見る見るうちに訪れた闇は、里菜が想像していたような皆既日蝕どころではない、自然現象としてはありえないような真の闇だった。 その闇の中で、里菜は、アルファードの腕の中から必死で魔王を呼ばわった。 と、二人の周囲から騒擾の気配が遠のき、目の前の闇が人の形を取って、魔王が現れた。 里菜は魔王に、自分は魔王の望みどおり妻になるから、この騒ぎを収めてくれと懇願する。 そうはさせじと魔王に斬りかかるアルファードを制して、里菜は魔王に、交渉を試みた。 自分と共に、どこか森の中でひっそりと共に暮らし、子供を育て、自分と共に歳を取って死んでくれと。 が、里菜の涙ながらの言葉を、魔王は笑って一蹴する。 自分はもともと不死のものであり、里菜に人間の男が求めるようなものを求めているのではないのだと。 魔王が里菜を求めるのは、共に、より美しく完璧な新しい世界を生み出すためだというのだ。 新しい世界の創生――それは、今あるこの世界の滅びを意味する。魔王は、滅びなくして再生はないと言いきり、この世界を滅ぼすことに全く痛痒を感じないらしい。 里菜は、今あるこの世界を失いたくないと思う。 里菜は、更なる交渉を試みる。 今のこの体の、人間の娘としての夢を叶えるために、婚礼の際には、人間の男の姿で自分の前に現れて、しばらくは人間の夫婦のように共に暮らして欲しいと。 それは、婚礼の場で隙を見て魔王と刺し違えるか、初夜の床で寝首をかこうという、捨て身の作戦だった。 魔王は、里菜の懇願を拒否はしなかったが、人間として婚礼を挙げるためには人間のしきたり通りの求婚の手続きが必要であると言い張り、これから婚約祝いの振る舞い酒のかわりに魔物たちに<刻印>を配ってまわらせるのだとうそぶいて、里菜を置き去りに姿を消す。 闇の中、魔物たちによる人間狩りが始まった。魔物たちは人間に積極的に傷を負わせることは無く、ただ刻印をつけることだけが目的のようだったが、暗闇の中で、人間同士の同士討ちも起こり、パニックが広がる。 里菜とアルファードが背中合わせに剣を構えて魔物と戦ていると、ふいに治療院の玄関先に灯りが点り、二人を呼ぶキャテルニーカの声がした。治療院の前でキャテルニーカが頭上に光球を浮かべて立っており、リューリをはじめとする治療師たちが手に手に武器を持って入口を守っていたのだ。 アルファードは里菜を肩に担ぎ上げて治療院まで駆けつけ、さらにそこから、キャテルニーカの頼みに応じて、里菜とキャテルニーカ、そして天才少年のティーオを連れて構内の初級学校に走った。 ティーオには、キャテルニーカのように火の玉を長時間空に浮かばせておくという、他の人には出来ない特別な魔法の力があったのだ。しかも、キャテルニーカの光球は本物の火ではなく目くらましなので魔物を退ける力はないが、ティーオの火の玉は魔物を遠ざけられるという。 そこで、キャテルニーカは、初級学校への魔物の侵入を防ぐため、自分たちが援護してティーオを初級学校に連れて行こうと考えたのである。 キャテルニーカが頭上に光球を浮かべて視界を確保し、里菜は魔法を消す力でアルファードが魔物を剣で退けるのを援護し、四人は初級学校を守った。 やがて、闇は去ったが、災厄はそれで終わらず、地震、津波、ドラゴンの飛来等の災害が後に続いた。 すべてが終わった後、里菜たちはふたたび、負傷者でごった返す治療院に集まって、治療師の手伝いなどをしていた。 治療院には、今回の騒動における被害の情報が次々にもたらされ始める。 魔物は、積極的に人間を殺傷はしなかったものの、多くの人間に<刻印>を与えたし、地震や津波による直接の犠牲者はほとんどいなかったものの、パニックの中で多くの子供や老人が負傷したらしいなど、もたらされる情報は良くないものばかりだった。 殊に、里菜は、リューリを通じて知り合った友人のフェルドリーンが<刻印>を受けたという知らせにショックを受け、魔王に激しい怒りを覚える。 その夜、アルファードとともに治療院から宿舎に戻る途中の里菜の前に、また、魔王が現れた。 里菜は魔王に怒りをぶつけるが、魔王は取り合わず、『自分と戦いに来い』という言葉と嘲笑を残して去っていった。 魔王が去った後、里菜はアルファードに、魔王を始末することは自分の責任だから一人で魔王を斃しに行くという決意を告げる。 里菜の中には、おそらくは生まれる前の古い記憶が蘇えりかけているのだ。 アルファードは、里菜を引き止めようとするが、それが叶わないと分かると、魔王を斃すのは里菜の役目だとしても北の荒野までの護衛は必要であると主張し、自分を護衛として一緒に連れて行ってくれと申し出る。 魔物退治を始めてからずっと憑かれたような暗い輝きを宿していたアルファードの瞳は、暖かな大地の色を取り戻し、ずっと離れていたアルファードと心が通い合うのを感じた里菜は、アルファードの申し出を受け入れた。 ――(第三章あらすじ・終)―― →『イルファーラン物語』目次ページへ →第一章前半あらすじへ →第一章後半あらすじへ →第二章あらすじへ →トップぺージへ |
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掲載サイト:カノープス通信
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