第１7回 『里菜のオフレコ言いたい放題』の巻
（終章読了後推奨）
| 大した内容がないわりに、だらだら長かった終章（笑）。 これでもずいぶん削ったんです。削りに削って、あの長さ。 その長さの原因は、主に、里菜と美紀、女友達同士の長電話にありました。 里菜と美紀が、本当に女の子同士の長電話のノリで、頭の中で勝手にぺちゃくちゃと、しゃべる、しゃべる……。 それでもまだ、初稿の時点では今、サイトにアップしてあるくらいの長さだったと思うのですが、初稿以降、推敲するたびに、二人のおしゃべりがますますパワーアップして、どんどん長くなる一方。しかも、そのほとんどが、無駄話。ストーリー展開とは全く関係のない、ただの、女同士の恋愛談義（……と、『竜兄ちゃん』がいかに変人かを語る、ミョ〜なエピソードの数々）。 で、その頃はまだ誰にも読んでもらう予定がなく、ただ自分が書いて楽しめばいいだけだったので、書いたものはすべて削りもせずに放置してあったのですが、ネットでの掲載に当たって、人様にお見せするのにいくらなんでもこの超無駄話はまずいだろうと、最終推敲でばっさり削って、なんとか今の長さに収めたのです。それも、一度はもっとばっさり削ってみたんだけどやっぱり必要な情報まで削りすぎだったからまた増やして、そしたらさっきと台詞の順番が変わっていて話の流れが不自然になっちゃったから、また並べなおして……みたいな試行錯誤を散々繰り返して、すっかりぐだぐだになってしまったのですが……(^^ゞ まあ、それでも、削らないよりはマシだったと思います。 でも、削ってしまった無駄話がちょっともったいないので、裏話として、落穂拾いしてみようと思います。 第一弾は、里菜のコイバナ大放言です。（第二弾は、『竜兄ちゃん・変人エピソード集』の予定） 本人が主張するとおり、里菜にもけっこう、これまでそれなりにいろいろあったらしい（笑）ですよ。 美紀が里菜を披露宴の二次会に誘うところからの続きです。（一部、最終稿にも残っている部分も含まれています） ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「だからね、里菜、ちゃんとおしゃれしてきなさいよ！ 里菜、今、フリーなんでしょ？ だったら、チャンスよ、チャンス！」 「うーん……」 「何よ、気のない返事して。ねえ、里菜、前の彼氏は、どうなったのよ」 「うーん、やっぱ、いまいち、うまくいかなくて……」 「ふったの、ふられたの？」 「ううん、そういうんじゃなくて、ただ、なんとなく……」 「自然消滅？」 「うん、それに近いかな。あのね、一度、結婚してくれって言われたの。でも、あたし、まだ全然そんなつもりなかったから、正直にそう言って、ごめんなさいって言ったら、それからやっぱり、なんだかんだで、こういうことに……」 「そりゃあそうよ、何が『今はまだ』よ。あんたがまだ学生だっていうんならともかく、あんたもう２７じゃないの。それでそんなこと言われたら、相手は遠回しな断りの口実としか思わないわよ」 「……やっぱり？ でも、あたし、あれでよかったような気がする。だって、うまく言えないけど、何か違ったの。ずっと、薄々は、何か違うような気がしてたんだけど、結婚って言われた時、はっきり気付いちゃったの。この人じゃない、この人は違うって。いい人だったんだけど、最後まで別に嫌いじゃなかったんだけど、でも、やっぱり、違ったの。あの人じゃなかったの」 「……なんかさあ、里菜って、かわいい顔して、けっこうタチの悪い女よね」 「ええっ、何で？ どこが？ どうして？」 「だって、また、そうやって男心をもてあそんでさあ」 「えっ、そんな……。あたし、そんなつもりは全然……」 「そんなつもりでなくても、そうなのよ。胸に手を当てて考えてみなさいよ」 「うーん、そうなのかなあ」 「そうよ。だって、相手は本気だったわけでしょ、プロポーズしたくらいだから。相手は遊びじゃなくて本気で真面目なおつき合いしてて、なのに結婚申し込んだとたん手のひらを返したようにかわされるんじゃ、あんた、恨まれるわよ」 「うん、彼には悪かったと思ってるけど……」 「やっぱ、そう思うでしょ？ あんた、その前の彼氏も、そんな感じでふったでしょう。今まではたまたま相手がいい人だったから、ごめんなさいで済んだのよ。ヘタすると、そのうち怖い目に合うわよ。なんでそういうことするわけ？ だいたい、里菜なんかと付き合おうとする男って、みんな、最初から本気でしょ。あんた、遊びで付き合いたいような、遊んで楽しいような女じゃないんだから」 「え〜。それって悪口？」 「別に悪口ってわけじゃないのよ。タイプの違いの問題よ。あんたみたいのには、軽い男や遊びの男は、最初から寄ってこないの。あんたなんかと付き合う男は、だいたい、はじめから『お嫁さんにどうかな』ってつもりなのよ」 「やだなあ、そういうの」 「なんで？ 遊ばれるよりいいじゃない」 「だって……。あのね、つき合って、よく知り合ううちに、お互いに相手がとっても好きになって、それで結婚したくなるならいいんだけど、でも、最初から、『ああいうコがお嫁さんにするのに手頃そうだ、都合が良さそうだ』みたいなつもりで近づかれるのって、いやなの。あたしのことよく知りもしないのに『このコならおとなしそうだから扱いやすいだろう』とか、簡単に思われたくないの」 「あはは、なるほどね、あんたの場合、たしかに、その、『おとなしそうだから』っていうの、多そうよね。でも、それって、大間違いよねえ。大勘違い。あんたは、そりゃあ、おとなしいといえば確かにおとなしいけど、実はけっこう辛辣だし、頑固だしね。『おとなしい』ってのと、簡単にひとの言いなりになるっていうのとは違うのに、人を見る目のない男は、そのへん、勘違いするんでしょうよ。そういうふやけた勘違い男には、あんたがほんとはどんなコか、早いうちに、がつんと一発、思い知らせてやるのよ。それで、そういう見かけによらないあんたを知ったらますます好きになったっていう人とだけ、付き合ってみればいいじゃない。あんた、それをしないで、そこでもう、その恋、投げちゃうんでしょ。恋をするのに、努力を惜しんじゃ駄目よ。人間が、しかも男と女が、お互いに解りあうには、半端じゃない努力がいるのよ！」 「でも、あたし、あたしのことをお嫁さんに都合が良さそうだって、そんな目で見るような、そういう男の人って、最初から嫌なのよ。『おとなしそうで手ごろそう』みたいに思われてるなっていうのが見えちゃうと、その段階で、もう、嫌になっちゃう。だって、そういう人って、自分に都合の良い『お嫁さん』が欲しいだけで、あたしが欲しいんじゃないんだもん。で、あたしのこと、自分の都合のいいように勝手に誤解してるの。一方的で自分勝手で、自分の思いこみでしか世の中見てないっていうか。きっと、ああいうおとなしそうなコなら自分でもあまり苦労しないで言うこと聞かせられて自分の都合の良いように扱えるだろうとか、楽してても自分の方が上に立てるだろうとか、そういう甘い考えであたしに目をつけるのよ。そういうふうに言われたこと、あるもん。もちろん、こんな身も蓋も無い言い方はしなくて、もっと聞こえのいい言い方だったけど、とにかく、結局はそういう意味だったもん。そういう人は、自分ではあまり気がついてなくても、ほんとは、自分に自信がないのよ。なのに、そういう人に限って、男は強くなくちゃならないとか、変な風に思いこんでて、しかも強いっていうのがどういうことか全然わかってなくて、女の人に威張ることが強そうで男らしいことだと勘違いしてて、でも自分より弱そうな相手にしか威張れないから、あたしみたいなおとなしそうなのが相手なら自分でも楽して威張らせてもらえるだろうって思ってあたしに寄ってくるのよ。威張りたがるくせに甘ったれてるの。甘ったれた男は嫌い。甘えたければあたしじゃなくて自分のお母さんにでも一生甘えてればって感じ？」 「あはは、言う、言う！ 里菜ぁ、あんたって、いいわよねえ。最高！ そのかわいい声で、ふわふわしたしゃべりで、言うことったら、こうだもんねえ。今のそれ、あんたがフッたそのテの男に聞かせてやったらひっくり返るわよ。あんた、そういうことをちゃんと面と向かって相手に言ってやればいいのよ。目ェ覚まさせてやんなさいよ」 「言ってもわかんないよ。バカだもん。そんな人には、ものをわからせようとするだけ時間の無駄よ」 「きゃはは、出た、出た。そうそう、これがあんたの本性よ！ 手厳しいっていうか、醒めてるっていうか、身も蓋も無いっていうか、ほんと、辛辣よねえ。なのに、どうして、男は騙されるかなあ。あんた、猫被ってちゃだめよ。あんたが猫被ってるから、猫被りが見抜けないような、甘っちょろい、ハンパなふやけ男ばかり寄ってくるんじゃないの？」 「別に猫被ってるつもり、ないんだけど。あたしはいつも地のままよ。でも、ほら、そういう人って、自分が思いこんでるようにしか、あたしのこと見てくれないの。自分の思いこみしか、目に入らないの。本当のあたしがどんな人間かなんて、実は全然、興味ないのよ。だから、あたしの言うことなんか、何も本気で聞いてないの。あたしのこと好きだなんていってても、ほんとはあたしが好きなんじゃなくて、ただ、自分が欲しがってる通りのおとなしいお人形さんが好きなだけなのよ。でも、あたしは、他人が欲しがる通りのものになってあげる気なんか、ないの。あたしはあたしだもん」 「あはは、まあまあ、抑えて、抑えて。一度や二度、そういうしょうもないのに当たったからって、世の中の男が全部そんなふうってわけじゃないんだから。そんな男は相手にしなくても、きっと他にいくらでもマトモな男が見つかるわよ。あんたはまだまだ、これからよ。なにしろ超がつくほどのオクテだったんだから、人よりスタート遅かった分、今から人よりがんばらなくちゃ。でね、だからね、さっきの『新郎友人』たち、お嫁さん探してるのがいっぱいいるのよ。彼がね、新婦の友達を絶対に紹介してくれよって、さんざんうるさくせっつかれてるんだって。最初は『誰かお嫁さんいないかな』で付き合い始めた人だって、付き合ってるうちに、他の誰でもないあんたがいい、あんたじゃなきゃやだって、思うようになるかもしれないじゃない？ そうならせるのがあんたの女としての力量ってもんじゃないの？ ただぼんやり待ってたって白馬の王子様は来ないわよ。王子様はね、自分から行動する人のところにだけ来てくれるの。これと思った相手には自分から働きかけて本当の自分をわからせて好きにならせてみせる、そういう心構えでいなくちゃ。特にあんたは、黙ってるとバカを引き寄せやすいらしいから、それがいやなら、自分から討って出ればいいの。寄ってくる男を待ってないで、これと思った相手に、自分から近づくのよ。そうすれば、あんたのその誤解されやすい見かけだって、逆に当座の武器になるわよ。まずはその見かけで油断させて充分に間合いを詰めておいてから不意打ちをかけてやるのよ！」 「う〜ん、でも、あたしはもういいや」 「なにが？」 「だから、男の人と付き合うの」 「えーっ？ なんでよォ！」 「だって、めんどくさいもん。そういう、駆け引きみたいなのって、苦手だし。そうまでして男の人とつき合いたいとか結婚したいって、別に思えないし。きっと、あたし、恋愛には向いてないのよ。なんか、あたしね、人間の男の人より本のほうが好きみたい。男の人とデートするより、一人で本とか読んでる方が好き。そのほうがよっぽど楽しいもん。充実してるもん」 「いい年して何言ってんのよ。本を読むのが悪いとは言わないけど、あんたはね、もっとちゃんと、現実の、本物の男と、本気で付き合ってみるべきなのよ。ちゃんと、まじめにきちんと恋愛して、経験値を上げときなさい！」 「だからァ。あたしだって、人並みに、恋のふたつやみっつはしたの！ さっきからさんざん、その話、してるじゃないの。ただ、みんな、何か『違った』んだってば……」 ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ ……というわけで、こんな感じです。これを読むと、里菜を見る目がちょっと変わるかも？（笑） →『イルファーラン物語☆創作裏話』目次へ →トップページへ →『イルファーラン物語』目次ページへ |