イルファーラン物語☆創作裏話

第5回 『恋愛もの宣言?』の巻(第二章前書き)

 この創作裏話コーナーの更新が止まっていたのは、日記で裏話を書いてしまっていたせいもある……と気がついて、日記の中から、これは裏話ネタだなと思ったのを引っ張ってきました。

 2002年11月11日(月) の日記より

 しばらく前から、ワープロで作ってあった文書をパソコンで読み込めるように変換する作業を、ちょっとづつ進めています。
 で、その際に、『イルファーラン物語』の続きにざっと目を通すはめになっているのですが、これから連載予定の第二章に久しぶりに目を通してみて、ちょっと愕然。
 何、これ、恥ずかしい〜!
 が〜ん、これって、ただの恋愛ものじゃん……。
 今後、これを公開するのかと思うと、今から冷や汗が……(@_@;)

 あのですね、話の全体を続けて読む分には平気なんです。
 全体はやっぱり『恋愛が重要な役割を果たすファンタジー』で、ただ、通して読めば、話の流れの中で時に恋愛が中心になる部分もあるというだけのことです。
 が、あの部分だけ、きっと半年くらいかけてゆっくり連載するとすると、その間、『イルファーラン物語』は、ずっと、『ただの恋愛もの』なのです!
 しかも、それはもう背中がむずがゆくなるような、超こっぱずかしい恋愛ものです。

 うわあ……、なんじゃこりゃ! いくら10年前とはいえ、何で私はこんなものを書いたんだろう……。10年前だって、私は既にいいトシだったのに(^_^;)、なんでこんな恥ずかしいものを……?

 でも、確かに、『イルファーラン物語』を構想したとき、私は、ようし、背中の痒くなるような恥ずかしい初恋を描いてやるぞ、と、はっきり意図していたんです。
 何でそう思ったかは、その時の気分というものでしょう。そのとき、ちょうど、そういうものをちょっと読んでみたい気分だったというだけです。

 それまでいつもそういうものを読んでいたというわけではありません。それまでは、むしろ、ぜんぜん読んでこなかったです。
 私が少女だった頃、周囲では『おとめちっく』が花盛りだったはずなのに、私はそんな世界には目もくれず、『ふん、恋愛ものなんてくだらない。時間の無駄!』みたいな調子で、『岩波新書』だの『講談社ブルーバックス』だの『創元SF文庫』だの『フロイト全集』だの『天狗列伝』だの、なぜか『鉄道ファン』だのを読んで、硬派な少女時代をすごしてきたのです。

 でも、その時期はなぜか、これからは、今まで興味が無かった少女小説でも読んでみようかなあという気分だったのです。
 子供が生まれて、なんとなくほんわか優しい気分になっていたためでしょうか。
 妊婦時代とか、新生児を育ててるときって、普段女らしくない人でも、なんとなくちょっと女らしい気分になることが多いものなのです。いつも黒しか着ない人が、急に、フリルの付いたピンクのマタニティドレスを着たくなったり。(昔は今と違ってマタニティといえばフリフリ系しかなかったから、本当はマニッシュなものが着たくてもフリフリを着るしかなかった場合もあったでしょうが、それだけでなく、やっぱり、気分的にそういうものを求めたくなる場合も多いらしいです)
 あるいは、今思い出しても追い詰められていた密室育児からの現実逃避だったのでしょうか(当時零歳だった上の子は、異様に手のかかる赤ん坊だったのです)。

 でも、いつも周囲とテンポがズレてる私が、人より10年ほど遅れて、やっと『おとめちっく』を求めはじめたときには、いつのまにか時代は変わっていて、『おとめちっく』の本家本元であるコバルトでさえ、サイキックもの、伝奇ものが全盛で、恋愛といえば男同士が主流になっていました。

 それでも、もちろん、探せばいくらでも見つかったんでしょうが、乳児を抱えていたその頃は、本屋や図書館に行くことすら困難でした。そして、また、そのときは、ちょうど、なんとなく、仕事をやめたから小説を書いてみようかなあと思っていた時期でもありました。

 そんなこんなが重なって、私は、読むのではなく書く事で欲求を満たそうという方向に向かったのです。
 私が頭の中で思い描くところの、もっとも典型的な、オーソドックスな、ありふれた――でも、実際にはそんなに溢れかえってはいないらしい――女の子向け恋愛風味異世界ファンタジーを、自分で実体化してしまおうと思ったのです。

 だから、『イルファーラン物語』は、ある意味、自分が書こうと思った通りのものなのです。
 少なくとも、そのときの気分では……。
 まあ、全体としては、書いてるうちにちょっと違うものになってきたのですが、その中でも、第二章は、当初の意図が一番そのままの形で残ってる部分です。

 でも、今、十年後に読み返してみると、やっぱ恥ずかしいわ、こりゃ。
 ちなみに、恥ずかしいといっても、エッチとかそういうんじゃなく、なんといいましょうか、古い少女漫画を読む時に感じるような気恥ずかしさです(^_^;)
 このトシになると、エッチなものは、もう、あまり恥ずかしくありません。エッチでないものこそ、恥ずかしいのです。

 ちょうど、このあいだから『イルファーラン物語』を恋愛ものだと公言しはじめてて、よかったです。
 だってほんとに、どう見ても恋愛ものだもん。
 今まで、 らぶふぁんたじー同盟に入れてもらったりはしたけれど、恋愛を前面に出して売り出すにはちょっとらぶらぶ度が足りなくて申し訳ないかなと思ってたのですが、第二章を読み返した今なら、もう、胸をはって、これは恋愛ものだと公言できます。

 というわけで、第二章は、恋愛中心です。背中が痒いです! 第一章の前半もかなり痒かったけど、もっと痒いです!!
 冬木、今から青くなったり赤くなったりしてます(^_^;)
 でも、あえてそのまま、恥ずかしい内容のまま公開しようと思います。
 世の中には、十年前の私がそうだったように、今現在そういうものを求めている人も、それなりにいるでしょうから。

 ちょうど、最近、恋愛ものは需要が高いと思い知ったところなので、それに勇気を得て、開き直って、少なくとも第二章を連載している間は、『イルファーラン物語』は『恋愛もの』だと公言しておきます。
 それに、普通のファンタジーだと言ってて、何だ、実は恋愛ものじゃん、と思われるのは恥ずかしいけど、最初から恋愛ものだと言い張ってれば、かえって恥ずかしさが少ないような気がするんですけど。
 どんなに背中が痒いシーンがあっても『だって恋愛ものなんだもん、しょうがないじゃ〜ん』で開き直って済ませられるような……って、気のせいですかね(^_^;)


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