イルファーラン物語☆創作裏話

第一回 『アルファード誕生秘話・私は体育会系男が嫌いだ〜!』の巻

 突発的に作ってしまいました、創作裏話コーナー!
 きっかけは、ゆめのみなとさんとの、感想掲示板でのやりとりです。
 ゆめのさんが書き込みの中でアルファードに言及し、そのレスの中で私が『実は私は体育会系男が嫌い』と書いたところ、ゆめのさんから、再度書き込みがあり、『それなのにどうしてアルファードのようなキャラが生まれたのか興味がある』とのお言葉。
 『はい、それには、話せば長〜いわけが……』と、説明をはじめようとしたら、ほんとに、あまりにも長〜くなりそうになったので、レスとして書くのは止めて、突如、裏話コーナーを作ってしまうことにしました。しかも、いきなりシリーズ化決定。
 なんて行き当たりばったりなサイトなんでしょう(^_^;)

 というわけで、『イルファーラン物語』創作裏話、第一回。
 アルファードというキャラクターの誕生のいきさつと、この物語の成立過程についてのお話です。
 なぜ私が自分の本来の好みと正反対のキャラをメインにすえるはめになったのか、それは、このお話自体のそもそもの発生と関係があるのです。
 物語全体の基本設定に関わる内容なので、ある意味、ネタバレといえばネタバレですが、本編を楽しむのに差し障りは無い……と、思います。
 でも、ネタバレが特に嫌いで全く先入観の無い状態で本編を楽しみたいという方は、第一章が終わるくらいまでは読まないほうがいいかも。(いつのことになるやら?)

 さて、まず最初に一言。『私は体育会系男が嫌いだ〜!
 声を大にして言いたいので、思わず太文字にしてしまいました。
 いえ、実際にスポーツをしてらっしゃる男の方に対して文句があるわけではございません。スポーツをしていようがいまいが関係なく、良い人は良い人だし、嫌なやつは嫌なやつです。
 が、異性として魅力を感じるか否かという話になると、話が別なわけで、私の好みは、現実の中でも物語の中の男性についても、学者タイプ、芸術家タイプ、文学青年タイプなのです。
 そんな私が、なぜ、アルファードという心身ともに超体育会系の筋肉男を、自分の第一作のヒーローに据えてしまったのか。
 そこには、この物語の成立そのものに関わる、話せば長〜い訳がありまして……。

 この話のそもそもの発端になったのは、『何のとりえも無い無力で平凡な女の子が、実は、魔法を消すという特別な力を持っていて、その力は、魔法が存在しないこの世界では無意味だが、戦争でも何でも魔法に依存している別の世界に行ったら、その女の子は突然、世界最強・無敵の超魔法使いになってしまい、あ〜らまあ、大活躍だ!』という、ほんの思いつきのアイディアでした。
(さらに裏話を暴露すると、このアイディアの発想のきっかけは、その頃、たまたま同時期に読んでいた『ハイスクールオーラバスター』と『魔法の王国ザンス』です。それにしては、どっちともひとつも似てもにつかぬ話になってますが(^_^;)

 で、この場合、その女の子は、魔法戦争の中で、防御力においては確かに無敵だけれど、攻撃力は全く無い。
 そこで、それを補うべく、攻撃力担当の相方が必要と考えたのです。
 で、この場合、攻撃力と言っても、魔法が無効化されちゃう状況の中なんだから、魔法による攻撃力じゃなくて、物理的な攻撃力が必要です。肉体派の、力自慢の戦士が、相方として適当でしょう。
 なら、いっそ、魔法がすべてのその世界でひとりだけ魔法が使えない戦士と言うのが、コンビとしてのバランスが良い。そうでなければ、相手は誰でもいいことになる。この相手とコンビを組まないと、という必然性が無い。

 はい、これで決定。ヒロインの相方は、魔法が使えない力自慢の戦士です。
 で、少女小説を書くつもりだったから、当然、若い男性です。命をかけた冒険の中で淡い恋が芽生えないといけないんだから、オヤジや女戦士は却下。
 今にして思えば、女のコが二人で冒険して、恋の相手は他から調達という手もありだったんですが、私は最初から、主役級の男女ふたりをくっつける予定で話を考えました。それが一番あたりまえの基本のパターンに思えたので。

 そう、話は脱線しますが、私、ハナから、変わった話を作ろうとは思ってなかったんです。あえて定石どおりの、ありがちな話を書きたかった。そういうのって、意外と、どこにでもありそうで探すと見つからないもので、当時、私は、そういう、少女小説ファンタジーの定型みたいな物語が読んでみたい気分だったんですね。だから、自分もそれを書いちゃおうと。結果的には、自分の個性がそれ向きじゃなかったらしく、ぜんぜん雰囲気が違ってしまいましたが(^_^;)
 でも、今でも、見かけはずいぶん重厚長大になってしまったこのお話、ガタイはゴツイがココロは少女小説だと思ってます。なんか、ニューハーフのおねえさんみたいな小説ですね(T-T)

 さて、話は戻って、この、マッチョな相方。その世界では、それまで魔法がすべてだったんだから、世界でただ一人、身体ひとつで勝負してきたそいつは、これまでは不遇だったはず。その分、よけいに、身体や剣の技は鍛えてきただろう。すごく強くて、筋肉モリモリだろう。で、そんな不利な状況でも頑張ってきた人なんだから、性格的にも、意志が強く克己心に富んだ立派な人だろうが、一方、コンプレックスが強くて、ちょっと鬱憤が溜まって、屈折してるだろう。

 そこへ、そんな特殊な力のある女の子がやってきて、そのコと組めば、自分は、今まで自分を見下してきた魔法を使える人たちと、初めて同じ土俵で渡り合える。魔法抜きなら、自分が断然、強い。他の人はみんな、魔法に頼って、身体鍛えてないから、たぶん世界一強い。こりゃもう、コンビ組むしかないでしょう。

 女の子のほうも、ここでは自分に何かすごい力があるらしいけど、それをどうしていいかわからないし、他には何も出来ない甘ったれた無力な現代日本の女の子だから、誰か親切な頼れる保護者がいないと、その世界では生きてさえいけない。
 そうして、割れ鍋に閉じ蓋の特殊技能コンビは、世界最強の力をえて、何か、その世界を救うような冒険に乗り出す。

 この場合、主人公の女の子は、力の強い相方がいなければ、その世界における自分の特殊な能力を生かすことが出来ず、肉体的にはめっぽう強い相方も、その女の子がいなければ、自分の力を生かすことが出来なかったわけです。
 そんな二人の出会いは運命的なものであり、ふたりは、自動的に、嫌でも強い絆で結ばれざるをえない。二人の間には特殊な相互依存関係が生まれるだろう。
 こんな特殊な運命共同体的関係にあって、しかも命をかけた冒険を共にする二人が、そこそこかわいい女の子とそこそこカッコいい青年であれば、当然、いつしか淡い恋も芽生えたりするだろうーー。

 でも、ふたりの間の力関係が特殊だから、ちょっと問題のある恋になるかも?
 (あ、ここから、ちょっとネタバレかも。私はこういうの、ネタバレとは思わないんですが、人によっては思うかもしれないので、文字色、変えておきます。主役二人の恋愛の心理の解説です。そういうのが平気な方は下の空白をカーソルでなぞって反転させてみてください。そうでない方は第一章読了後推奨)

 だって、男の方としては、この女のコ、恋愛の対象するしないという以前に、何としても逃がすわけに行かない。ずっと自分の支配下に置いておかないと、非常にまずい。この世界に慣れたからといって、自分のもとからどっかに巣立っていかれちゃ、困るのです。恋愛感情だけじゃなく、利害関係が絡んでくる。
 女のコの方としても、こいつの保護の下にいるぶんには、非常に楽です。お互い、都合がいいです。もたれあって共存共栄。
 でも、この関係って、ちょっとマズくない? 歪んでない? 私は納得いかないよ?

 そんなことを深く考えなきゃいいのに、ついついつきつめて考えてしまうと、お話が、勝手にあらぬ方向に膨らんで、冒険が始まりもしないうちに人間関係の描き込みだけで枚数が増えていく──。
 それが、『イルファーラン物語』の失敗の一因です(^_^;)
 重い恋愛心理小説が書きたかったわけじゃなく、『淡い恋愛要素も絡んだ楽しい冒険ファンタジー』を書きたかったんなら、そんなことを深く考えちゃいけなかったんですね。


 話は戻って、というわけで、『防御力のみで攻撃力の全く無いヒロインの攻撃面を補うべく、とにかく肉体的な力の強い、力の戦士を』、という必要に迫られて誕生したのが、アルファードなのです。
 だから、アルファードは徹底的に身体能力に優れた筋肉男だし、里菜は虚弱で無能で、徹底的に無力で凡庸なのです。

 でも、やっぱり私は、体育会系男は好きじゃないわけです。熱血ヒーローも苦手。
 せっかく初めて自分の小説を書くなら、自分好みの男をヒーローに据えたい。でなきゃ、損じゃないですか。
 だから、せめて、アルファードを、外見は筋肉男だけど中身は温和で物静かで禁欲的な世捨て人みたいな学者タイプということにしておいてみたかったんですね。
 で、そこを何とか強調したくて、第一章第三場では、『アルファードってこんな人なんだよ』というのを、冗長を承知で延々と書き連ねずにいられなかったんです。でないと、自分自身が、なんで里菜がこんなのを好きになるのかというのが納得できなかったせいです。自分を説得してたんですね。

 でも、この話、最初は、『このふたりが、それぞれの特殊技能を生かした最強のコンビを組んで、異世界の戦場で大暴れする話』の予定だったわけですが、それが、いつのまにかぜんぜん違う話になっちゃったんで、今となっては、もう、アルファードが体力勝負の男である必要があるのかないのか、よくわからなくなってるんですけど、でも、一度、そういう人として精神の容れ物である肉体を設定してからその内面を描きこんでいったので、もう、彼の精神は、そういう肉体にしか入り得ないものになっていると思います。今更その設定を変えると、あちこち無理が出てくるし。それで、その必要があるのか無いのかわからなくなっても、彼はもう、あのままでいるしかありません。そう、今となっては、特に理由は無くても、彼はああいう人なのです。

 そんなわけで、私は、決して自分の好みでない男を描くはめになったのですが、でも、8年も書いてると、やっぱり情が移ります。
 しかも、こいつ、意外なことに、私とけっこう性格似てたりします。ぜんぜん違うところもあるけど、部分的に、かなり似てるのです。最初に書いた時は、自分とぜんぜんかけ離れた、全く重なるところの無い人を書いたとばかり思っていたんですけど、その後、8年、この作品と付き合ってるうちに、自分の中に『アルファード』な部分を発見することが多くて、なんだ、アルファードって、私の中にいたんじゃん、と。
 そう思えば、あんなやつでも、かわいい私の息子です。最初に馴染むのに苦労した分だけ、今では一番思い入れのあるキャラかもしれません。

 それに、8年間もああいう男を書いていたせいで、私の趣味のほうが、作品からの逆影響で、ちょっと変わってきたような気も……?
 なんか最近、筋肉男に一抹の親しみを感じるようになった気がして……(←自分が怖い^_^;)
 でも、これ、作品の影響ではなく、家庭環境の影響かも。
 というのは、最近、我が家の男ども(夫、息子2人)の間で、『筋肉』という言葉が大流行してまして……。
 この流行の始まりは、『富士急ハイランド』のCMの『マ〜ッチョ、マ〜ッチョ』(←夫と息子がなぜか大喜び)と、『百獣戦隊ガオレンジャー』に出てくる『筋肉の戦士・ガオマッスル』(←あまりに妙なネーミングに大笑い(^○^) だって、これじゃあ、他に『ホネの戦士』とか『内臓の戦士』とか『皮膚の戦士』等の仲間がいそうじゃないですか)だったんですが、それ以来、もう何ヶ月も、我が家では『筋肉』ネタの局地的な流行が続いており、夫は食事の前に「いただきマッスル」なんていうし、息子は時々脈絡も無く『筋肉マッチョ〜』などと叫んでヘンなポーズをとっては、笑いころげてるんです。何がそんなに面白いのか、もう、お母さんにはさっぱりわかりませ〜ん(@_@) 
 あれ、私は何の話をしてるんでしょう?? 失礼しました〜m(__)m

『イルファーラン物語☆創作裏話』目次
イルファーラン物語目次ページ
トップページ