この文章は1999年頃に書きました。

バランスをとる面白さ

スケート歴10余年になります。
どれくらい上達したかというと,お恥ずかしいかぎりです。

長年,続けていると,スケートをすることは毎週の生活のリズムになっています。定期的にスケートをするのが日常であり,リンクに行かない生活は,今では想像できません。
でも,ただ,だらだら滑っているわけではありません。自分は,なぜスケートにひかれるのか? 何がおもしろいのか? と,常に自問しています。

その結果,スケートの面白さは,人間を人間たらしめる本質的な要素と関係があるのではないか,という考えに至りましたので,報告させていただきます。 (かなり冗談で書いています)。

題して…… 

「スケートがおもしろいのは、霊長類の証(あかし)」

スポーツを,二つに分けると,対戦型のスポーツと,非対戦型のスポーツがあると思います。対戦型のスポーツは,一対一あるいは集団対集団など,いろいろな形はありますが,敵というものが存在していて,直接的に敵と交戦して勝負を決めるタイプのスポーツです。格闘技はまさにこれであり,球技も多くは対戦型です。

一方,非対戦型のスポーツとは,直接ライバルと直面して戦うのではなく,競争という形で勝負が決まるタイプのスポーツです。フィギュアスケートはこちらですね。フィギュアの他には,陸上競技,モータースポーツ,冒険などもこれに入りましょう。

非対戦型スポーツでは,場合によっては,競争者が存在していなくても,そのスポーツ自身が成立します。対戦型のスポーツでは,トレーニングとして以外には,対戦を行なうその時その場所に,敵の存在なくしてはそのスポーツ自体が成立しません。
スケートは,先にも言いましたがフィギュアは非対戦,スピードも非対戦ですが,ホッケーは,対戦型スポーツです。

何かのことを情熱を持って人に行なわせるには,何らかの欲望,渇望といったものが必要ですが,人をスポーツに向かわせるのも,何か大きな力が必要であると思います。
対戦型スポーツを行なう人達の原動力,対戦型スポーツに向かわせる衝動とは,やはり闘争本能でしょう。

昔むかしの原生動物の時代から,生存競争は生物に必然の出来事であり,魚類,両生類,爬虫類と進化をしても,闘争本能は生き残るための基本的本能です。闘争本能は動物の遺伝子に常に書き込まれていたわけであり,我々人間の遺伝子にもしっかり記録されています。
対戦型スポーツが人気があり,多くの人がこの種の競技に参加するのは,闘争本能が満たされるからなのは,間違いありません。

では,非対戦型のスポーツには,人をその競技に強い熱情で向かわせるエネルギーが,何かあるのでしょうか?

フィギュアスケートをやっていて,その醍醐味の一つとして,上手にバランスをとるのが楽しいというのがあります。
私は,この「バランスをとるのが楽しい」というものが,多くの非対戦型スポーツにおいて,重要な意味を持つと考えました。

バランスをとるのがその種目の最重要点であるスポーツを他にあげると,スキー,スノボー,サーフィン,スケボー,自転車,バイク,体操,………。
皆,非対戦型スポーツです。

我々人類は,猿から進化しました。猿は,歩くとき後ろ足と前足の両方を使って,いわゆる,四足歩行をします。その猿が,後ろ足二本だけの,すなわち二足歩行をするようになって,その結果,手があき,道具を使い初め,知能が発達し霊長類に進化していったことは,皆さんご存じですね。
四足歩行の猿と,二足歩行の人類とでは,脊椎の曲がり具合,骨盤の形,頭骨の乗り方など,多くの肉体的な違いがあります。これだけ多くの形の変形を必要とする出来事には,大きなエネルギーが必要だったはずです。

最初の猿が,後ろ足だけで歩き始めた理由は,何かそうしなければならない環境要因が有ったのでしょう。私はその理由は何なのかは知りませんが,何かそうしなければならない理由が有ったにしろ,それを続けていくのは,大変なことだったはずです。二足歩行(線で支える)より,四足歩行(面で支える)ほうが安定するのは当然ですから,二足歩行を強いられるような事態になったら,早々とその場を立ち去って,四足歩行のままでいい場所に移ってしまえばいいのです。動物(うごくもの)なんですから・・・。

もしここに,
「二足歩行って,ふらふらして難しいけど,バランスをとるのって,おもしろい」
と,感じる猿がいたら,どうでしょう?

その猿は,次の日もその次の日も,バランスをとることが楽しいので後足で歩き続け,二足歩行でないと生きられない環境に適応していきます。四足歩行でも,かまわない他の土地へと移ることはないでしょう。
そしてその猿の子孫は,二足歩行を続け,霊長類へと進化を始めるのです。
バランスをとるのはおもしろいと思うことは,人類を霊長類たらしめている,最も重要な要素とは言えないでしょうか。

スケートは,なぜ楽しいのでしょう? 私にはその理由がわかりました。

(^^) 「スケートがおもしろいのは,霊長類の証」 (^^)

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