■シリアの食 中東という地域は、もともと放牧の文化が根付いている場所なので、食のバリエーションがない。だから私も、今回のシリア旅行に限っては、それほど食べ物には期待をしていなかった。 ところが、ダマスカスのレストランなどに出向いてみると、結構メニューが充実していて驚いた。羊肉だけでなく、牛や鶏のプレートメニューなどもズラリと並んでいた。 ここでは、シリアで出逢った料理・食べ物を、うまいまずいに拘わらず紹介したい。
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まずはスープ編。 | [1] |
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[1] 中級のレストランに入るとよく見かける、シリアのスープだ。左は豆で作られたスープ。シリアだけでなく中東のどの地域でもお目にかかれる、あの味気ないスープである。一方右は、小麦をパリパリに揚げたものだ。そのまま食べてもビールのおつまみとして最高だが、このスナックを左のスープに浸して、ふやけた状態になったときにすくって食べると、これがまたウマイ。ただのスープだけだと大したモノじゃないんだけど、スナックが入るだけで、美味しい料理に変わる。 [2] 野菜スープも、いろんなレストランで食べられる定番の料理である。コンソメスープにしているものが多い。 [3] これもウマかった。ガイドブックにも何も載っていない、いたって普通のカフェレストランで何気なく注文したチキンのスープ。単にチキンが入っているだけかと思ったら、スープには一口サイズのパンが浮かんでいて、さらにその上にトロトロのチーズがまんべんなくかけられていた。スープというよりグラタンに近い? …見た目はなんてことないお店にも、意外なウマイ料理が潜んでいるものである。 [4] 同じチキンスープでも店によっては、まったく違うものが出てくる。これはクリームスープ仕立て。適度な塩加減でこれもまた美味しかった。 |
つづいて、プレート編。 | [5] |
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今回訪れたダマスカスやパルミラは内陸の町なので、プレートというと、たいてい肉と野菜のプレートになる。時期によっては、地中海沿岸の街・ラタキアあたりで取れた魚介類が、ダマスカスまで運ばれて、料理として出されることもあるらしい。 [5] マルジェ広場近くの安い食堂で食べた、中東の代表的料理ケバブ。お店によっては串に刺さったまま客の前に出される場合もある。個人的には、ケバブはあまり好きな料理ではない。肉を硬めに焼いてしまうので、肉汁が全て飛んでしまう。ジューシーな肉を好む人にとっては不満が残る。しかし、この食堂で食べたケバブは、比較的柔らかい肉が多かった。 左上に映っているのは、フムス(ホモス)と呼ばれる料理。中東全域で食べられる伝統的なアラブの前菜料理である。豆・オリーブオイル・レモン汁を加えたものをすりつぶしてペースト状にしたもので、パンにつけて食べるのが一般的である。酸味のある料理なので、夏バテ防止に効く。炎天下のなかで観光し、そのあと食事と言われても、たいていは食欲がないものだ。そんなときにこれを注文してみるといいかもしれない。 [6][7] パルミラでしか食べられないという、ベドウィンの伝統料理「マンサフ」。炒めたサフランライスの上に、ローストチキン(あるいはローストビーフ)と豆を乗せた料理([6])である。お店によっては、さらにトマトベースで煮込んだソース([7])も出てきて、それをかけて食べるというところもある。そのまま食べるとそれほど美味いとは思わないが、トマトのソースをかけるとなかなか美味しい。一人分とは思えない量で出されたのでちょっとビックリ。 ちなみにセット料理を注文すると、ヨーグルト(無糖)が付いてくるというのは、どこの中東の国でも同じようだ。 [8] 焼いた羊肉に、レモン汁をかけた料理。これはレモンの酸味がキツ過ぎて、私の口にはちょっとビミョーだったか。 [9] 焼いたチキンをガーリックソースで和えた料理。炒めたライス付き。ガーリックソースがなかなかいい味。しかしやはりここも一人分にしては量が多かった。 [10] 同じく、カフェレストランで適当に注文したら出てきた、フライドチキンのプレート。何となくファーストフードっぽい料理。チキンを食べただけでもうお腹一杯。だから量が多いんだってば。 [11] シリア旅行の中で最も私が美味しいと思った料理がこれ、ラム肉のステーキ。香草の付いたナンの下に隠れているのがそのラム肉なのだが、これがすごく柔らかくてジューシーで最高にウマかった。ラム肉だから羊独特の臭みは全然ない。私はこのステーキ、ミディアムで注文したのだが、レアだったらもっと美味しかったかもしれないね。 しかしどのプレート見ても、シリアの料理って、メインだけでなく付け合わせの料理も豪華だ。 |
最後はスイーツ・ドリンク編。 | [12] |
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[12] ダマスカスのマルジェ広場近辺には、たくさんのお菓子屋さんが並んでいて、お菓子が山積みの状態になっているウィンドウをよく見かけた(うまいこと積んでるなあ)。今回この積まれているお菓子は食べなかったが、代わりにお土産として、このお店でゴマとピスタチオのクッキーを購入した(後述)。このクッキーが結構おいしかったので、できれば他のお菓子も購入しておけばよかったとちょっと後悔した。次回シリアに来たときには、ぜひこれらのお菓子も試してみたい。 [13] ダマスカス旧市街近くのお菓子屋さんで、1個売りしていたお菓子。私も甘いモノは好きであるが、この甘さにはギブアップだった。カスタードクリームをパン生地で包んで揚げており、さらにその上にシロップがまんべんなくかけられている。ちょっとちょっと、砂糖使い過ぎ……かなりの甘党にはオススメできるスイーツかもしれない。 [14] スークを歩いていると、こんなふうにパンを路上販売しているのを多く見かけた。今回私は食べなかったけど、けっこう美味しそうなパンがズラリと並んでいた。ゴマの振りかけられたパンが多かった気がする。 [15] ウマイヤド・モスク近くで販売していたレーズンのジュース。暑い街中を歩いているとき、氷入りのこういった飲み物を飲むと生き返った感じがする。レーズンだけでなく、オレンジの生絞りを売っていた屋台も多く見かけた。 [16] シリアはイスラム圏だから、酒は飲めないものかと思ったが、実はキリスト教徒も住んでいるから、その人達向けに酒を販売している。私が入ったレストランでも、ビールを飲むことができた。せっかくだからシリアで作られている地ビールを飲んでみた。写真はバラダビールというシリアのビール。……うーん、そうねぇ、確かにおいしいけど、日本のビールには負けるかもしれないかな。 |
■言葉の壁 どこの国でもそうなのだが、英語の文化圏でない人が英語を喋ると、訛りがひどくて何言ってるか全然分からない。それはここシリアでも同じだ。母音の後の r を発音したり、t を必ずタ行で発音したりする傾向にある。 今回の旅では、隣国レバノンに行ったときと同じ体験をした。値段を聞いたときに「タラティ」と言ってきた。…そう、これ実は「thirty」と言っているのである。ただでさえ英語が不得意な私だから、一瞬聴いただけではさっぱり分からん。英語がある程度できるという日本人でも、この地域の発音にはきっと苦労するのかな。 |
■アラビア数字 シリアに限らず、アラブ圏ならどこでもそうなんだけど、多くのお店はアラビア数字で値段を表記している。だから買い物のときにアラビア数字を知らないと苦労することになる。「普通の数字で表記しろよ!」とツッコミを入れたいところだが、日本でもお品書きで漢数字使ってるのを見かけるから、あまり文句の言える立場ではない。アラブ圏に旅行に行く際は、あらかじめアラビア数字を覚えておいた方がいいかもしれない。 |
■おみやげ 今回のシリア旅行で購入したお土産。 |
「ピスタチオ入りのごまクッキー」。前述したマルジェ広場のお菓子屋さんで購入。ちゃんと現地で試食して選んだマジメなお土産。ゴマの量が多いので、食べてる最中にゴマがぽろぽろと落ちてしまうけど、まあそれはご愛嬌。会社の人達のお土産として持っていったところ、最初は知らない国のクッキーということで、みんななかなか手をつけていなかったけど、最終的には完食というすばらしい結果になった。よかったよかった。 | |
「得体の知れないお菓子群」。私がお土産を買う場合、マジメ系とネタ系を買うのであるが、今回もネタ系はしっかり購入した。ダマスカス旧市街のスークで量り売りしてたお菓子である。 これは私、一度も試食していないので、人に配るつもりはなかったのだが、「食べてみたい」というチャレンジャーがいたのでその人に送って食べてもらった。それほど不評ではなかったようだ。 | |
「アレッポ石鹸」。シリアにはアレッポという街がある。そこはアレッポ石鹸という石鹸が名産品である。今回の旅では私は行ってないんだけど、旧市街のスークで売られていたので、お土産の一つとして購入した。 アレッポ石鹸は、オリーブオイルとローレル(月桂樹)オイルでできた、100%天然の石鹸。つまりに身体にいいとされている。独特なニオイを放つが、それはまあ、使ってるうちに慣れてくる。 |
帰国後、最初は「日本人の肌に合うのかな〜」と半信半疑で、手洗い程度にしか使っていなかった。ところがこれがなかなかのシロモノで、使用後はイイ感じの肌になる。やるじゃないかアレッポ石鹸。なので今では、堂々と身体を洗うのに用いている。 どうやら聞いたところによると、アレッポ石鹸には8段階の等級があるそうだ。おそらく私が購入した石鹸は、工場で大量生産していそうな安い等級だと思うが、それでもこれだけの成果を挙げるのだから、ぜひ最高等級のアレッポ石鹸を購入して使ってみたかったものだ。 しまった…その情報を仕入れてからシリアに行っておくんだった。 |
「シリア彷徨記」 完
【2006年5月記録】 |