■ミンカバー村

時間は昼ごろになり、観光客向けのミャンマー料理のレストランで昼食をとることになった。本来のミャンマー料理というのは、油っこい料理であるが、ここでは外国人向けに比較的油の量を抑えているようだ。とは言え、日本人にとってはいたって普通の油の量に思える。しかしさすが東南アジアの料理、かなり美味い。東南アジアの料理はこれだからやめられない。中には、日本の天ぷらを思わせる料理もあった。どう見てもかき揚げに見える。ミャンマーにも存在するようだ。唯一異なるのは、天つゆではなくて、唐辛子入りのソースに付けて食べるというところか。

昼間は観光しないという東南アジアツアーの鉄則はここでもあるようで、昼食後、しばらくは観光はお休み。時間が経って夕方ごろ、また観光に出発した。車はオールドバガンから南へ行った、ミンカバーいう村に入る。ミンカバー村にはマヌーハ寺院という観光名所がある。

難しい歴史は割愛することにして、平たく言うと、むかし国どうしの争いがあり、その際に捕虜となったマヌーハという国王がこのミンカバーの地に連行された。そのときマヌーハ自身が建てた寺院である。特徴的なのは、すごく窮屈な場所に仏像が納められているという点だ。囚われの身であり、自由になりたいというマヌーハ自身の思いを表現しているといわれている。このような窮屈な仏像が3体もあるというのだから、どれだけ欲求不満だったのか。

この後カインさんに誘われて、実際にマヌーハが連行されたとされる、ミンカバー村の内部を散策してみることにした。まさに田舎の村という感じで、穏やかないい雰囲気を醸し出している。集落のひとつを覗いてみると、この家の住人らしきオバちゃんが夕食の準備をしていた。なんと天ぷらだそうだ。しばらく見ていたが、日本の天ぷらと作り方が一緒だった。

村の映画館

天ぷらを作成中

■ダヤマンヂー寺院

この地を治めていた国王が、自分が作る寺院よりもすばらしい寺院ができないようにという理由で、有能な建築家を1000人をこの場で殺害したという伝説のある寺院。国王自身も何者かに暗殺されたという歴史を持つ。その事件以降、この寺院は工事が中断され、未完成のまま現在に至っている。殺された者の幽霊が出るだとか、工事を再開しようとすると業者が次々と不穏の死を遂げるだとか…地元の間でも心霊スポットとして取り上げられている、いわくつきの寺院だ。

実際に中に入ってみると、確かに今までの寺院とは雰囲気が異なる。かなり薄暗く、荒れ果てていて、幽霊が出てもおかしくない異様さだ。

でもカインさんいわく、「私は夜12時過ぎに、本当に幽霊が出るかどうかを確かめに来たことがあります。でも何も出ませんでしたよ」とのこと。「それにあるツアーでは、夜12時になったらここで肝だめしをやるんですよ。そんなことを平気でやるくらいだから、本当に何もないと思いますよ」。…荒涼とした場所に建っており、またこの寺院内の異様な雰囲気が、そういう話を膨らませているのだろう。でもこの寺院、雰囲気は確かに異様だが、非常に涼しくて居心地は悪くない。この寺院にも物売りの人達がいたが、居心地の良さからなのか、商売せずにボーッとくつろいでいた。
閉ざされた扉 この奥に有能な建築家たちを押し込め、殺害したとされている
■世界遺産でなくてもいい

夕食はエーヤワディー川(イラワジ川)のほとりにある屋外レストランで。このレストランではステージがあり、伝統的なダンスを披露していた。…のであるが…えーと、スイマセン、ウマイ食事に夢中だったのであまり見てません。ちなみにここでは、ミャンマービールとマンダレービールという2つの銘柄のビールを頂いた。このうち、ミャンマービールという銘柄は、かつて世界で賞をとったことがあるんだとか。私はそれほどビールには詳しくないが、結構美味しかった。味は日本のラガービールに近い感がある。

バガンの観光はこれで終了。今日一日この地域を散策してみたが、全然観光ズレしてなくて実にいいところだった。今回は1日しかいることができなかったのだが、できれば長居してみたいところだ。

歴史的に貴重なパゴダや寺院があるこのバガンエリアであるが、実はこの地域、世界遺産には登録されていない。どこからどこまでを世界遺産のエリアとみなすのか、その切り分けが難しいという理由から、いまだに登録されていない状態なのだ。でも正直私としては、このまま世界遺産に登録されないというのも、それはそれで案外いいのではないかと思う。世界遺産に登録されると、どっと観光客がやってくるだろう。それに伴い、パゴダの保存や修復に関してもやたら横槍が入って厳しくなりそうだ。これらの動きが、このエリアに暮らしている人々の生活そのものに影響を与えることになるのかもしれない。つまり、遺産の保存というメリットが生まれるその一方で、人間の営みの保存にはつながらなくなるというデメリットが生まれるかもしれないのだ。世界遺産の登録については、むやみに推進せず、熟慮する必要があるのではないかと思う。そしてそのことはバガンだけに限らず、観光名所として確立したいからと、登録に躍起になっている他の国にも言えることである。

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