§8  暇つぶし (ホーチミン)

ベトナム滞在7〜8日目。私の記憶が正しければ、この2日間はほとんどダラダラ過ごしていたような気がします。昼間は暑いので、日陰の多い公園で昼寝したり、カフェで長時間くつろいでいたり。涼しくなりはじめる夕方になると、ようやく街中をぶらぶらする。といっても別にショッピングに興じるわけでもなく、ただ散歩をするだけ。腹が減ったら適当に屋台で飯を食い、公園で開かれているベトナム人のライブを酒飲みながら鑑賞する……そんな生活でした。メコン河クルーズで一緒だった女性と街中で偶然再会したとき、私がそんな生活をしているということを話すと、「一体何やってんですか?」とつっこまれました。ためしに「…じゃあ、私と一緒にショッピングでもしてくれますか?」と誘ってみたら、やんわりと断られました。アイテテテ。

でも私から言わせれば、こんなふうに街中の光景をただ観察してダラダラするっていうのも、なかなか旅のスタイルの一つとしてはよいのではないかと思いますけどね。例えばリゾートとか行ったらそんな感じでしょ? 場所が都市部という違いだけでやってることはそれほど変わんないですよ。…まあ、彼女らには受け入れられなかったみたいだけど。

まぁそんな2日間ではありましたが、いちおう観光名所らしきところにも立ち寄ってました。ここではその中から、結構よかった名所についてご紹介しましょう。

サイゴン動植物公園。ホーチミンの喧騒というものは、我々日本人にとってはインパクトがあり、見ていて面白いものです。しかし時間が経つにつれて慣れてくると、たまには静かなところで時間を過ごしたいなぁと思うようになるものです(旅行者というものはワガママですな)。そんな時におすすめなのが、バイクなどが入ってこれないだだっ広い公園でしょう。そして、数ある公園の中で私が訪れたのは、このサイゴン動植物公園というところでした(入場料8000ドン)。現地の人々にとってはデートスポットや家族の団欒の場として使われています。いたって普通の動物園なのですが、普段バイクのエンジン音ばかり聞いている空間からここへやって来るせいなのか、すごく異質な空間のように感じられます。特に平日の昼間なんかに来ると静かですよ。植物園も兼ねているので、樹木が所々に植樹されており、日陰がたくさんあります。ベンチに座っていると心地よい風が吹き抜けていきます。園内にはちゃんと食堂やカフェもあるので、ここで1日過ごそうと思えば過ごせるのかもしれませんね。


サイゴン動植物園の園内 (いるのは普通の動物)

戦争証跡博物館。この博物館、実は前回ベトナムに来た時も訪れたのですが、またやって来ました。ここは何度でも来てみる価値があるのではないでしょうか。ベトナム戦争に関する写真や物品が展示がされているのですが、まぁ衝撃的なものばっかりですわ。ベトナム人が米軍兵士に虐殺されている写真(生首が転がってたりとか、内臓が引きちぎられてたりとか)や、拷問の光景をスケッチしたもの、強いては枯葉剤の影響による奇形胎児のホルマリン漬けとまできたもんです。もう壮絶です。今回もまた鳥肌が立ってしまいました。…しかし中には面白い展示もあって、戦争が行われている最中に国外で起こった戦争批判の世論に関する展示もありました。「佐藤内閣は米軍に加担するな」「三菱は戦闘機を作るな」なんていうステッカーも陳列されてましたよ。

  
博物館の屋外にはこんな展示もある (マニアにはたまらないんだろうな)

さてベトナム滞在8日目の夜。とうとうベトナムを発つ時間になってしまいました。にぎやかなホーチミンの街を惜しみながらホテルをチェックアウトし、タンソンニャット国際空港へ向かいました。…いやぁ、もう旅が終わっちゃうんですね。寂しいなぁ。

………ところで、本来ならば、このまま帰国便に乗って日本に帰国〜っ、とスムーズに事が運ぶはずなんですが、今回はちょっといろいろトラブルが生じてしまいました。

実は、旅の途中で航空会社のオフィスにリコンファームの電話を入れた時、帰国便が変更したということをを告げられました。ベトナム航空の直行便であったのが、大韓航空と全日空の変則乗継便に変更されたというのです。…はぁっ? なんだそりゃ!?

どうやら話によると、当初搭乗予定だったベトナム航空のボーイングが故障をしてしまったらしく、小型のエアバスに変更になったんだそうです。そしたら搭乗人数が、エアバスの座席数を7人分オーバーしてしまうという事態に陥ってしまったのです。それで対策として、この7人は別の便で日本に行ってもらうということになりました。まあ、簡単に言うとオーバーブッキングですね。そしてその7人のうちの1人に、見事この私が選ばれてしまったというわけです。

うわー、ツイてないなぁ…。よりによってなんで私が選ばれるかなぁ? リコンファームしたのがギリギリだったからかなぁ? それとも団体客じゃなくて一人だけだからということで、航空会社の人に融通が利くと思われちゃったのかなぁ? まあとにかく、それを聞かされてかなり低テンションになってしまったのであります。

しかぁーし、ここで神のお助けが! 航空会社のスタッフが言うには、オーバーブッキングになってしまったお詫びとして、ホーチミン→ソウル間は、大韓航空のエコノミークラスではあるけれど、ベトナム航空のビジネスクラス用待合室を特別に使ってもよいということになりました。さらにソウル→関空間は、なんと全日空のビジネスクラスに乗せてくれることになりました。…おおっ、すげぇ、それはうれしい! はじめてビジネスに乗れる〜っ! ありがとう、故障したボーイング。

というわけで、2時間ほど出発が遅れることになりましたが、すばらしい便を用意してくれて、まあまあ満足気分で大韓航空の飛行機に搭乗となりました。深夜1時過ぎに離陸です。

…飛んでいる飛行機の窓から見えるのは真っ暗なホーチミン、そんな光景を見ながら私は、「あー、楽しかったなぁ」と機内で一人つぶやいてました。とうとう旅の終わりです。2回目のベトナム、今回は訪問先をちょっと増やして、メコンデルタの街にも足を伸ばしてみましたが、この国の新しい顔を見れたり、新たな美味しいものにめぐり逢えたり、有意義な体験がたくさんできて良かったです。そして何よりも、ヘウさんには大変お世話になりました。彼はたまにちょっと変なことをやらかしますけれど、それも含めて楽しい思い出ができましたよ。個人旅行ばっかりもいいですけれど、ベトナム人ガイドと日本人観光客が一対一となって喜怒哀楽を共にする、そんな旅のスタイルもなかなかいいもんだなぁって思えました。

また機会があれば、ベトナムには何度か訪れてみたいですね。…というか、機会があればという以前に、おそらくムリヤリ機会を作って行っちゃうかもしれませんな。だってこの国、面白すぎるんだもの。

  

  
いろんな顔を持つこの国の光景を、またいつか見に来たいですね

朝6時くらいに、飛行機は韓国の仁川(インチョン)国際空港に到着。空港内で数時間滞在し、今度はビジネスクラスの乗継便で日本帰国です。やっぱりビジネスは座席が広かった〜。

ベトナム旅行記。これにて完。


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