§2  同行者が見つからない (トズール)

チュニジア滞在3日目。今日から3日間のツアーが始まります。私が参加するツアーの旅程ですが、まずトズールの西に位置するセルジャ峡谷、タメルザ峡谷の村々(山岳オアシス)の観光を1日行います。次に2日目は塩湖を車で横断して、チュニジア南部のクサール・ギレンというところで1泊です。そして3日目はマトマタという街を通って、チュニジア随一のリゾートの島であるジェルバ島で現地解散…という具合です。砂漠のいろんな街を訪問するようで、楽しみです。

  
今回の旅行での訪問予定都市

さて、旅の出発前に言われた旅行会社の情報によると、今回のツアー参加者は私を含めて3人だそうで、ホテル前で待っていれば、4WDが私をピックアップにやって来てくれるとのことでした。

で、時間になったのでホテル前に出向いたのですが、なんとすでにホテル前は4WDの長い車列ができており、日本人の団体観光客、ヨーロッパ人の団体観光客、現地のドライバー、ツアーガイドなどで大混雑という状況でした。うへぇ、これってみんな砂漠ツアーに行くんでしょうか。これじゃあ、私が乗る4WDがどれだか全然分かりませんな。ちなみに今回私が参加するツアーは、日本語ガイドも英語ガイドもおらず、4WDの現地ドライバーだけが同行するというツアーです。なので自分はドライバー1人を探すことになるわけですけど…人が多すぎて見つけられません。おそらくドライバーの方から私を探しに来るだろうと思い、おとなしくじっと待つことにします。

…ところで、ツアーの同行客2人って、同じホテルに泊まってるんでしょうか? その2人も日本人とは聞いていますが、フロントを見回してみても団体ばかりで、2人組の日本人はいないようです。一体どういう人達が来るのか、その人達もここにやってくるのか、そういうことに関する詳しい情報は全然聞いてません。しまった、旅行会社からもっとちゃんと聞いとけばよかったな…。

しばらくすると、わんさかといるドライバーのうちの1人が私のところに近づいてきました。彼は自分のお客さんの名前を書いた紙を持っています。そこには「MINOVE」という文字が書かれていました。

「MINOVE(ミノベ)ってのはお前か?」と尋ねてきました(注:これ以降、ドライバーの発言は英語とフランス語がごちゃ混ぜの言葉ですが、私の推測で発言内容を書いてます)。こちらが「ノー」と答えると、彼はまた自分のお客を探しに、人だかりのところに消えていきました。…うーむ、参ったなぁ、いまフランス語で尋ねられたぞ。まさかここにワンサカといるドライバーって、みんな英語が話せないんじゃないんでしょうか? 私のドライバーももしそうだとしたら、これから3日間、コミュニケーションの面で大変ですよね。心配だなー。

しばらくまた待っていると、別のドライバーが私のところにやって来て、今度は旅行会社の名前を出してきました。それは私がツアーを申し込んだ旅行会社の名前でした。おぉ、イエスイエス! それって多分私です。あーよかった、ドライバー見つかった。

が、安心したのも束の間、彼はおかしな発言をしてきました。
ドライバー「何人だ?
私「???」
ドライバー「ツアーは何人なんだ?」
………オイオイ、ひょっとしてこのドライバー、今回自分が担当するツアーに何人が参加して、その人間が今どこにいるのかを知らないんじゃないだろうな? 旅行会社の名前だけをたよりにして探しに来てんのか?

私が「スリー」と答えると、「ふーん」と反応しやがります。うわっ、やっぱコイツ知らねーんだ。どうするんだ、他の2人が別のホテルだったらどうやって探すんだ?

この時点で、旅行会社に電話すればいいじゃん、と思うかもしれませんが、うっかり私、旅行会社の電話番号の書かれた名刺を紛失してしまって分からない状態になってました。さらに、このドライバーもその旅行会社の人間ではありません。この砂漠ツアー、私が申し込んだ旅行会社が別の旅行会社に依頼することで催行しているようなのです。ですからこのドライバーも電話番号を知らないようです。これは困った。

フロントに確認してみても、申し込んだ旅行会社の名前でこのホテルに泊まっている人間は、やっぱり私だけのようです。仕方ないので、ドライバーが所属している旅行会社から、私が申し込んだ旅行会社に連絡して他の2人を探してもらうことになりました。しばらく見つけるのに時間がかかるとのことなので、とりあえず私とドライバーは4WDに乗り込んでトズールの中心部まで移動することになります。ああもう、何でこんな面倒くさいことになるんでしょうか。連絡先を忘れた私も悪いですけど、このドライバーも自分の客をあらかじめ調べとけって話ですよね。…いつもながら、私の旅にはトラブルが多いですなぁ。

しばらく走って、トズールの中心部に入ります。ドライバーは、携帯電話で誰かといろいろ連絡を取り合いながら、トズールの街中を意味もなくグルグルと走り回ります。どうやら探すのに苦戦しているようで、なかなか見つかりません。

向こうからの連絡を待っている間も、車は街中をあっち行ったりこっち行ったりと不毛な移動を続けます。ここで、ドライバーが不可解な質問をしてきました。
ドライバー「お前が参加するツアーはガベスが最終目的地ってことでいいんだよな?」
私「……はっ??」
ドライバー「お前、ガベスに行くんだろ?」
…イヤイヤ、何言ってんの? 私が参加するツアーはガベスなんて街には行かないぞ。最終目的地はジェルバ島だぞ。私はあらかじめ旅行会社からもらっていた日程表を見せながらそう伝えます。すると、「何っ!? お前はガベスのツアーじゃないのか!?」と、スットンキョウな反応をしやがります。うわ、最悪っ! このドライバー、私のツアーのドライバーじゃないんじゃないか! 同じ旅行会社だけど違うツアーだぞ。このヤロウ、ツアーさえも間違えてやがる。なんてこった。問題がさらに悪化してドライバーは「はぁぁ…」と溜息です。アホウ、溜息つきたいのはコッチの方だ。

再びドライバーは携帯電話で連絡を取り始めます。イライラしてるようで、シャウトしながら会話してます。すごい形相で喋ってるので、臆病な私は多少ビビってしまいました。いや…こんなことになったのって、私のせいじゃないよね?

走りながら電話のやり取りを続けること数回、ドライバーが私に「OK」と言いました。どうやら、私の本当のドライバーが見つかったようです。おぉ、助かった。

車はトズール中心部のとあるホテル前で停車します。すると4WDがもう1台停まっていました。「あっちに乗れ」と、ドライバーは私の荷物を下ろし始めます。なるほど、あの4WDが私が本当に乗るべき車なんですね。で、その4WDに近づいてみると、その車のドライバー、なんと最初にホテル前で私に「MINOVE(ミノベ)か?」と尋ねてきたドライバーでした。え、どういうこと? ひょっとしてあの時のMINOVEって、私のことを探してたのか? オイオイ、だとしたら私の名前、間違ってんじゃねーか!

そのドライバーは「お前、MINOVEじゃないんじゃなかったのか?」といった具合で私に言い寄ります。バカ、MINOVEじゃねーよ、オレはINOUEだよ。UとVを間違えるならともかく、そのはどこからやって来たんだコラ。

まぁとりあえず本当のドライバーが見つかったということで、これ以上詰問することはせず、私はその4WDに乗り込みます。すると後部座席には、私のツアーの同行客お二人がすでに座っていました。あーよかった、同行者もすでに見つけていたんですね。これでようやく全員揃いましたよ。どうやらこのお二人も、私がここに合流してくるまでずーっと待たされていたようです。うわぁ、ゴメンナサイ。でも根本は私が悪いんじゃないから、どうか許してネ。

当初の出発時間から1時間以上遅れてツアー出発です。一時はどうなることかと思いましたが、スタートできて何よりです。…それにしても、自分の担当ツアーの人数や名前を把握してないなんて、チュニジアの現地の旅行会社ってかなりテキトーですね。今後、現地の旅行会社を利用するときは、慎重にならないといけないかも…。

さて、今回私と同じツアーに同行するお二人ですが、名前はTさんというご夫婦です。歳は私と同じくらいのようです。3日間どうぞよろしくです。彼らも旅好きのようで、話が合いそうですな。

4WDはトズールから西へ走ります。今日は山岳オアシスのあるセルジャ峡谷、タメルザ峡谷と呼ばれる地域を観光します。最初にレザー・ルージュと呼ばれる観光列車に乗ってセルジャ峡谷を遊覧する予定なのですが、ツアー出発が1時間遅れてしまったので、列車に乗り遅れちゃうかもしれないという事態に陥っています。なのでこのドライバー、車をすげぇ飛ばしてます。普通の道路なのに120km/hペースです。安全運転をお願いしたいところですが、こちらはフランス語が分からないのでドライバーに忠告できるワケもなく、延々と同じ速度のまま飛ばして行ったのでした。


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