§6  リニアに乗ってみた (上海)

中国滞在4〜5日目。この2日間は特に観光地を巡るということはせずに、のんびりと上海で過ごしてました。上海ってのは観光地が少ない街ではありますが、結構街歩きは楽しめるんですよね。

4日目には多倫路周辺のエリアに行ってみました。ガイドブックを眺めていたら、かつて1930〜40年代に日本人が多く住んでいた場所、いわゆる日本租界地があるとのことなので足を運んでみました。上海駅より北東の方向に魯迅公園という公園があるのですが、その公園のちょっと南の所にあります。戦前に魯迅などの文人が住んでいた所としても有名だそうです。さすがにもう60年以上も経っているので日本人が住んでいたという面影は少なかったですが、それでも、戦前(中華人民共和国建国以前)に造られたという居住区があり、そこに今も人が生活しているという光景が見れたのはなかなか貴重でした。私ったら、多倫路じゃなくて、その周辺の路地ばっかり歩いてましたよ。路地フリークにはオススメの場所ではないかと思います。それで、日本人街の名残が皆無かと言えばそうではなく、例えば多倫路と交差する通りの名前に「横浜路」なんてのがあったり、周辺のアンティークショップでは日本語で書かれたホーロー看板を売っている店もありました。ちょっとほしいかも…って思っちゃいました。


「横浜」の名が付く


多倫路周辺に存在する戦前の居住区
(名前上の数字は、1922年に造られたことを示す)

  
居住区内部 (こういうところばっかりぶらついてた気がする)

また新天地にも足を運んでみました。あまりにも有名すぎるショッピング&グルメスポットですが、一応ご紹介。この付近はフランスの統治下だった名残で、洋風の古いレンガ造りの建物が立ち並んでいます。新天地は、その租界時代からあった建物をショッピングエリアとして活用しているのです。最初、このショッピングエリアを造るために建てたものだと思いこんでましたが、どうやら違うようです。ショッピングやグルメに興味がなくても、その建物群を見たり細い道を歩いてみたりするだけでもなかなか面白いものです。この場所で営業している店のお洒落さと、この建物のレトロさがうまくマッチしているんですよ。他の観光客もこの路地の光景に魅了されて、カメラを手に構えながら歩いてました。私もたくさんの数の写真を撮っちゃいました。こういう場所にある喫茶店でお茶をすする、なんてのもやってみるといいんじゃないですかね。…ただこの新天地、旅行者の間では、わざわざ中国に来てまで、こんな洋風な雰囲気の場所に来るのはどうなのか、という否定的な意見が挙がる場所でもあります。ですから、実際気に入るかどうかは人それぞれですね。私はこういうの嫌いじゃないですけど。

  
新天地

時間は流れ流れて中国滞在5日目の昼過ぎ。帰国便が夕方発なので、とうとう上海を経つ時間になってしまいました。うー、5日間ってやっぱ短いよなぁ。ホテルをチェックアウトし、上海浦東国際空港へ向かいます。

私の持っているガイドブックは情報が古かったのですが、どうやら地下鉄2号線の龍陽駅から上海浦東国際空港までの区間に、2003年12月、リニアモーターカーの路線が開通したとの情報を入手。というわけで、せっかくですからそれに乗って空港へ向かおうと思います。

まずはいつものように地下鉄を利用して龍陽駅に向かいます。ところで、これまで上海の地下鉄については述べてきませんでしたが、この地下鉄ってのも、日本とは異なる光景が見れて興味深かった感があります。地下鉄のシステムそのものは日本と同じですけど、それを利用する現地の人や、駅員さんなど、人間に注目してみると文化の違いというものが感じられたのです。


上海の地下鉄 (写真は1号線の車両)

まず驚いたのが、利用する人たちによる熾烈な座席の争奪戦ですね。日本だと、列車が駅に着いてドアが開いたとき、まず降りる人を優先させるのが通常です。しかし、こちらでは、座席が取りたいがために、降りる人を押しのけて乗車する人が多数います。そして車内をダッシュして席に着席しようとするのです。それで、この争奪戦の一番熾烈度の高い駅が上海火車站。地下鉄1号線の始発駅なので、電車がホームに入ってくるときは、座席がすべて空いている状態です。それでいて地上鉄道の上海駅に隣接する地下鉄駅なので、乗客数が多いです。そういう状況下ですから、ドアが開いたときの殺到ぶりといったらもう異常なのです。私が乗り口の一番前に並んでいても、横入りして乗り込むヤツがいますからね。最初のうちはいつも呆気に取られてたんですが、後半になると私も争奪戦に参加し始めて、「絶対入れさせねぇ」と自然とガードを組むようになるわけです。そしてドアが開いた瞬間に、そいつを押さえこみながら車内に駆け込む……さすがにもう5日目ともなると慣れましたな。

あと、もうひとつすごいと思ったのが、駅員の態度が日本ではありえないということですね。とある駅で、列車のドアが閉まろうとしたときに、大きな荷物を持って駆け込んだ乗客がいました。すると、大きな荷物がドアに挟まってしまいました。そのとき駅員がやって来てドアを開けます。それで、てっきり乗客を介抱でもすんのかと思ったら、駅員はその乗客に叱責し始めました。さらになんと乗客の肩をボンッと押して突き飛ばし、大きな荷物を足で車内に押し入れやがったのです。乗客は車内に倒れこみます。そして乗客が文句を言う間もなく、ドアはそのまま再び閉まり、列車は発車してしまいました。…オイオイ、マジかよって感じですね。駅員の方が立場が上だなんて、これって社会主義の影響なんでしょうか? まあとにかく、日本では体験できないようなことを地下鉄でも体験できたのでした。

さて列車は龍陽駅に到着。リニア専用のターミナルへ向かい、チケットを購入です(普通席・片道75元)。プラットホームへ行く途中にはなんと荷物のX線検査がありました。おお、さすが、国家プロジェクト規模で作られたものだけあって、セキュリティ厳しいですねぇ……と思ったら、厳しかったのは荷物だけで、ボディチェックは一切されませんでした。オイオイ、もし私がポケットに小型爆弾でも抱えてたらどうすんですか。まったくもって中途半端なセキュリティ体質ですな。

プラットフォームはデザインや設備にこだわりを持った造りになってました。中国の急速な経済発展を強調したいかのような造りです。これでもかと言わんばかりに、防犯カメラの数が多いです。デザインもヨーロッパあたりの国を意識してるんじゃないでしょうか。


リニア線のプラットホーム

しばらくして、ホームにリニアが到着。リニアってもっとでかい車体なのかと思ったら、日本でよく見る特急列車とあまり変わらないんですね。車内もまさに特急列車とよく似た雰囲気でした。

数分後、空港に向けて出発です。最初は、なんだ新幹線くらいのスピードしかねぇじゃん、と思ってたのですが、後から急に速くなりました。ぬお〜、これは速い! 明らかに車窓の移り変わりのスピードが違います。車内には電光のスピードメーターが備え付けてあるのですが、431km/hと表示されていました。すげぇ、これがリニアの威力かぁ、と純粋に感激してしまいました。


リニアの車両


最高速度の瞬間

しかし少々残念なことに、最高時速である431km/hがでたのはわずか20〜30秒程度で、その後すぐにまた新幹線くらいの速度に戻ってしまいました。現在開業している路線の区間距離が、最高時速を長時間出すほど長くはないからです。…うーむ、もう少し長く堪能したかったですねぇ。でもきっと今後、路線を拡張するでしょうから、十分期待できる乗り物と言えるでしょう。

リニアは空港に到着です。このリニアの駅は出発ターミナルと直接つながっているので、そのままカウンターにチェックインです。…さて、とうとう旅の終わりですね。ひさびさの海外での単独行動でしたが、まあ何とかうまくやり過ごせたのではないかと思います。今回上海には初めてきましたが、いいですねぇこの街。急速な経済発展の影響からか、近代的なビルが建ち並ぶ街ではありますが、しかしながら街中の路地裏や近郊の水郷古鎮などを歩いてみれば昔からの中国の姿がちゃんと見れるので、いまでも十分楽しめる所だと思います。観光客のエゴと言われるかもしれませんが、これから街の再開発を進めていく場合でも、こういった光景は残していってほしいものだと思いますね。以前テレビで、2008年の北京五輪開催に向けて、北京の居住区が再開発の対象となっており、住人たちがその流れに翻弄されているという特集をやってたことを思い出しますが、観光のためだとかそういう範疇を超えて、住人にとっての今の生活への愛着を守るという意味でも、私が思ったことは重要なんだろうなと感じます。

中国にはまた来てみたいですね。水郷古鎮ももちろんながら、他の街にも行ってみたいです。国土が広く、それぞれの場所で色が違うでしょうから、その多様性を楽しめたら、と思います。福建広東などの華南エリア、四川青海のチベット文化圏、また新疆などのイスラム文化圏も主な候補ですね。…ただ、今度中国に行くときは、ある程度中国語の単語を覚えてこようかと思います。食事するときにメニューさえ発音できなかったですからね。あ、あと、次回くるときは、労働節だとかそういうピーク時は避けてこようかと思います。本当にあの混雑は参りました。


今回の旅行での訪問都市

出発ターミナルでは、新型肺炎拡散防止のための体温チェックが行われてました。熱っぽいなどの自覚症状がないので、何ら問題ないはずなのですが、やっぱりなぜかこういうのはドキドキしちゃいますね。まあ、難なくパスして帰国便に搭乗できました。夜8時に日本に無事帰国です。

中国旅行記、これにて完。


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