[和歌山県]

「紀の松島巡り」で見ることができるラクダ岩
名古屋駅発の特急は伊勢湾側の紀勢本線を南下していく。和歌山県に入り、新宮を越えたその先に勝浦温泉はある。南紀白浜温泉と並び、和歌山を代表する温泉のひとつだ。紀伊勝浦駅で降りてみると、駅前の商店街は静かでのんびりとした雰囲気である。小さな街の温泉郷といった感じだ。この温泉郷も不況の煽りを受けているようで、観光客が最盛期に比べてずいぶん減ったと土産物屋の店主は言っていた。それでも週末は、温泉好きの客で賑わっていたように感じた。勝浦温泉は本格派の硫黄泉。ツンとした硫黄の臭いは、まさに温泉にやって来たという気分にさせてくれる。

勝浦港周辺は「紀の松島」と呼ばれるように、自然によって創られた奇岩が多く見られる。碧い海に浮かぶ130もの奇岩は風光明媚な光景であり、港からは「紀の松島巡り」という奇岩を見る遊覧船ツアーが催行されている。乗船した日は波が高いということで、沖合には出ずに短いルートを廻ることになったが、それでもラクダ岩やライオン岩など、変わった岩の数々を楽しめた。

 
勝浦は漁業が盛んである
この一帯は漁業が盛んで、特にマグロの漁獲高が高い。また隣の太地町では、調査捕鯨も行っており、温泉旅館では鯨料理を堪能することができる。温泉旅館からの帰り、港近くの土産物屋に立ち寄ったのだが、そこでも鯨を使ったお土産がずらりと並んでいた。土産物屋の店主が言うには、鯨だけでなくイルカを食することもあるという。「イルカなんて食べちゃってもいいんですか?」との観光客の問いに、「え?何で食べたらアカンの?」と返していた。あっけらかんとした回答だった。しかしこれこそが純粋な食意識なのだろう。諸外国の環境活動家がイルカや鯨の漁に対して口を挟んでくる中であっても、彼らは必要だから食べるのであり、必要だから捕獲するのである。純粋な食意識、純粋な漁業意識を堅持していることに敬意を表したい。

熊野那智大社

右後方に那智の滝が見える
紀伊勝浦駅前からは那智の滝や熊野那智大社への路線バスが発着している。これらのスポットや参詣道などは「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録されている。目的地へ向かう途中のバスの車窓からは、早くもはっきりと那智の滝が目に入った。なるほどさすが日本三名瀑に挙げられるほどの大きさなのだろう。飛瀧神社の御神体として奉られている那智の滝、実際に神社の境内に設けられた滝見台に上ってみると、その壮大な姿に圧倒される。いつまでもその細かな水の飛沫を受けているうちに、日ごろの疲れが取れたような気がした。まさに自然のリラクゼーションだ。

温泉あり、海の見所あり、山の見所ありのこの地域は、もっとじっくり時間をかけて味わいたい場所のひとつだった。今度来るときまでには足腰を鍛えておいて、次は熊野古道をハイキングでもしてみようか。


滝見台から見た那智の滝
【2009年5月記録】

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