三つ、論文「露国に対する冬期作戦上の一慮」(以下「一慮」)
明治三六年一〇月、山形歩兵第三二連隊中隊長に転属した福島大尉はロシアに対する開戦決定(明治三七年二月四日)とそれに伴う論文提出要請を受け、表記を、師団の動員開始前に、間に合うよう完成し提出した。露軍に学び、越え、勝つ視点で、最も意を尽くして調査研究した2点、即ち露土戦役の厳冬期バルカン山越えからまなぶべきものと露国野外要務令との差異(露軍にあって日本軍にない規定)を論述し、加えて冬季戦の倍加する困難に克って、露軍に勝つ方略を提言した。露軍に勝つポイントとして露土戦役から露軍は甚だしい困難で弱点を呈す。準備不十分で作戦を決行し、大損害を蒙る。不慮の故障による過失を生じる弱点有りと三っを挙げ評論している。全体を通じ、兵を護り、兵に役立つ福島大尉ならではの実際的な記述である。偕行臨時増刊第一号に掲載(明治三七年11月号)され全軍将校に配布された。すでに戦いに突入した陸軍の未知を拓く極めて有用なものであった。