真理に媚びず 虚偽を蔑まず 知識に諂わず 無知を侮らず



  はらぺこ参観

のちにわかったことである。
女性は教員で、管理栄養士の資格をもっていた。
いわく、
さいきんのこどもたちは、食にたいして興味をもたない、らしく、
教員で管理栄養士の女性はどうしていいのかわからないふうであった。
いろいろとさぐっているのだけれど、これぞという対策がおもいうかばないというのであった。
女性のなげきに、
間髪いれず、
「そりゃぁ、空腹をしらねぇからさ。」
白髪のおじさんはいった。
「水とたべもの。それがみんなにいきわたっていれば、だけど、な。あらそいごとはすくねぇんじゃなかろうか。」
という。
「世界をみたわけじゃぁないけれど、あらそいの根っこには、この、水とたべもののふつりあいがかならずありそうなきがするけどね。」
女性は、てのひらをおしりにしきながら、ううんと首をかしげる。
「食育なんていうけれど、空腹もしらんのに、ことばだけおせぇても効果ないしな。」
女性はうでくみをしてくびをもたげる。
「空腹と、そのさきにある、飢餓について、しっていれば十分なんじゃねぇだろか。」
おじさんはいう。
「おなかがすくと、ひとはどんなふうになるか、それを体験してみれば、たべることでしか栄養をえることができねぇ、ひとってもんがよおくわかるんじゃねぇだろか。」
女性はくちびるをとんがらせ、また、ううん、とうなった。
「はらぺこ参観さ。そして、授業のしまいに、みんなといっしょに、天気がよければ、おもてにでてさ、しおむすびいっことたくあんひときれ。急須で淹れたほうじ茶でも用意しておけば、じゅうぶんさ。」

教員で管理栄養士の塩谷女史は、じもとの教育委員会と具体案をはなしあっているという。
もちろん、おじさんも参画してもらっているとのことである。





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