マザーよし、マザーテレサ
わたくしのおばあさんはすでに亡い。
顔、姿がマザーテレサににていた。
しずかなたたずまいであった。
娘である義母は、おばあさんによって苦労をしいられたとおもっている。
なにかとあたりがつよかった。
いいかた、ことばづかい、にきびしさを感じた。
あるときわたくしはそのわけをつれに訊いた。
わからない。
愛情のうらがえし、なのだろうか。
後妻にはいったらしいこと。
その旦那にさきだたれたこと。
長女である義母はそのために学校をやめなくてはならなかった。
怨念もあるのだろう。
にがにがしさをかみしめたのだろう。
理不尽をのろったのだろう。
あるときおばあさん、わたくしにズバリと訊いてきた。
訊きにくいことであるのだろう、
おばあさんいがいにそれをたずねるひとはだれひとりいなかった。
率直。
わたくしはおどろいた。
わたくしはやまいに臥(ふ)すおばあさんの手をにぎりしめた。
だあれも手をにぎるひとはいなかった。
ちからをいれると、反応がかえってきた。
わたくしはおばあさんが好きであった。
ピーナッツのはいった味噌をなんべんもなんべんもこしらえてくれた。
マザーテレサに親しみを感じる。
わたくしは亡きおばあさんを、
マザーよしと呼んでいる。
ただ、声にはださない。
|