細野不巡 スタジアムで会いましょう
2007年
敬称略
2007年7月5日
  アジアンカップ2007、代表合宿、練習試合をみて その2

 7月3日、アジアンカップ2007、代表合宿、練習試合、対明治大学をみる。
 
 痛恨。
 播戸竜二選手が練習試合で右太もも裏を傷めた。
 代表メンバーからはずれた。
 たとえサブスティテュートでも、ベンチでたたかえる、かけがえのない選手。
 それが播戸竜二。
 嗚呼。
 
 練習試合後半。
 試合は膠着する。
 両チームとも決定機をつくれない。
 学生はシュートをすることすら忘れてしまった。
 これでは練習試合の相手として不適格である。
 そう感じていた。
 
 その瞬間。
 敵陣ペナルティーエリアで中村俊輔選手にボールがわたる。
 その左横約5メートル、高原直泰選手が声を発す。
「俊、まえ。」
 すでにトップスピード。
 体ひとつ抜けだした。
 フリーだ。
 中村俊輔選手の左足から正確無比なロビング。
 高原直泰選手は次のアクションを想定したトラップでキャッチ。
 まるで軽業師。
 ボールが枠のなかへころがりゆくとき、ゴールキーパーはまるでスローモーション画像をみるかのような錯覚をえたにちがいない。
 無駄な力の一切ないゴール。
 簡潔。
 まさにファインゴール。
 ヨーロッパでたたかうとはつまり、こういうことか。
 まさにアートである。
 
 このゴールでみえたものがある。
 それは中村俊輔、高原直泰両選手のチームだということ。
 イヴィツァ・オシムですら、あたらしい才能を見出すことは至難であるということ。
 その証左でもある。
 
 前田遼一選手を信じきれず、いま播戸竜二選手がたおれた。
 伊野波雅彦選手を、負け試合の最後の5分、経験をつませるために呼んだのか。
 いいや、そうではあるまい。
 
 イヴィツァ・オシムは高原直泰選手のワントップ、シャドウ3のジェフ千葉スタイルで挑もうとしている。
 そのときのシャドウ3のフォロワーに伊野波をつかうつもりなのだ。
 そのためにかれを選ぶ。
 
 イヴィツァ・オシムは初戦対カタール、2戦目対 U.A.E. にすべてを賭している。
 緒戦が勝負。
 それはゆるぎない。





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