スタジアムで会いましょう

  イヴィツァ・オシムと打ち出の小槌
 
 イヴィツァ・オシムさんは打ち出の小槌をもっているにちがいない。
 そのかれが代表チームの監督になる。
 歓迎すべきじゃないか。
 かれは打ち出の小槌をふるって、あまたのマジックをおこすにちがいないのだ。
 ・・・だって、あの弱小チームであるジェフ市原千葉を優勝させた。
 それこそまさにオシム・マジックじゃないか。
 
 イヴィツァ・オシムさんについて多くのひとが抱く先入観とはたぶんこの域を出まい。
 
 短絡。
 希望的観測でしかない。
 これこそがニッポンの悪い癖。
 それにすら気づかない。
 
 無反省がすべてを助長する。
 
 オシムさんに成功してほしいとはおもえども、期待してはいけない。
 かれは打ち出の小槌なぞ、はじめから持っていないからである。
 かれはいつもいっているではないか。
 監督のできることなどたかがしれている、と。
 
 クラブチームの監督から代表チームの監督になる。
 それだけでもプロのコーチにとっては成功したといえるのである。
 かれはニッポンで成功したのである。
 ではいまなぜイヴィツァ・オシムは代表監督になるのか。
 その理由はただひとつ。
 かれはチャレンジすることに意義を見出すからである。
 それがニッポンにきたゆえんでもある。
 
 オシムさんが指揮したジェフ市原千葉をみてほしい。
 すでに結果はでている。
 3年もいながら、1度だけカップ戦で優勝した。
 それとも、
 たった3年でカップ戦に優勝したのか。
 
 間違ってはいけない。
 ジェフ市原千葉の選手諸君が奮闘したから優勝したのである。
 かれらが優勝を欲したから戴冠したのである。
 
 イヴィツァ・オシムさんはプロのコーチのひとりでしかない。
 それにかれは日本語に堪能ではない。
 
 かれにつづくアシスタント・コーチ候補生のだれもがオシムさんに一目おいている。
 これはいままでにないことである。 
 重要なのはリーグと代表チームとの風通しがよいこと。
 クラブで活躍する選手がすみやかに代表チームで試される。
 その経験が翻ってクラブに還元されていく。
 そのスムーズな情報の往来があればいい。
 
 代表チームは選手を育てる場ではない。
 それはクラブの仕事である。
 代表チームは、あくまでも試す場でしかない。(07.14.06)





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