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これは事件である。おそるべし、ヴァンフォーレ甲府
3月11日。
於フクダ電子アリーナ。
千葉2-2甲府。
試合開始の笛がなる。
その瞬間、堰をきって、怒涛の攻撃がはじまった。
攻撃の主は菜の花色のユニフォームを身にまとうホームJEF千葉ではなく、FC東京に似た配色をチームカラーとするJ1新参者であった。
それは驚きというよりも不快ですらあった。
あたまは混乱し、言葉でいいあらわせない状況にとまどった。
常識という概念をあざわらう。
それほどに強烈なアタックをしかけた。
チャレンジャー精神で横溢する、この集団は攻撃こそが防御。
5人のアタッカーに右サイドバックが絡む。
眼のまえでくりひろげられているフットボールは、前代未聞にして世界的にみてもまれなる攻撃サッカーであった。
策ではない。
大木武は公言をはばかる。
が、あの大胆は一朝一夕にしてできるものではない。
将たるものの揺るぎない信念、そして周到な準備がなければならぬ。
トータルフットボールがリヌス・ミケルスの意図でうまれたものではなく、トー
タルフットボールを体現しうる選手諸君がたまたま数人いたからできた。
その一定期間、オランダ人たちがくりひろげていたサッカーをトータルフットボ ールというにすぎない。
トータルフットボールが概念ではなく、たんなる偶然の産物であったかもしれないことを考え合わせると、大木武は本心を語っているにすぎぬのかもしれない。
しかし、これは事件である。
可能性の開花である。
あたらしいフットボールサッカーが極東の、それも首都東京に近いとはいえ、一地方でしかない甲府で開花した。
アイディアの具現にはスケールの大小はいっさい関係がないことの証明でもある。
それは甲州が世界的な葡萄として萌芽する時をいつにする。
これも偶然のなせるわざか。
ヴァンフォーレ甲府とJEF千葉の差をミクロ的にみれば、ヴァンフォーレ甲府のバレーことジャデル・ヴォルネイ・スピンドラー選手が少 ないチャンスを得点に結びつけた一方、JEF千葉、巻誠一郎選手が数多くのチャンスを決められなかった。
この差、ちがいでしかなった。
JEF千葉がことし補強するべきはフォワード、それしかなかったはずである。
いまからでもまにあうのではないか。(03.12.06)
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