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バリアー その7 無駄について
ゴールまえに速い縦パス。
追いつけない、とおもったのであろう、その子はボールを追うのをやめた。
ボールはゴールライン上でとまったかにみえた。
防禦側にいた著者は必死にボールをクリアしようとこころみた。
ボールはぎりぎりラインのそとに出た。
試合後、その子にたずねた。
「どうして追わないの。」
「追っても、無駄でしょ。」
たしかにボールはゴールラインをわった。
無駄か。
無駄ね。
著者はおもう。
無駄ってなんだろう。
無駄。
いってしまえば、きみの人生も、ぼくの人生も、無駄だといえば無駄。
この世に生きているひととて、すべて無駄だといえば無駄。
ただおなじ時代を生きるひとのなかには、無駄を無駄だとおもわないひとがいて、
そういうひとがひとりでもいるから、そこに妙な感動がうまれたりして。
無駄について考えることも無駄なのだろうし、
それならば、無駄かどうかはどうでもよくって、
ただあの場面で、ボールをつかまえられたら、やっぱ、いいわけで。
あと50センチ、ゴールに近い位置にいれば、縦パスに反応できたわけで。
無駄かどうかが問題なのではなく、考えるべきことはその子のポジショニングである。
ゴールするのがフットボール。
得点すれば、たのしいし。
みんなでよろこびをわかちあえたら、もっとたのしいし。
無駄かどうか。
無駄という言葉をつかうか、どうか。
きみはどうであれ、
著者の辞書からは、無駄という言葉を抜取らなくてはなるまい。(4.15.05)
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