岩井不巡 スポーツコラム
スタジアムで会いましょう

  バリアー その4 あいさつの強要

 かれらを同輩だ、としながらも、著者のこころは嘘をつく。
 
「あいさつもできないのかい。」
 朝、あはよう、といってもうんとも、すんとも、返事がない同輩にむかい著者は大きな声でそうかえす。
「あいさつぐらい、しようじゃないか。」
 コーチもみんなにむかってそういった。
 
 以前、ムツゴロウさんの動物番組で、猫の特集があった。
 猫は犬とちがい、反応がないから嫌いだとするひとにたいして、猫とはどういういきものであるか、かれら流の反応とはどういうものであるか、猫のあいさつとはどういうものか、を教えてくれた。
 猫にはしっぽにその秘密がかくされていた。
 
 著者は考えてみる。
 ひとの感情はどこにでやすいのだろうか、と。
 目ではなかろうか。
 
 それからは文句をいわないようにした。
 なんらかの反応があればいい。

「おはよう。」
 著者が同輩にいうのは、著者の勝手でしかない。
「おはよう。」
 ということが、
「おはよう。」
 のおかえしを強制していたにすぎなかった。
「元気かい?」
 元気でなければ来るものか。
 
 あいさつは強制するものでも強制されるものでもない。
 著者には文句をいう資格など、はじめからなかったのである。
 
 問題は問題がある、と感じ、おもっているひとの問題とするところに問題がないか。
 そこから観察していくべきなのかもしれない。(1.11.05)





目次へ
fujun_sports