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最高の日本製、イチロー
あっさりと、記録をぬりかえた。
記録はやぶられるためにある。
とはいえ84年ぶりだという。
イチローさんおそるべし。
そのイチローさんですら、くじけそうになった時期があった。
オールスターまえ、負けてばかりのチームにあって、かれイチロー選手の気持ちはその不甲斐なさに、
「なぜだ。」
自問をくりかえす。
それは自身のプレーへの集中をそぐばかりか、他の選手のプレーへの干渉を高めた。
けっしていいことではない。
かれは舌足らずの表現になるのを恐れ、よりいっそう貝になる。
とどのつまりプレーに精彩を欠く、まさにその瞬間。
そのとき、かれはゆっくりと顔をあげた。
するとかれのまわりにはかれのプレーをたのしみにしているファンがいた。
どん底のシアトル・マリナーズにあって、イチロー選手の真摯な姿勢に共感し、尊敬する大勢の観客がいた。
かれらはイチローさんに笑顔で手をふる。
マリナーズに優勝はない。
けれど、自分にできることならたくさんあるじゃないか。
自分にできることをする。
Yes, I can。
オールスター戦。
超一流がこぞる。
そこで超一流の選手が、超一流の選手から得た刺激はきわめてシンプルなものである。
それは、自分のプレーをする。
たとえどのような状況になったとしても、全力をつくす。
そのことがどれほど大切で、しかもいかに困難をともなうことか。
かれらの笑顔のうちに潜む、強烈なファイティング・スピリッツを感じとることができた。
それで十分であった。
そこからだよね、イチロー選手が変ったのは。(10.5.04)
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