岩井不巡 スポーツコラム
スタジアムで会いましょう

  阪神タイガースもニッポン代表も負けすぎ

  
日本14勝韓国38勝15分
  阪神559勝巨人783勝53分

  ベルギー15勝オランダ19勝12分(1954年以降)

 スポーツを肉体のぶつかりあい、と評するのはまちがいだ。
 肉体は所詮脳髄がつかさどるものだから。
 肉体のぶつかりは、見たままでしかない。

 たとえば、代表チームが高校生のチームと試合をする。
 それぞれのポジションにつく。
 そのとき、選手の顔はリラックスしている。
 こどもたちに怪我をさせたくないという親心から、接触プレーを避けるだろう。

 視野は広く、見とおせており、パスも正確にとおる。
 ゴールへは最短コースをたどり、ゴールのやまを築く。
 結果、15対0になる。

 相手が高校生だからこの結果になる。
 たしかにそうだ。
 が、本当は、このときのリラックスが、意識の集中を高めているからにほかならない。

 相手がイタリア代表ならばどうか。
 このような心境にはなれまい。
 が、このような心境になれなくてはいけないのである。
 なれないのではなくて、なろう、と努力、訓練しないだけなのだ。
 そこがいけない。
 ただ、いけない個所は改善すればいい。
 いけない個所を改善するには、いけない個所はどこか、を認めることからはじまる。
 意識してこそのリラックス方法をあみださなくてはならない。

 ハンス・オフトはダイナスティーカップ韓国戦をまえにして、韓国チームのメンバー表を自軍選手全員のまえで、こともなげに破り捨てた。
 その意味は。

 オランダよりも格下とおもわれているベルギーがオランダとつねに互角に戦うのは、オランダにだけは負けられない、オランダになぞ負けてたまるか。
 この根本をわすれないからだ。

 すくなくともオランダ人ハンス・オフトは日韓戦を、ベルギーとの戦いの際、多くのオランダ人がもつであろうメンタリティーに近いものを喚起し、たたかったであろうことは想像に難くない。

 隣国にアルゼンチンという強烈なライバルをもつラモス瑠偉にも、同質のメンタリティーがある。

 ひとりニッポンだけがそれを忘れている。
 戦うまえに、すでに負けている。
 だから戦績はかんばしくない。

 いつも胸をかりるから負ける。

 試合に勝つということは、勝ちを信じて疑わない選手がチームにどれだけいるか、負けるはずがないとおもう選手がなんにんいるか。
 その数、その濃度で決まるかもしれないのである。

 ひとあわふかせてやる、でもいい。
 こらしめてやる、でもいい。
 戦う相手によって、戦う状況によって、この基本をかえればいいのである。
 その結果どうであったか。
 濃度は濃いままであったか。
 薄くなってはいなかったか。

 ワールドカップ予選では、絶対に負けられない試合がでてこよう。状況によっては、絶対に負けられないという意識を開放し、負けなければいい、最低でも引分け、にもちこむことが最善の選択になる場合もでてくる。

 一見、消極的にみえるが、意識して引分けに持ち込めるようになれば、これを相当に評価しなくてはならない。
 それはチームのハートの強さが顕われている証であり、いわば、負けない力がつきつつあることを意味するからである。

 負けない力をもつチームのみが、手強いチームになりえる可能性をもつのである。

 引分けを、勝ち点1を、もっと大切に評価するべきである。(9.17.03)




目次へ
fujun_sports