岩井不巡 スポーツコラム
スタジアムで会いましょう

  恕せテツ、柱谷哲二さん

 テツ。
 柱谷哲二さん。

 なぜ、Jリーグのどこもかれの獲得に手をあげなかったのだろう。
 いまもって残念でならない。

 かれは自著で、年俸の低いところではプレーしない、との噂が一人歩きしたこと。
 選手としてのオファーはなかったこと、を教えてくれた。

 所詮わが国の生理とはそんなものだ。
 実態を確かめもせず、実態よりも、実態のまわりに漂う、わけのわからないほうを疑りもしない。
 鵜呑み。
 いとも簡単に信じこむ。
 しかも、それを判断の材料にしてしまうとは!

 だから肝心なとき、肝心なところでへまをしてしまう。
 そのずっこけっぷりの悪さ。
 へっへっへっ、と笑っては水に流してしまう。
 水に流しては忘れ、しばらくするとおなじような現実に遭い、困難に直面する。
 と、また、おもいだす。
 おもいだすだけまだましか。
 また水に流して忘れさり、またもや困難に直面するとおもいだし・・・、そうしてそれを延々とくりかえす。

 これでは通用しない、これでは通用しないぞ、となんべんもなんべんもなんべんもなんべんも繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し教訓として提出されているにもかかわらず!
 歴史からうる教訓は、人は歴史からはなにも学ばない、と利いた風なことをいう。
 それを問いもせず、なにもせず、肯じる積極さもなにもなく、ただぼうと、ときがたつままぼんやりとしたままだ。

 テツのプレーは好きじゃなかった。
 へたくそで、ぎこちない。
 洗練されたというにはほど遠く、どちらかといえば、泥臭い。
 ぶつくさ文句をいっていやがる、程度の認識でしかなかった。
 テツの代わりに上手な選手を入れればいいのに、ともおもっていた。

 だが、恕せテツ。
 ぼくはまちがっていた。

 結局、上手なひとが集まったとしても、そのチームが勝つとはかぎらないんだね。
 たとえ上手でも、いざ本番というときに、力を出せないのなら、はじめからへたくそでも、ハートが強い選手のほうがいいんだね。
 たとえ、びびっていても、びびったふりを見せるのが下手なテツのほうが数段ましなんだね。
 気持ちが弱いのを棚にあげて、言い訳をするくらいなら、むしろ、いつもとかわりない水準でプレーできる柱谷哲二のほうがだんぜんいい。

 いまのJリーグに、いままでのJリーグにだって、こんな人いますか?(10.1.03)




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