*だきしめる*

夜の戦闘……苦手な人は沢山いる。モンスターが凶暴化するからだ。
だが、そうではない理由で夜の戦闘が好きではない人物がいた。
獣人王の一人息子、ケヴィン。彼は今、ローラントとアルテナの王女と共に旅をしていた。
……旅をしているのは良いのだが。
「わ〜〜〜〜!助けて〜〜〜〜〜!!」
モンスターが全滅した後に響く悲鳴。それを聞いてアンジェラはため息をついた。何が起こっているのかはもう散々知っている。
「リース!ケヴィンが嫌がってるでしょう?!」
「え〜……でも、気持ちが良いんですもの」
獣人と人間のハーフであるケヴィン。夜になると獣人族の血が騒ぐらしく、見事な獣人に変身する。獣人状態のケヴィンは大変強いので、何の心配もいらない所なのだが、一つ、大きな問題を抱えていた。
ローラントの姫君、リースがケヴィンの獣人姿を事の他好きなのだ。変身した時から抱きつきたくて仕方が無いらしく、戦闘が終了すると必ずといって良いほど抱きつくのだ。
リースは美人だし気品のある姫である。普通の男なら嬉しいのかもしれないのだが、相手は純真無垢を絵に描いたようなケヴィンなのである。彼は抱きつかれる理由がわからず、ぱにっくになるらしい。
つまり、ケヴィンにとっては苦痛でしかない訳で。
しかし、リースにとっては戦闘のご褒美みたいなものである訳で。
パーティのお姉さん分、アンジェラとしては一つの結論を出すしかなかった。

「という訳で、今日から移動は昼間だけにすることにするわ」
アンジェラの突然の提案にケヴィンとリースは目を丸くする。
「なんで?!オイラ、夜の方が強いよ?!」
「そうよ、アンジェラ!可愛いケヴィンが見られないじゃない!」
……リースの意見は激しく間違ってるわ。
アンジェラは頭を掻く。大体、そのケヴィンの獣人化が問題な訳で。
「いいから、昼間よ、昼間!」
そう強引に決定したのだった。

それから昼間の行軍が始まった。夜になると、すぐにキャンプで休む。
今まで、ケヴィンの戦力をあてにして夜の行動が多かったので、最初は慣れるのに苦労していたが、それもだんだん適応していった。

しかし。なんだかケヴィンもリースも元気が無い。
アンジェラも頭を抱えた。
原因は昼間の行動ぎりであるという事だろう。
とりあえず、リースが元気が無いのは獣人ケヴィンに会えないからに決まっているので聞かないことにするが、ケヴィンの場合は気になる。
「ねえ、ケヴィン。元気が無いけどどうしたの?」
アンジェラの言葉にケヴィンは救われた様な顔をした。
「アンジェラ!オイラ、すごく悩んでるの」
「なになに、お姉さんに話してごらんなさい?」
上手い具合に聞き出せそうなので、アンジェラは身を乗り出して相談に応じる。
「あのね、リース、元気ないの。オイラが抱きつかれるの、嫌がったからかなあ。
リースが悲しむなら……オイラ、我慢する。だから夜も動こう?」
アンジェラはケヴィンの優しさを改めて実感する。本当にこの子は優しい子だ。
「分かったわ。これからは状況に応じて戦っていくわね」
アンジェラの笑顔に、ケヴィンは顔を輝かせた。

それから……夜の行軍でケヴィンの悲鳴は止まらなかったが、リースはすっかり元気を取り戻し、その様子でケヴィンも元気が出ているらしい。
しばらくの空白がよい結果をもたらしたのだと、アンジェラは自分の采配を褒めた。

だが。
「いやああああああああ!!!!!!」
ケヴィンの絶叫が響いたのは、リースの最後のクラスチェンジの時だった。
彼女の選んだクラスはフェンリルナイト。
その全身には狼の皮を纏っている訳で。
今度はケヴィンがリースから逃げ回る日々が始まったのだった。

「……もう、あたし知らな〜い」
アンジェラは匙を投げてしまった。


コメディのつもりのリーケヴィです。
どうでしょうか。今までシリアス、ほのぼのぎり書いてきたのにこの展開!
これもリーケヴィにはありな要素ということで宜しくお願いします(><)!

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