26. パンドラ

それは遠い昔の話
パンドラという女性が開けた箱には
災厄と不幸と悪が詰まっていて
箱を開けた瞬間に世界に飛び出したのだという

そして、その箱には「希望」が残っていたと


私は穏やかな農村に生まれた
家族も村の人達も自然の恵みに感謝し
何よりも敬意を表していた。

恐れるものは自然
感謝するものは自然
そして、何より大切なものも自然だった

今日は何の花が咲いたとか
あの木に今年最初の実がついたとか
小さな喜びを噛み締めて
それを大切に深く深く心に刻んだ

私の世界はいつも広大な畑と
緑揺れる木々と青く澄んだ大きな空
大きくて少し怖い牛や馬
そして優しく厳しい人達
愛すべき全てがそこにあった

大きくなってそれが全てではないと知る
世の中には都市なるものがあると
人間がもっともっと集まって
最新の技術を誇って生きているのだと

それは純粋な好奇心
未知の世界への探究心
思春期の突発的な思いも重なって
何も考えずに村を飛び出した

待っていたのは都市
人が溢れる場所
人が溢れているのに
人と人とのつがなりが希薄な場所

幼い頃、私はパンドラの箱の話を信じていなかった
私の世界に「災厄」はあっても「悪意」は無かったから
だけど、この場所に来てその話を思い出す

パンドラの箱はあったのだと

パンドラは何故箱を開けたのだろうか
箱は開けてはならぬものだったはずだ
神は何故パンドラに箱を持たせたのだろうか
開けてはならぬものを渡す必要などあったのか

答えは簡単だ
開けさせるために箱はあったのだ
ただ開けたのがパンドラだっただけだ

パンドラが悪いのは確かだ
だけど誰が彼女を責められるのだろうか
これはもたらされるべくしてもたらされたものではないか

しかし思い直す
確かに私の世界ではそれは信じられなかったのだ
パンドラの箱が開いても
世界が全て悪で埋め尽くされたわけじゃない

パンドラの箱には希望が残っていたという
希望……それも神からの贈り物なのだろう

パンドラの箱は神から与えられた
人への試練なのかもしれない
そしてそれに立ち向かう術は希望なのかもしれない

だから私は希望を探してみようと思う
希望があるのは分かっているから
その形を見つけたいだけ

どんなものが「希望」なのか
それを見つけ出すのも悪くない




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なりきりっぽく(^^;)。
文字書きのリハビリも兼ねた話ですか。
どんなのなら書きやすいかなと思ったんですが、キャラになりきって書くのが面白いかなと。
そうなると、やっぱり接点が多い、カーム(DK2の使用キャラだったり長編小説の父親格キャラだったり…)が
一番良いかな〜と思って…それで彼になりきって書くなら……このパンドラかあなと。
あんまりカームって善悪意識は無いんですが、自分の価値観は物凄くはっきりしている人なんですよね。
自分が英雄になろうって気はまるで無いし、知的好奇心のためなら手段選ばずな所もあったりしますし。
穏やか〜な印象なんだけどリアリストでちょっと怖いって感じの人がカームかなと思ってます。
そしてなりきるのが一番楽なんですよね(^^; DK2のキャラにして本当に正解だったと思ってる人です(笑)。